サンダース議員が撤退したことで、バイデン元副大統領とトランプ大統領の勝負となった2020年大統領選挙戦。ペロシ下院議員が、郵送投票を法案化したいと述べているが、共和党は全力で拒否している。トランプ大統領は、不正投票や犯罪が増加するだけだと述べている。トランプ大統領および共和党は、なぜここまで郵送投票を拒否しているのだろうか。
Mail in ballots substantially increases the risk of crime and VOTER FRAUD!
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) April 12, 2020
共和党NO.2で下院院内総務の共和党マッカーシー議員は、トランプ大統領と同様に不正投票が増えると述べている。また、経済復興予算に、郵送投票のための予算を盛り込むべきではないというのが彼の主張だ。
McCarthy also argued shifting to mail-in voting presents an increased risk for voter fraud and that states are better equipped to handle their election proceedings.
https://thehill.com/homenews/house/492057-mccarthy-slams-democrats-on-funding-for-mail-in-balloting
しかし、本当に不正選挙になるかというと、そんなことはないのだ。しかも、郵便投票は不正選挙になるということを立証さえすることもできないのだ。
ワシントン州は、完全に郵送投票だけで完結している数少ない州だ。また、 オレゴン州とコロラド州も実施済で、2020年からはハワイ州とユタ州も加わる。カリフォルニア州は、希望者には郵送投票用の用紙が送られてくる。 面白いことに、これらは民主党が強い州だ。WIREDによると、不正選挙を行うことは困難を極めるし、むしろセキュリティが向上するとの見解だ。実際に、不正選挙を実施したのはサウスカロライナ州の共和党議員だったことがある…
では、なぜゆえにトランプ大統領および共和党は郵送選挙を恐れているのだろうか。
郵送投票のように利便性が上がると、投票率が上がるのだ。
投票率が上がると、民主党に票が流れて議席を失うということを危惧しているのだ。共和党は、今まで、女性やマイノリティに対してあの手この手で選挙させないようにしてきたのだ。その一つが、ゲリマンダーだ。
ゲリマンダーとは、小選挙区を自党にとって都合のよいように区切ることだ。米国の小選挙区は、人口がだいたい均等になるようにすればどのように区切ってもいいようになっていて、それは州議会で決定されることになっている。つまり、州議会が、どちらが多数党になるかによって、小選挙区選挙制である下院議員選挙もおのずと決まるのである。ただし、上院選挙はどの州であっても2名の議員を選出するので、上院に対しては効力が薄い。
2017年のアラバマ州補欠選挙では、まさにゲリマンダーになっているという指摘がでていた。
下院に関しては、人口分布が一部影響している。民主党支持者は都市部に集中する傾向があるのに対し、共和党支持者は郊外から農村部に均等に散らばっている。このことは、党派色のない選挙区割りであったとしても共和党に有利になることを意味する。
https://jp.reuters.com/article/column-us-unfair-democracy-idJPKBN1EK0CN
しかし大半の州では、両党が自党に有利な選挙区割りを試みる。その結果が、共和党が選挙区の見直しを担っているアラバマ州の選挙結果である。
では、現在の州議会および州知事を含めて、どちらの党が支配しているのだろうか。2019年の最新結果によると、共和党が21州、民主党が15州、ねじれが13州だ。ねじれが多いのでなんともいえないのだが、やはり共和党が有利な状況であることは変わらない。仮に、郵送投票を州レベルで進めたとしても、共和党が支配している州では郵送投票は進まない可能性もでてくるのだ。
大統領選挙の資金集め状況
バイデン元副大統領は、途中から資金集めが順調にいっていたかのようだが、2月末時点では、トランプ大統領との差が非常に大きい。3月だけで、オンラインによる300万ドルの資金調達ができたようだ。ブルームバーグ元NY市長も、1800万ドルを民主党に資金提供したようでもある。
しかし、トランプ大統領再選キャンペーン資金は約1億ドルも残っている。バイデン元副大統領の10倍近くもあるのだ。まだまだ差をつめきれていない。
どうやら、カマラ・ハリス上院議員が、バイデンキャンペーン陣営のファンドレイジングに協力するようにもなったらしい。カマラ・ハリス上院議員は、大統領選で撤退した経緯があるものの、副大統領の有力候補である。
資金がいくらあって、いくら広告を実施しても負けたブルームバーグ元大統領候補、ステイヤー候補のように、選挙資金は重要だが、選挙資金だけでは勝てない。どうなっていくか注視していきたい。
