米議会は夏期の長期休会中。10月1日に新年度がはじまるが、2024年度予算を下院で可決するには至らなかった。「debt limit 2.0」なんて言葉まで出てきているが、9月上旬に米議会再開してからの話だ(引用元:Roll Call)。政府閉鎖も噂されはじめたが、現段階ではなんともいえない。債務上限の時に民主党と共和党は歩み寄れているので、政府閉鎖が起こる可能性について私は低いとみている。
というわけで、2024年大統領選にむけてアイオワ州予備選まで半年をきったことだし、少し予備選スケジュールを整理することにする。
共和党大統領予備選スケジュールと最新世論調査
大統領選挙は連邦法で11月の第一火曜日と決まっているが予備選は決まっていない。また、合衆国憲法では各州に「選挙を行う日時、場所、方法は、各々の州においてその立法部が定める」としているため、基本的には各州が決める。
共和党は例年通りアイオワ州から開始する予定で2024年1月15日から開始する。次いで、2月にサウスカロライナ州・ネヴァダ州・ミシガン州と続いていき、3月5日はスーパーチューズデーを迎える。3月でだいたい判断がつくことになる。
ちなみに、 共和党ではカーター大統領以降で、アイオワ党員選挙で勝利した立候補者が残るというジンクスはない。アイオワ党員集会で2016年ではテッド・クルーズ上院議員が勝利など、「アイオワ党員集会で勝利をしたものが候補者になる」という方程式は崩れているのだ(引用元: アイオワ党員集会は重要だというが、共和党では重要視されていない)
乱立する共和党大統領候補者、14名
- Doug Burgum (R), the governor of North Dakota
- Chris Christie (R), former governor of New Jersey
- Ron DeSantis (R), the governor of Florida
- Larry Elder (R)2021 California gubernatorial candidate
- Nikki Haley (R), former U.N. Ambassador
- Will Hurd (R), former U.S. Representative from Texas
- Asa Hutchinson (R), former Arkansas Governor
- Perry Johnson (R), a business owner and author
- Mike Pence (R), former vice president of the United States
- Vivek Ramaswamy (R), entrepreneur and political commentator
- Tim Scott (R), a United States senator from South Carolina
- Corey Stapleton (R), former Montana Secretary of State
- Francis Suarez (R), the Mayor of Miami
- Donald Trump (R), former U.S. President
共和党大統領選の最新世論調査
トランプ前大統領は、8月頭に3度目の起訴されたが、世論調査は圧倒的にリードしたまま。二番手のデサンティスFL州知事も最大の献金者ビゲロー氏、デサンティス氏に対して今よりも穏健なアプローチにシフトしなければ献金を打ち切ると発言されているし資金調達でさえ順調とはいえない状況だ(引用元:thehill.com) 反トランプが団結すれば話は異なるだろうが、このまま進むとトランプ前大統領が共和党大統領候補者となるだろう。
共和党大統領立候補者の手元資金と資金調達
手元資金は、トランプ前大統領が一位。2位はスコット上院議員、3位がデサンティスFL州知事。 トランプ前大統領は 「 Save America」といったPAC経由で寄付を募っていてそこから選挙用口座に資金を移動させているためだが、資金枯渇が噂されているので今後の手元資金には注目だろう。
左側のContributions(オレンジのグラフ)は、個人からの寄付を示す。直近の四半期において個人からの資金調達では、デサンティス知事は圧倒的に1位だ。ついでヘイリー元国連大使とスコット上院議員だが、デサンティス知事の半分程度となっている。
