共和党とトランプ政権が対中制裁法案を加速。米中ディカップリングは止められない。

先日、共和党下院議員手動で中国タスクフォースが立ち上がったという記事を書いた。対中国への制裁法案提出が加速すると考えていたが、上院共和党もトランプ政権も対中国への制裁法案を加速させている。が、昨日時点では大きくメディアには取り上げられてはいなかったが、本日、急に取り上げられてきた。
明らかに、トランプ政権と共和党は一丸となって中国叩きに舵をきったのだ。もう米中ディカップリングの流れはとめられない。

トランプ大統領、米連邦退職基金の中国株投資引き揚げ指示

ものすごく驚いたニュースです。カドロー国家経済会議(NEC)委員長とオブライエン大統領補佐官(国家安全保障担当)まで連盟でおくっているので、トランプ大統領の単独行動ではなく、トランプ政権の意向だと考えてよいのです。
この法案は、マルコ・ルビオ議員が2019年に法案提出していたものだ(詳しくは、私の過去記事をご覧ください)。そして、ルビオ議員は、先週にトランプ大統領に進言していた。
FOXビジネスでは、書簡がキャプチャされている。ただし、これはあくまで大統領の「要請」から労働長官が働きかけて提言になったことに留まる。規制するは法案化になるだろう。

トランプ米大統領が、連邦退職基金が中国株式に投じる約45億ドル(約4830億円)の資金引き揚げを指示し、投資先として中国株との関係を絶つ方向に動いているとFOXビジネスが伝えた。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-05-12/QA75G8DWLU6801

スカリア労働長官は11日、FRTIBのマイケル・ケネディ理事長に送付した書簡で、中国企業の株式を含むファンドに米国の連邦職員や軍人の退職金を投資することをやめるよう求めた。
FRTIBのキム・ウィーバー報道官は、スカリア長官からの書簡に関するコメントを控えた。ただ、米国の法律ではFRTIBは「投資に関する方針を策定」し、年金基金の加入者の利益のために役割を果たす権限が与えられており、スカリア長官の働き掛けは提言の位置付けとなる。

https://jp.reuters.com/article/usa-china-investment-idJPKBN22O2CR

しかし、これはトランプ大統領にとっては、大きな賭けにでたということになる。トランプ大統領は、自身の再選挙を11月に控えている。大統領一般教書演説では、失業率が過去最低、雇用は過去最高になったことを大々的に演説していて、”経済絶好調のトランプ大統領”としてキャンペーンを続けていく予定だった。しかしながら、それがコロナウイルス感染拡大により使えなくなった。それだけでなく、自身の危機感欠如により、初動が遅かったことで蔓延してしまって経済閉鎖まで招いた。
なので、ここへきてどういうアピールポイントで戦うかが非常に注目されていた。WSJでは、トランプ大統領再選の最善策は中国叩きという記事が書かれた。同じような内容で、ワシントン・ポストでも書かれていた。しかしながら、米中摩擦を劇化させることは、株価下落を招く。実際に、2019年、2018年とそれが起こった。経済が強いというイメージをつくりたいトランプ大統領にとっては、それは避けたいはずだ。なので、株価を下落させずに米中摩擦を続けるというジレンマに陥るはずだという意見が多く見受けられ、なあなあになり、結果的にはバイデン候補に負けるのではという話もでていた。

ところがですよ。トランプ大統領が株価下落をまねいてでもいいから、中国叩きをすると決めたなら、非常に大きな変化なわけですよ。
実際に、共和党連邦議員は上院・下院で中国叩きに向けて動いているわけです。
となると、共和党・トランプ政権が一丸となって中国叩きに向かっているということで、それは強力な動きです。
一方で、米民主党もその流れに反対するという動きはあまりないわけです。ただ、民主党議員は新型コロナウイルス対策法案の方が優先順位高いだけでしょう。そもそもウイグル人権法案などは民主党主導で昨年末に法案化していた経緯があるから、どちらかというと民主党議員の方が中国制裁法案には前のめりなはず。

共和党の The COVID-19 Accountability Act (新型コロナウイルス感染症責任法 )が提出される

グラム議員が中国制裁法案を提出した。制裁自体は民主党も同意するだろうが、トランプ大統領に制裁権限を与えるという部分では、民主党と交渉が必要ではないかと思われるなあ。

「COVID─19(新型コロナウイルス感染症)責任法」の法案では、米国または同盟国、世界保健機関(WHO)などの国連機関が主導する同感染症調査の内容について、中国が完全な説明を提供したとの認証を米大統領が法成立から60日以内に行うよう義務付けている。
大統領には、資産凍結や渡航禁止、ビザ(査証)取り消し、米金融機関による中国企業への融資の制限、中国企業による米証券取引所への上場禁止など、一連の制裁を科す権限を与えている。

https://jp.reuters.com/article/health-coronavirus-usa-graham-idJPKBN22O3BA

ウイグル人権法案が今週中に成立しそう

これも先週のビッグニュースだったが、早ければ今週中にもウイグル人権法案が成立しそうとのことだ。

米上院は、イスラム教徒の少数民族に対する人権侵害で中国当局者に制裁を発動する法案の早期採決に向けて動いている。米議会での反中感情の高まりを示しており、中国政府の反発は必至とみられる。
  共和党のマコネル上院院内総務は先週、上院が近く、ウイグル族などイスラム教徒に対する中国の人権侵害を巡る制裁法案の通過を目指すことになると述べていた。事情に詳しい3人の関係者によると、上院指導部は迅速な法案通過を図るため議員の間に異議がないかを見極めている。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-05-12/QA8NH0T0G1KW01?srnd=cojp-v2