まずはスケジュール。上院議会HPによると、18日については投票権に関する法案について本会議で審議するようだ。17日、19~23日は休会になっているが、木曜日の段階では24-30日を休会するとシューマー院内総務は発表していた(引用元:The Hill)今週は流動的になりそうです。
1. 先週の上院議会の動き振り返り
① 選挙制度改革とフィリバスター
Build Back Better が事実上とん挫してしまったので、民主党が2022年選挙前に立法で支持を得るために何に力を入れているかというと選挙制度改革だ。比較的穏健な民主党カイネ上院議員(VA州)にまでBBBは”dead”と発言されてしまったので、本当に頓挫しているのだろう(引用元:The Hill)
投票権を可決させるためにはフィリバスターを突破する60票獲得しなければならないが、共和党からの賛成票は見込めない。ならばフィリバスターを廃止(せめて投票権に関してだけでも)すればいいのだろうが、フィリバスター廃止についてはマンチン上院議員とシネマ上院議員が拒否した。この2議員は、投票権法については支持しているが、フィリバスター廃止については昔から支持していないのだ(引用元:The Hill)
13日にバイデン大統領がこの2議員に対して説得を試みたようだが、公式の報道はされていないものの失敗となったようだ(引用元:The Hill)
② Nord Stream 2 への制裁法案
民主党上院議員から6名も賛同を示したが、バイデン政権の外交配慮なのか多くの民主党議員が否決した。ランド・ポール共和党上院議員が否決したんですねw
By a vote of 55-44, the #Senate did not agree to S. 3436, Nord Stream 2 sanctions bill (60 vote threshold).
— Senate Press Gallery (@SenatePress) January 14, 2022
Dems voting in favor: Senators Baldwin, Cortez Masto, Hassan, Kelly, Rosen & Warnock.
Senator Paul voted no and Senator Schatz did not vote.
ロシア制裁法案については、この法案が否決させたからといって終わらない。民主党議員は、代案として別の法案を先週提示している。 同盟国のドイツに配慮してNord Stream 2 への制裁を除外しているものの、厳しい制裁となる内容だ。
ロシアがウクライナを攻撃したら直ちに以下を発動
・プーチン大統領・政権高官、軍のトップへの制裁
・ロシア最大の金融機関への制裁
・ロシア国債の取引禁止
・SWIFTからロシアの銀行除外を承認
・ウクライナに$5億追加支援
引用元:Roll Call
ただし、この法案をいつ採決されるかは未定。しかも、この時点で支持している民主党議員は20名とかいって微妙な支持数…(引用元:ロイター)
それにしても、 あれだけ民主党議員はかねてからロシア制裁・Nord Stream 2 制裁で積極的だったのに大半が否決したことは注目に値する。同盟国との関係を重視するバイデン政権の外交を配慮する姿勢が読み取れるからだ。
考えてみれば、マンチン議員とシネマ議員との交渉もバイデン大統領だ。民主党上院議員のリーダーであるシューマー上院院内総務ではまとめきれないので、バイデン大統領には頭が上がらないのかもしれないな。
このあたり、前政権のトランプ大統領とマコネル上院院内総務の関係性とは全然違うよね。
2. 中間選挙は上院議員選挙に注目
上院選について話す前に、まずは下院議会をさらっと触れておこう。
下院議会については、各州の選挙区割りでゲリマンダーで有利にできるかどうかにかかっている。先週、オハイオ州最高裁は共和党が支配している州議会が作成した選挙区割りは共和党を不当に優遇しているという判決で、再度作り直しを命じられた(引用元:Roll Call)
もちろん、この選挙区割りが不当だと訴訟を起こしているのは民主党選挙弁護士のマーク・エリアスであり20州くらい訴訟を起こしている。現在、2020年国勢調査に基づいた選挙区割りが済んだのは26州しかないわけだ(引用元:Five Thirty Eight)。州議会が選挙区割りを発表した後に、州議会での可決→州知事の署名があるわけだが、仮に可決してもマーク・エリアスからの訴訟が待っているので、いつまでに終わるのか本当にわからないよね。まぁ各州の最高裁が一時停止くらいは判断するだろうけど、ギリギリまでかかるかもね。
さて、上院選については、共和党で引退が噂されていたWI州ロン・ジョンソン、ND州ジョン・スーン議員(現在の党幹事)が再選出馬することを決めた。しかもこの2名が再選出馬を決めたのは、 過半数を取り戻せると確信したからというのが大きいと報道されている。確かに大きなモチベーションだろうな(引用元:The Hill)
マコネル上院院内総務にとっては朗報だろう。というのも共和党上院幹部でありRINOのロイ・ブラント議員(MT州)、シェルビー議員(AL州)が引退してしまうからだ。また、民主党にとっても穏健派のロブ・ポートマン(OH州)の引退は痛手だ。他にも財政規律を重んじるポートマン議員(PA州)、リチャード・バー議員(NC州)が引退する。
引退議員が5名もいる上で、共和党議員は20名の再選挙議員(民主党は134議員)に直面している。しかし、引退議員を引き継ぐ上院議員候補は、今のところすべて議席をおさえる見込みらしい。
むしろ、民主党はマーク・ケリー(AZ州)、Maggie Hassan(NH州)、 Raphael Warnock (GA州)を共和党議席に変更できるだろうとよんでいるようだ。仮に3議席をフリップしたとして、引退議員の議席をすべておさえたとしても共和党53議席だ。可決に必要な60票は厳しいし、バイデン大統領の署名拒否権があるから、なかなか政策が進むのは厳しいだろうね。
共和党は自信満々なようだが、PA州はパープルステートなので難しいはずだ。
AZ州、GA州は共和党にフリップするかどうか注目だな。基本的には青い州のNH州までフリップしたら驚きだな。