Receipts(赤いグラフ)は、融資なども含め選挙用口座に入る資金すべてを示す。
なお、トランプ前大統領の寄付が極端に少ないが、トランプ前大統領は 「 Save America」といったPAC経由で寄付を募っていてそこから選挙用口座に資金を移動させている。ちなみに、 「 Save America」の大半は訴訟費用に使われており資金枯渇が噂されている(引用元:WSJ)ちなみに、自身の訴訟費用に 「 Save America」 で集めた資金を使うことについては違法だとは断定できないようでグレーなところで判断がわかれるようだ(引用元:ロイター)
民主党大統領予備選スケジュール
遡ること2022年12月。バイデン大統領は民主党全国委員会(DNC) に対して、”rid the nominating process of restrictive, anti-worker caucuses” として”reflect the overall diversity” な指名プロセスに変更するよう大統領予備選スケジュールの見直しを求めた(引用元:Axios)。バイデン大統領にとって、党員集会は反労働者なのだね。
2023年2月4日、民主党全国委員会の規則委員会は2024年2月3日にサウスカロライナ州が最初の予備選挙州に選ばれ、2月6日にニューハンプシャー州とネバダ州、2月13日にジョージア州、2月27日にミシガン州で予備選を実施する案を承認した(引用:Ballotpedia)
しかしながら、民主党全国委員会が承認したからといって簡単に済む話ではない。ニューハンプシャー州が反発しており、調整が難航している。
また、アイオワ州も1月15日に開催するが、結果発表は後日など提案していて混乱が生じている(引用元:AP)
また、アイオワ州とニューハンプシャー州は民主党全国委員会の決定に反旗を翻して今まで通りのスケジュールで進める可能性もある。その際は、バイデン大統領は予備選を不参加にする可能性を示唆している。2020年のアイオワ州でもバイデン大統領は苦戦した経験がある(引用元:Axios)
そういえば、2020年2月にブログ「 ニュー・ハンプシャーでの予備選はサンダース氏が勝利した。ただし、ブティジェッジ氏と僅差の勝利だ。 アイオワ党員集会では、サンダース氏が僅差で敗れた」と書いていた(引用元:ni225-topix.com/?p=3024)
ちなみに…大統領選挙日の歴史
予備選終了後の大統領選挙は11月に全州で同一日に行われる。
大統領選挙を11月の第一火曜日と決めたのは、1845年の連邦議会だ。それまでは、各州が好きなタイミングで選挙できていたそうだが投票率や先にはじめた州が世論を左右するなど問題も起きたので、連邦議会が行動を起こし、全州が同一の選挙日となった。ちなみに火曜日という理由は、日曜日は教会で過ごし、月曜日は異動し、水曜日は農家にとって市場がある日だったので火曜日が最適だったとのことだ。また、11月というのも収穫が終わったタイミングというのが最適だったようだ。この頃の米国は多くの人が農業に従事していたので、当時の状況を反映してのことである。(引用元:history.com)
細かい話になるが、大統領選挙と連邦議会下院選挙が同一日になったのは1872年の議会で、上院も同一日になったのはなんと20世紀に入ってからの1914年のことなのだ。
アラバマ州選挙区割り再編成の訴訟
6月に最高裁から判決「Allen v. Miligan」の判決がでた影響で、アラバマ州は選挙区割りの再編成を進めている。
6月に最高裁から判決がでた影響で、アラバマ州は選挙区割りの再編成を進めている。最高裁の判決により、黒人が多い選挙区が1つ増えると予測されていたが、共和党が多数党を占めるアラバマ州議会はアラバマ州第2区の黒人有権者の割合は、約31%から40%近くまで上昇した新たな選挙区割りを新たに可決した。
ところが、これでは黒人が下院選挙で獲得できる議席が1議席で今までと変わらない。そのため投票権擁護団体がこれは6月の最高裁判決の判決に違反していると訴訟を起こし、今週から連邦裁判所で審理がはじまる(引用元:thehill.com)
選挙区割りで下院選挙は決まるといっても過言ではない。
共和党が5議席しか民主党より多く確保できていない状況で2024年総選挙を迎えるため、1議席確保するだけで交渉に有利に働く。なので、アラバマ州でもどこでも1議席確保できるかどうか非常に重要なのだ。
遅くとも10月上旬には区割りが決定する必要があれば、訴訟が長引けば区割りの反映が2026年中間選挙になるだろう。