2020年アメリカ大統領選[6月上旬定点観測]

11月の大統領選挙まであと5か月となった。メディアは民主党支持が多く、バイデン民主党大統領候補の方が支持率が高いと報道しているが、重要なのは州別にみることだ。共和党が強い州は、共和党が強い。民主党が強い州は、民主党が強い。なので、スウィング・ステート(共和党支持になったり、民主党支持になったりスゥイングする州)の動向をみることが重要なのだ。

スゥイング・ステートの支持率

オバマ大統領が当選した時と、トランプ大統領が当選した時を比較してみる。
オバマ時代は民主党支持だったのに、トランプ大統領で赤い州になった州は、ウィスコンシン州(10)、アイオワ州(7)、インディアナ州(11)、オハイオ州(18)、ペンシルヴェニア州(20)、ノースカロライナ州(15)、フロリダ州(29)の7州である。多くの州では、勝った方が、選挙人数を総取りできる仕組みだ。
代議人ごとに得票数が入るネブラスカ州、メイン州は代議人州が少ないので無視する。
また、()内の数値は、選挙人の数である。この人数割り当ては、 その州の上院議員数(各州2人ずつ)と下院議員数(現在では州の人 口により 1~53 人)の合計に相当する選挙人数を割り当てることが合衆国憲法で決められている。詳細は、アメリカン・センターが発行している『選挙人団制度―現代の大統領選挙における選挙人団制度の役割』が参考になる。

referer: https://www.270towin.com/historical-presidential-elections/
referer: https://www.270towin.com/historical-presidential-elections/

このスゥイング・ステートのうち、ノース・カロライナ州、オハイオ州、うぃす今週の最新調査結果がでてきた。なんと、3州すべてでバイデン氏が上回る結果となった。また、全米暴動が起こる前の5月中旬でさえ、ペンシルヴェニア州、フロリダ州、ノースカロライナ州はバイデン大統領候補の方が支持率が上回っているのだ。フロリダ州とペンシルヴェニア州だけで49人の選挙人獲得になるので、どちらも外せない州ではあるはず。

https://www.270towin.com/polls/latest-2020-presidential-election-polls/
https://www.270towin.com/polls/latest-2020-presidential-election-polls/

バイデン陣営の資金獲得が好調

4月末時点では、過去16カ月間でバイデン陣営は3.4億ドルの資金調達だったのに対して、トランプ大統領は7.4億ドルと二倍近く差をつけていた。
しかし、支持率が下落していたことを気にしたトランプ陣営は5月に広告に多額な資金を投じた。バイデン陣営はたった300万ドルだったのに対して、約2100万ドルもトランプ陣営は資金投下している。
4月末のトランプ候補+共和党の銀行口座には、2.5億ドルに対して、バイデン候補+民主党は1億ドルでやはり2倍も差が開いている。

Biden’s fundraising has trailed Trump, whose re-election effort raised $742 million in the last 16 months. Biden and the Democratic National Committee took in less than half of that, $342 million, through the end of April. Trump, the Republican National Committee and two fundraising vehicles had $255 million in the bank at the end of that month compared to $103 million for Biden and the DNC.

Unlike Biden, Trump spent heavily on media, including pricey television ads, in May, in response to falling poll numbers. His campaign booked $17.8 million worth of ads, including $4.1 million on digital platforms, that month, according to Advertising Analytics, compared to $3 million for Biden, which was all spent on online ads. Campaigns and parties report their May fundraising numbers to the Federal Election Commission on June 20.

https://www.bloomberg.com/news/articles/2020-06-03/donors-rally-to-biden-in-wake-of-trump-s-response-to-protests?sref=lw8NgS9l

しかしここへきて、やっとバイデン候補の資金調達が追い付いてきた。4月の資金調達額は、トランプ大統領とバイデン候補でほぼ同じくらいの金額となった。また、アフリカ系アメリカ人への暴動がバイデン候補の追い風になっていて、6日間で600万ドルを達成した。ここへきて、個人からの小口献金が増えてきたようだ。

バイデン陣営と民主党全国委員会が4月に集めた資金は6050万ドルと、トランプ陣営と共和党全国委員会が集めた6170万ドルを下回ったものの、その差は小幅にとどまった。
バイデン氏は1日付の支援者向けの電子メールで、自身の選挙陣営による5月末の6日間のインターネットによる資金調達が目標の600万ドルを達成したと明らかにした。

https://jp.reuters.com/article/minneapolis-police-democrats-idJPKBN23C00G

トランプ大統領は、アフリカ系アメリカ人から支持を得られない。

さて、トランプ大統領は2016年の選挙でアフリカ系アメリカ人からの得票率が8%だった(とはいえ、2008年マケイン元大統領候補、2012年大統領候補よりはましだったようだ)。その層の得票率を上げようと立ち上げたのが  ‘Black Voices for Trump’ というキャンペーンだった。公式キャンペーンサイトで、様々なグッズが販売されている。

https://shop.donaldjtrump.com/products/black-voices-for-trump-rally-sign-white-set-of-2

対策は打っているものの、支持率が上がったという話がさっぱり記事にあがってこない。トランプ大統領は、アフリカ系アメリカ人へのメッセージを変えていく必要性も迫られているようで、選挙対策本部では選挙戦略の練り直しだ

一方で、選挙人獲得となると州別に考える必要がある。2010年人口調査に基づいたアフリカ系アメリカ人の比率が高いのはノースカロライナ州くらいなのだ。ワシントンD.C.は人口の半分がアフリカ系アメリカ人なのだが、州別でみるとトップがミシシッピ州で37%を占める。
ミシシッピ州は今では赤い州で、民主党が勝利したのは1976年カーター大統領が当選した時まで遡ることになる。

つまり、スゥイング・ステートではバイデン大統領候補の強みであるアフリカ系アメリカ人への支持が有利に働くかはわからないというわけだ。
働いたところで、ノースカロライナ州くらいだろう。

ウィスコンシン州(10)  6.32%
アイオワ州(7)     2.93%
インディアナ州(11)  9.12%
ノースカロライナ州(15) 21.48%
オハイオ州(18)   12.20%
ペンシルヴェニア州(20) 10.85%
フロリダ州(29) 15.96%

バイデン候補は、カトリック信者

トランプ大統領は、Catholics for Trumpというキャンペーンも立ち上げている。先日、デモの放火にあったSt. John’s Episcopal Churchでの記念撮影もカトリック信者へのパフォーマンスだと当ブログは解釈しているが、やたらとカトリック信者を意識したパフォーマンスをしてきていると思われる。
しかしながら、バイデン候補は長年のカトリック信者なのだ。ふつうに考えれば、同じ信仰をもつ人物に投票するはずだ。ただ、カトリックだからなぁ…

https://www.youtube.com/watch?v=wFYrGe4rQu4