共和党と民主党の決裂は、献金団体の対立

共和党内部でも、7月末で失業保険600$上乗せ終了を懸念して、いくつかのグループが立ち上がった。
まず、一つ目は、連邦政府による失業保険給付について。
共和党ロン・ジョンソン議員とマイク・ブラウン議員の案は、失業保険200$上乗せ、あるいは、失業前の賃金66%を上限とする案がでてきた。
二つ目は、ミット・ロムニー議員とスーザン・コリンズ議員、マーク・マクサリー議員のグループでは、 8月に毎週500ドル、9月に毎週400ドル、10月に毎週300ドルと段階的に連邦政府による失業給付を下げていくか、 失業前賃金の80%支給に切り替えるかを選べるというもの。

しかしながら、民主党は包括的な予算案でなくてはダメだということで一蹴した。メドウズ大統領補佐官とムニューシン財務長官は、昨晩もペロシ下院議長とシューマー上院少数党院内総務と話し合いをもったが進展がなかった。

失業給付については、共和党、民主党それぞれでゆずれない事情があるのだ。

共和党の最大ロビー団体の一つは、 米国商工会議所なのだ。彼らは、米国商工会議所から多額の寄付金を受け取っている。つまり、企業経営者の味方なのだ。企業経営者にとってみれば、週400~600$くらいで労働者を雇うことができていたのに、失業した方が週1000$受給できるのでは、労働意欲が沸かないし、従業員が戻ってこないという主張だ。失業せざるおえない人もいる一方で、確かにこういう人がいることも事実だ。特に中小企業で、給与保護プログラム(PPP)を受け取っている場合は、従業員給与に充てないと返済の必要が生じるので切実な問題なのだろう。

一方で、民主党。民主党は、富の再分配に積極的ではあるものの、彼らの最大のドナーの一つは労働組合であり、労働者の味方なのだ。失業せざるおえない人達に十分な手当てを出したいというわけである。

で、この両者の献金者の違いで、妥協まで辿り着かない点がもう一つある。
それは、コロナウイルス免責事項だ。
簡単にいうと、就業中にコロナウイルス感染でも起こしたら、企業や学校は訴訟されかねない。共和党としては、企業や学校を保護するために、5年間ていどの免責を設けたいというわけだ。
この事項を盛り込むことは、必須であるとマコネル上院院内総務は何度も発言していて譲れないのだ。

共和党は、 米国商工会議所が背後にいることもあり企業の味方だ。なので、企業を訴訟から保護する必要がある。さらに、学校の訴訟からの保護も必要なのだ。
子どもや高齢者の面倒をみているため、働きに出られない母親が先週発表された国勢調査によると、900万人もいるという(国勢調査)。
まずは、子どもが学校を再開しないと保護者(多くは母親)が働きに出られない。新型コロナウイルス感染を懸念して保護者の訴訟を懸念して再開できていない学校をなんとしても再開させたいというのが共和党の意向なのだ。そのためには、訴訟から保護しなくてはいけない。
あとは医療機関についての保護も同様。
ちなみに、この免責事項が盛り込まれた法案に対して米商工会議所は拍手喝さいを送ったようだ。それだけ、共和党は企業をみて動いているということだ。

しかしながら、民主党はここでも猛反対しているのだ。
その理由は、民主党への最大献金者が労働組合と訴訟弁護士団体であると考えれば非常にわかりやすい。労働組合の視点では、就労中に新型コロナウイルスに感染したのに事業主を訴訟できないなんてけしからん。労働者を保護せよということだ。一方で、アメリカ司法協会(American Association for Justice)からもこの免責事項を盛り込むのは反対なのだ。訴訟数が減るからだろうか(‘ω’)ノ

いずれにせよ、どちらの党も、誰を向いて政治をしているかといえば、お互いの巨大献金グループをみて法案を作成しているということだ。トランプ政権は、単に再選を目的とした国民からの支持を得たいという目的だろう。

おそらくではあるが、どこかが一歩も引かない姿勢でいると、このまま何も決まらない可能性が高くなってきている。
しかしながら、連邦政府の失業給付が期限切れを迎えたことで、一番困るのは失業者自身だ。そして、連邦政府による給付がなくなって、減給となり働いている従業員であろう。だとすると、民主党の献金団体である労働組合が最初に値を上げるのではなかろうか。
共和党は、選挙の問題を別にすれば、失業給付上乗せがなくなったことで、従業員を安く雇うことが可能になるので米商工会議所としては願ったりかなったりだろう。ただし、免責事項については進まないことは訴訟リスクを抱えることになるが。


8/1(土)から何が起こるか。

8/1(土)から州政府失業保険のみにになる予定で、週$250~$500当たりの給付になるだろう。州によって最大限度額が異なるし、失業前の給与水準にもよる。また、気になっていたパンデミック失業支援(PUA)は、年内は最大46週間の範囲で週$167 (最大でも$450ドル)支給される。
最大給付額である週450ドル支給されるには、去年の収入が46000ドルほど必要。また、フロリダ州など12週までが最長給付期間になるが、失業保険延長給付という制度もあり、連邦政府が 最大13週間の追加給付できるプログラムを用意している。ただ、どういう失業給付にせよ、今までの水準の3分の1~半分になると思われる。

https://www.edd.ca.gov/about_edd/coronavirus-2019/pandemic-unemployment-assistance.htm#PUAcert

各州が設定していた立ち退き禁止については、次々に延長されている。家を追い出されることは起きないだろうが、家賃支払い率がどのくらい下落するかが肝になるだろう。家を買っていないのはたいていが低所得者なので、低所得者の実態が少しはみえるだろう。
尚、立ち退きがどれくらい増えるかの先行指標としては、すでに立ち退き禁止期間が州としては禁止されているテキサス州かもしれない。ただし、カウンティごとに立ち退き禁止期間を設定しているようで、実態がよくわからない部分もある。

州/賃貸率/ 立ち退き禁止期間
NY 50% :8/20
CA 50%:9月末
FL 34%:9/1
IL 33%:8/22
PA 30%:8月末

参考資料
https://thehill.com/homenews/senate/509710-liability-shield-fight-threatens-to-blow-up-relief-talks
https://thehill.com/homenews/senate/509839-mcconnell-tees-up-fight-on-unemployment-benefits
https://thehill.com/homenews/senate/509803-senate-rejects-dueling-coronavirus-bills-as-unemployment-cliff-looms
https://www.politico.com/news/2020/07/30/senate-gop-unemployment-extension-388170
https://www.bloomberg.com/news/articles/2020-07-22/biden-child-care-plan-could-get-millions-of-people-back-to-work?sref=lw8NgS9l
https://thehill.com/business-a-lobbying/business-a-lobbying/509487-lobbyists-see-wins-losses-in-gop-coronavirus-bill#.XyDMFlqSxm8.twitter
https://www.rollcall.com/2020/07/30/mcconnell-tees-up-debate-on-lapsing-covid-19-unemployment-benefits/