バイデン当選リスク、大統領と議会のねじれリスク

バイデン大統領候補のランニングメイトが誰になるか決まってから、バイデン大統領候補の当選リスクを考えようとしていたが、今月いっぱいはかかるようなので、少しづつバイデン当選リスクを書いていくことにする。
ちなみに、バイデン大統領候補は、ランニングメイトは黒人女性を選ぶと宣言した。私はカマラ・ハリス上院議員一択だと考えているんだが、エリザベス・ウォーレン上院議員も急進左派から未だ根強い支持があるようで、誰になるかわからなそうだ。
ところで、カマラ・ハリスは南米出身移民の父(スタンフォード大教授)とインド系移民(医師/癌研究者)の母をもつ。黒人ではあるが、移民二世でもある。黒人といえば黒人なのだが、混血しているので、黒人女性と呼んでいいのかは疑問が残る。

さて、バイデン大統領候補の当選リスクを考える上で、大きく2つほどあると思われる。
【1】米国税制改革
【2】中国へ強硬姿勢でいくかどうか

しかし、【2】についてはオバマ時代に中国を放置していた経緯があるし、トランプ大統領と比較すると強硬的な発言は今のところ少ないように思える。
なので、今回は税制改革にフォーカスしてみることにする。

バイデン大統領候補の税制改革

バイデン大統領候補はトランプ大統領および共和党両党が取り組んだ税制改革を廃止すると宣言している。予備選の時から、トランプ大統領の税制改革で減税された連邦法人税を上げるとは宣言していたが、半分戻して28%にするようだ。

Biden also said he would raise the corporate tax rate to 28%, which he said would raise an estimated $1.3 trillion over the next decade. The Trump tax cuts had shrunk corporate taxes to 21% from 35%.

https://www.cnbc.com/2020/06/29/biden-tells-donors-he-will-end-most-of-trumps-tax-cuts.html

次に、中産階級の連邦所得税の増税が実施される。課税所得に応じて連邦所得税が3~4%上昇するだけでなく、 児童税額控除額が半分に削減される。

The first and most obvious answer is that middle-class tax brackets would go up. Middle-class families by and large fall into the 12%, the 22%, or the 24% tax rates on the margin (that is, on their last dollar subject to income tax). If Biden gets his way, these tax brackets would rise to 15%, 25%, and 28% (respectively).
The child tax credit under the Biden tax hike would be cut in half, from $2,000 per child to $1,000 per child. 

https://www.washingtonexaminer.com/opinion/if-youre-in-the-middle-class-joe-biden-wants-to-raise-your-taxes

トランプ大統領が2016年税制改革を実施したことで、2016年から2021年までの間で中産階級の20%は $4,400, to $70,300か所得が増加すると想定されていた。なので、これが消失するというのは個人消費にダイレクトに響くことになるだろう。

After accounting for taxes and government benefits, the middle fifth of households will see their income grow by 6.6% through 2021, the CBO forecast — that compares with a 17% gain projected for America’s richest workers. In dollars and cents, the middle 20% of families will have seen their income grow a total of only $4,400, to $70,300, between 2016 and 2021, the agency estimated. 

https://www.cbsnews.com/news/two-years-after-trumps-tax-reform-the-middle-class-is-struggling/

また、 個人所得税率の最高税率を37%から、39.6%に増税。長期キャピタルゲインも現在の20%から、最高40%に増税( 現在、1年を超える長期キャピタルゲインは、所得レベルに応じて、0%、15%、または20%で課税。短期キャピタルゲインは、 金額に応じて10%から38.6%までの6段階 )。

最後に、トランプ減税では、 海外関連企業の支払いへの課税が10%だったのが、バイデン大統領候補の提案では15%になる。
また、2 兆数億ドルに及ぶとされる米国企業の海外留保資金について、国内還流を促す措置で1回限りの課税とされていたが、それについては今後調べる。

総じてみていくと、トランプ大統領が実施した減税が半分ていど巻き戻されるといったところであろう。ただし、

税制改革には議会両院の可決が必要

当然のことながら、税制改革では議会両院で可決する必要がある。
2020年下院総選挙は民主党が多数派党をとると見込まれている。ただし、3分の2までとれるという予測はない。
一方で、上院は3分の1が再選挙となり、現在は共和党53議席、民主党+無党派で47議席だ。共和党は3議席はほぼ確実に負けそうであり、さらにあと5議席が危ういかもしれないとささやかれている。少なくとも民主党が過半数は獲得できるだろう。

しかし、民主党+無党派で55議席となるが、フィリバスターを防止できる60議席には届かない。過半数で可決するような法案ならよいが、3分の2が必要な場合は可決するまで長い時間がかかる可能性があるのは留意しておくべきだ。

民主党多数派議会にトランプ大統領が当選すると…

上院・下院議会ともに民主党が多数派を占めると考えられる。そんな状況で、トランプ大統領がうっかり当選してしまったら、可決された法案の拒否権発動が乱発するのではないかとも予測される。

拒否権を覆すには、上下両院で3 分の2 以上の賛成が必要となる。いずれかの議院で3 分の2 の賛成が得られなければ法案は廃案となり、両院とも3 分の2 に届けば法案は成立する。 しかしながら、今のところ、両院ともに民主党が多数派党はとれるが、議席3分の2をとることまでは困難だろう。

となると、トランプ大統領が当選してしまうと、現在の116議会とはまた異なるねじれ議会になってしまい、予算が決まらなくて政府閉鎖などのリスクは117議会でも消えないだろう。