欧州の電力危機は2022年1月から本格化

欧州の卸電力ベンチマークは21日、1MWhあたりEUR300を初めて超え、過去最高を更新している。ドイツの2022年契約ベースロード電力はEUR305、同契約内容のフランスでは、EUR399.5となった。さらに、2022年12月期限の欧州CO2排出枠は、EUR81.7(1tあたり)と過去最高を更新(引用元:Nasdaq

フランス :欧州大陸の電力輸出国

まずは、欧州大陸では一番の電力輸出国であるフランスから。
遂に、電力価格高騰で、フランスでは減産や完全停止など産業に影響が及ぶようになった。Aluminium Dunkerque は電力価格の高騰で過去2週間で生産抑制。Nyrstarは1月の第1週にフランスの亜鉛製錬所を休止予定だ。Azomures SAは一時的に生産停止となった(引用元:Bloomberg
現在は、フランス国内の原子力発電容量である10%に該当する原発が停止しているが、1月初旬には、フランスの原子力発電所の約30%が停止することになる。数日前から石油を用いて火力発電を増加させて発電させているようだが、来月にかけてますます増えることになるだろう。
また、フランス国内における暖房熱源は、主に電気なので、寒ければさらに電力需要が増すことにも注意が必要だ。

フランス電力先物の最新価格2月受け渡しでは、
ベースロードは一時EUR1,025/MWh、ピークロード:EUR1,925/MWh。

https://www.eex.com/en/market-data/power/futures#%7B%22snippetpicker%22%3A%22EEX%20French%20Power%20Futures%22%7D

ドイツ:原発閉鎖と風力供給の弱さ

2021年の年内でドイツ国内の原子力発電容量の半分に該当する原子力発電所を閉鎖する計画だ。本日現在、ドイツ国内でこの閉鎖を一時停止する計画はない。残り3つの原子力発電所は2022年末に終了予定だ(引用元:Bloomberg
しかも、電力消費が増加している中なのに風力発電出力が落ちているため太陽光に大きく頼ることになっている。当然、それを埋めるのは火力発電になる。

https://www.agora-energiewende.de/en/service/recent-electricity-data/chart/power_generation/22.11.2021/23.12.2021/today/

欧州は、今年全体を通して風力発電供給が昨年と比較して減少した。
欧州最大の風力発電事業者である英国、ドイツ、デンマークの風力発電設備の稼働率は、第3四半期には設備容量の14%にとどまり、例年の平均20〜26%に比べて低くなった(引用元:ロイター

風力発電は運転コストが低いため、燃料費がかかる火力発電所に比べて安価な電力を卸売りすることができるし、二酸化炭素排出コストも抑えられる。風が強い時には卸電力の価格が下がるが、風が弱い時期には電力卸価格が上昇する。より多くの火力発電所が必要となるからだ。単純な構造ということだ。

Wind power generation has low operating costs, offering cheaper wholesale power than thermal plants that must pay for fuel, along with costs associated with carbon emissions.
This makes wholesale electricity prices lower at times of high wind, leading to lower consumer bills. Weaker wind periods, which are not uncommon, cause prices to rise and more thermal plants are needed.

https://www.reuters.com/article/idUSL8N2SY424

オランダ:来年から石炭火力発電は設置容量の35%まで

来年から、オランダの石炭火力発電所は、設置容量の最大35%までしか運転できなくなる。オランダでは2030年までに石炭火力発電所の設置が禁止される。
オランダのエネルギーミックスは天然ガスが半部以上を占めるだけでなく、長年、電力の純輸入国であった。主にドイツとベルギーからの輸入に頼った構造だ。しかし、2021年には輸出が上回ることとなった。

クリーンエネルギーは、風力が約半分を占め、次いでバイオマス、太陽光が急増している。

来年もドイツ・ベルギーの電量輸出が出来ればいいが、風力・太陽光に頼る構造だと厳しい気もするのだが、どうなんだろうか。