1/10-15の米議会/選挙制度改革とnord stream 2 制裁法案の採決

12/17(金)は深夜ちかくまで投票してクリスマス休暇(および地元活動)に入った上院議会ですが1/3からワシントンに戻ってきています。とはいえ、 州間高速道路95号線が大雪で通行止めになってVA州上院議員Tim Kaineも閉じ込められたりしたことや、昨年の1/6議事堂襲撃の式典など色々重なり、先週は承認投票がたった1名のみで終えた。
上院議会は1/10-14に再開するが、また1週間休みの予定となっている。
下院議会は1/10から2週間本議会を開催する予定だ。

ペロシ下院議長は、追加経済対策の可能性を示唆したが、 再選挙は2024年なので選挙に関係ないマンチン上院議員とシネマ上院議員が どう判断するかですね。
2/18までは2022年度つなぎ予算が終了するので、まずは年度予算の可決が終わってからとなるようです(引用元:Bloomberg

1. Build Back Betterは事実上頓挫

・マンチン上院議員は、法案について反対したまま
・1/4の時点で、マンチン大統領はバイデン大統領との交渉は再開していないと語っている(引用:The Hill
・SALT(州・地方税)も民主党上院内部ですりあわせできていない(引用元:The Hill

マンチン議員の今まで表明した反対理由をまとめると以下二点である。
①財政赤字をこれ以上増やしたくない
→Build Back Betterで増税(歳入増)や歳出減でバランスとれば済む話。
②インフレへの強い懸念

インフレについては、EIA予測をみると暖かくなるにつれてエネルギー価格はゆるやかな下落、というより高止まりになるので、更なる上昇は先月時点では見込まれていない(引用元:EIA)。食料品全般は2022年も上がる見込みだ(引用元:WSJ)。特に穀物価格の更なる上昇についての懸念は残るが、今週また新たな収穫予測が発表されるはずなのでそれを待つことにしよう(引用:過去ブログ「2022年も穀物価格の上昇」)

一方で、マンチン上院議員への寄付は、直近2ヶ月で36企業から$26万に達した。石炭・鉱業関連PACから$15万以上を調達しただけでなく、AMEX, GS, Lockheed Martin, UHG, Blue Cross Blue Shieldなどからも企業献金あるようだ(引用元:The Hill)。インフレ懸念というのは、建前であって、本音としてはロビー団体から「 Build Back Betterに反対」するよう依頼されている可能性も高い。

さらに、マンチン議員は過度な気候変動には継続して反対表明するだろう。
というのも、エクソンは、ここ10年くらいマンチン上院議員に対して献金している間柄だ。さらに、WV州は石炭州なので、州の産業をつぶすようなことはしないだろう。特に、米国内で生産された石炭のほとんどは火力発電用だ。発電所での石炭禁止には強く反対して気候変動推進派の思うようには進まないだろう。
また、つい最近ではトヨタがWV州への追加投資と引き換えに「米国に労働組合員によって製造されたEVへの税控除増額」にも反対を表明している。

また、少し注意しておかなくてはいけないのは、法案での記載は2022年1月1日から増税が適用されることになっていることだ(引用元:rollcall)。税務専門家によると、1月中に法案が可決するなら遡及課税は可能だが、春になると遡及は難しくなるとのことだ。
シューマー多数党院内総務は1月中に可決させると意気込んでいたが、民主党議員はBuild Back Betterは1月に採決される見込みはないとしている。3月や4月まで待つことになるかもしれないと考える民主党議員もでてきている。
となると、 遡及課税は実現しない可能性が高いといえるが、注意しておきたい。


2. 選挙制度改革とフィリバスター

さて、 Build Back Better が事実上とん挫してしまったので、民主党が2022年選挙前に立法で支持を得るために何に力を入れているかというと選挙制度改革だ。
そして、その選挙制度改革を実現するためのフィリバスター改正で今週か来週にでも採決する見込みだ。

下院では既に2021年に可決した「John Lewis Voting Rights Act」と民主党上院議員50名が賛同を示している「Freedom to Vote Act」は、共和党からの賛同を得られず、フィリバスター(60票必要)を突破できない状態が続いている。なので、50票で可決できるようにフィリバスター改正したいわけだが、マンチン議員とシネマ議員が反対を続けている。 ビル・クリントン元大統領、バラク・オバマ元大統領もマンチン上院議員を説得するために連絡してきているようだ(引用元:Politico

共和党のマコネル少数党上院院内総務は、1887年に制定された Electoral Count Act (選挙人投票集計法)について 「worth discussing.」と発言したので、多少の選挙制度改革は実現するかもしれないが民主党の構想にはほど遠いだろう。実際、民主党上院議員は、 マコネル少数党上院院内総務の発言は前向きだと受け止めつつも、不十分だとしてフィリバスター改正で選挙制度改革を実現しようとしている。

正直なところ、2022年中間選挙で下院で民主党が多数派になるのは極めて厳しい状況だ。まず、共和党の下院議員で引退表明した議員は13名なのに対して、民主党下院議員は25名に達した。しかも、長年下院議員をつとめた議員や、ブラック・コーカスからの引退が目立つ。(引用元:The Hill
新たに票をとれる議員が、同じエリアで出てくるかどうか。
Squad4人組、Rashida Tlaib 議員は、引退表明したミシガン州のBrenda Lawrence議員(ブラック・コーカス)の選挙区に変更して出馬する表明をした。しかし、ミシガン州議会のブラック・コーカスからは反発が起きているようだ(引用元:The Hill
民主党も、誤解を恐れずにいえば、色々なコーカスや団体の寄せ集めであり、一致団結できる部分も多いが、好ましくないと思っている部分もあるわけで、選挙区の変更は共和党よりも厳しい気がする。

また、2020年国勢調査による選挙区割り(ゲリマンダ)も、訴訟中の州が多いものの、思ったよりもどちらかに偏るということはないようだ(引用元:Five Thirty Eight


3. nord stream 2 制裁法案

さて、共和党クルーズ議員が提案したnord stream 2 制裁法案の採決が行われる。これは、「nord stream 2 パイプラインの計画、建設、運営のために設立あるいは、パイプライン運用責任がある企業役員」に対して、資産凍結と渡航禁止を義務付けるもの。これらの制裁措置は、法案成立後2週間以内に発動されるかなり厳しい内容だ。
普通なら修正案で対応するが、今回はシューマー院内総務とクルーズ議員の取り決めで修正案はなしとしたようだ(引用元:roll call
民主党上院議員はパイプラインへの制裁を長年支持してきたが、バイデン政権になってからドイツとの関係修復を重視してきて消極的な姿勢を示してきた。そのような政権の方針があるので、上院民主党議員も今までのスタンスが揺らいできているのだ。
民主党議員の中でもロシア制裁に積極的な議員がいる一方で、この法案は厳しすぎるという見解もある。対ロシアだけでなく、対ドイツ(欧州)への踏み絵ともなる法案採決は注目に値する。



さて、最後になるが、ブログタイトルを「指数を動かす米議会」に変更した。
株価を動かすのはもちろんのこと、エネルギー問題、水資源問題など、もう少し幅広くみていきたいというのが2022年だ。

今はブログで書きなぐっているが、今年はレポート形式の配信・そのレポートをもとに動画配信(音声つけてプレゼンするていど)も検討中です。

今年もよろしくお願いします<(_ _)>