夏期休会入りした米議会、再開は9月:上院では別の国防権限法(NDAA)を可決/インドのSemiconIndia2023

9月まで米議会は休会に入った。上院は9月1週目から、下院は9月2週目から再開する。結局、2024年度予算を可決するまでは進まなかった。そのため、2024年度予算の審議は9月に持ち越しとなり、例のごとく「つなぎ予算」でしのぎつつ、なんとか年内には予算を可決させるのではなかろうか。9月になると政府閉鎖の話題がでてきてそわそわするが、債務上限の時に両党で協力関係ができているので政府閉鎖も起こらないと私はみている。

下院の国防権限法(NDAA)は上院で945提出され、最終的に98の修正案が採決された。
なお、下院で可決した法案に上院で修正が入った場合は、また下院で採決が必要になる。これは9月に持ち越しとなった。

まずは、上下院で修正が入らなかった部分

【2024年の国防費】
① $8860億の支出
※ Fiscal responsibility Act of 2023で決められた通り、 国防費は2023年度の水準より△約3%で昨年よりも$280億多い
②軍人・国防総省で働く人たちの給与引き上げ△5.2%
③物議をかもすジャンダー、 D&I 、中絶の費用払い戻し不可などは今回は修正をあえて入れなかった。

【NDAAに追加して上院で可決した条項で注目されるもの】

①上院の承認なし(3分の2の承認か決議)に大統領がNATOを離脱すること禁止
②台湾への軍事支援の強化
③中国、ロシア、イラン、北朝鮮の外国企業が米国の農地を購入することを大々的に禁止。対米外国投資委員会(CFIUS)が、外国人による320エーカー以上の農地の購入やリース、あるいは500万ドル以上の農地の購入を審査する権限を付与。CFIUSは、外国人による買収を阻止または中止するよう大統領に助言することができる大統領に助言できる。
④人工知能、先端半導体、衛星通信など、特定の中国技術分野への出資を財務省に通知す
⑤国内半導体造の認可プロジェクトの迅速化
⑥ 戦略石油備蓄から中国が石油を購入することを禁止
(引用元:WSj


メローニ首相とバイデン大統領の会談

10時間前に、イタリア国防大臣が中国の一対一路からの離脱の意向を表明した。イタリアは、中国との関係を損なうことなく、一対一路からいかに撤退するかだということを課題としてあげている(引用元:Politico

また、7月27日のメローニ首相が訪米してバイデン大統領とともに発表した共同声明文では、「米国とイタリアは、自由で開かれ、繁栄し、包摂的で安全なインド太平洋に固くコミットする」と書かれた。

The United States and Italy are firmly committed to a free, open, prosperous, inclusive, and secure Indo-Pacific. The United States welcomes the increased presence of Italy in the region. The two sides reiterate the vital importance of maintaining peace and stability across the Taiwan Strait, which is instrumental to regional and global security and prosperity. The United States and Italy also commit to strengthen bilateral and multilateral consultations on the opportunities and challenges posed by the People’s Republic of China.

https://www.whitehouse.gov/briefing-room/statements-releases/2023/07/27/joint-statement-from-president-biden-and-prime-minister-meloni/

ルールなしの自由貿易には警戒を示しているが、これは間違いなく中国を意識した表現だろう。2024年3月に更新時期が迫っているため、2023年のうちに離脱意向を伝える必要がある。中国はイタリア内でロビー活動しているようだ。まあもう離脱する流れだと私は思っている。

And then, Italy and the United States have important common interests in enhancing, as well, a global trade that is not only free but also fair. Competition from other nations that do not meet our standards in terms of worker protection, safety, environmental protection undermine our companies and workers.
So, free trade without — without rules has shown its limits. We must find the right balance between openness and the protection of our economy — economies — and strategic interests.

https://www.whitehouse.gov/briefing-room/speeches-remarks/2023/07/27/remarks-by-president-biden-and-prime-minister-meloni-of-the-italian-republic-before-bilateral-meeting/

インドで開催されたSemiconIndia2023

https://www.semiconindia.org/

Micron,Cadence,Applied Materials,AMD,GlobalFoundries, ST Microelectronics の上級幹部(インド系だけを意図的に呼んだ?)が、モディ首相とともにSemiconIndia2023に登壇した。SEMIプレジデント兼CEOのAjit Manocha(元 GLOBALFOUNDRIES CEOでインド人)も参加しており、“For the first time in India’s history, geopolitics, domestic policies and private sector capacity are aligned in India’s favor to become a player in semiconductor production,”と発言している。2023年は具現化する節目の年になるとも発言していた。
鴻海(ホンハイ)精密工業の劉揚偉会長も参加し、日本からも半導体製造装置を手がけるディスコが参加しており、顧客支援や営業活動用の拠点を「インドに用意したい」と発言(引用元:日経新聞

モディ首相は、半導体製造を経済政策の最優先課題と位置付けている。
インドの半導体戦略は大きく分けて2つある。1つ目は、外国企業を誘致し、国内に事業所を設立して投資してもらうことであり、2つ目は、米国など他の主要半導体国と提携を結ぶこと。特に、インド政府は半導体メーカーなどの誘致に100億ドルを投じる計画の下で誘致活動を再開している。 国外の企業も利用できる$100億の補助金だ。ただし、製造工場の設立許可を取得できた企業は今のところないため今後のこれが設立許可が進んでいくかをみていく必要がある。

今回のイベントで、AMDは、今後5年間でインドに約4億ドルを投資する計画を発表(引用元:ロイター)。 南インドのカルナータカ州バンガロールに “the company’s largest design center”って書いてあるけど、本気なんですかね。
。また、マイクロンは6月にグジャラート州に半導体の組立・試験施設を設立する計画を発表しており、マイクロンの投資総額は$8億2500万になる。

一方で、2022年にフォックスコンはインドの金属・石油複合企業ヴェダンタと195億ドルの合弁事業の一環として、インドに半導体とディスプレイの生産工場を設立することで合意したが7月に撤退した。その一方で、インドの半導体製造優遇措置申請には申請しているし、今後5年間で20億ドルを投資する予定だと発言しているので組む相手を損切りして、単独で進めるのだろう(引用:ロイター

インドでの半導体製造は課題も山積みなことは書かれてはいるが、投資を着々と呼びこめているのは確かだろう。工場の許可取得がスムーズにいくかどうかにもかかってそうだ。