下院議会は予算決議可決後に再び休会/バイデン政権に痛手となった最高裁判決

先日書いた通り、先週は下院議会における$3.5兆経済対策の予算決議がありました。民主党下院議員内で、穏健派を中心とした約10名の民主党下院議員がインフラ法案を先に可決するように迫りました。
結局のところ、 ペロシ下院議長および民主党指導部は、9/27までにインフラ法案を可決するという約束で穏健派を納得させました。今回は規則を変更(deemedという投票せずに、可決とみなす規則)して、東部標準時間8/24に予算決議をみなし可決させている。その規則には、9月27日までにインフラ法案を議場に提出することを約束する文言も含まれているので口約束では終わらないようにした。

さて、先週はいったん下院議員は地元に戻ったようですが、今週は委員会活動がはじまります。9/6のLabor Dayはまた地元に戻るようなので、各委員会の動きも来週になるかと思われる。

$3.5兆の財政調整法案の詳細については、過去のブログをご覧ください。

アフガニスタン撤退の混乱について

アフガニスタン撤退についての混乱の原因を探る上院外交委員会での公聴会開催は宣言されましたが、いまだにスケジュールには入っていません。 上院は引き続き休会中で、たまにpro forma session(小会議だと思っていいです)があるくらいというのがあるのでしょうね。
さすがに米兵で犠牲者がでた時は、シューマー上院院内総務も即座に「国防長官と対話して状況確認した」と状況報告しつつ犠牲者に対しての弔いもツイートしていました。まあそういうことだと思います。民主党議員にとって多少の混乱は想定内なのではないでしょうか。
上院議員のツイートは民主党・共和党ともに毎日ざっとみていますが、民主党は国内経済対策に集中していて、外交は興味ない感が満載です。どちらかというと、アフガニスタンでのパートナーの難民受け入れ枠を拡大せよという意見が多いですね。

一方で、共和党がバイデン政権を攻撃するのも想定内で、いい攻撃要素ですよね。マコネル少数党上院院内総務はラジオで「トランプ前大統領ならもっとうまく撤退できた」とか発言したらしいですが、さすがにそれは何言ってるの…と思います。まあ選挙対策ですね。(参照元:The Hill
アフガニスタン撤退については、確かにトランプ前政権が言い出したことですがポイントがいくつかあります。
①トランプ前大統領は、アフガニスタン撤退を望んでいたが、前政権時代から大半の共和党議員から反発があった。つまり、政権と共和党議員、共和党内部でも意見が割れていたのは事実です。親トランプ派だった米議員も撤退には反対している議員も大勢いました。
②バイデン大統領は、トランプ前政権が決めたことを撤回することもできる権限があります。なので、「トランプ前政権が決めたことを、継続してやる」と判断したのはバイデン政権です。

何が言いたいかというと、どっちも選挙対策のために「前政権/現政権のせいだ」といった発言が目立ちますが、ぜんぶ選挙対策ですから。あと、共和党議員とトランプ政権にそもそも意見の不一致があったことは覚えておいた方がいいかなと。


バイデン政権に痛手となった最高裁判決

先週は、バイデン政権にとって痛手となった最高裁判決が二つもでた。

一つ目は、1年半にわたって家主グループが訴訟していた「立ち退き禁止令(evicion moratrium)」でバイデン政権側(政府)が8月26日に最高裁で敗訴したかたちとなった。つまり、8月頭に実施した10月頭までの延長も取り消しとなったわけだ。
参照元:https://apnews.com/article/health-courts-pandemics-coronavirus-pandemic-daa34fb48a04dc9f3ddad94fb6b4cbb2
理由は、 以前から判断されていたように「連邦法に基づいてCDCは立ち退き禁止令を実行する権限がない」ということだ。延長を認めないようなので、早ければ家主は数日以内に立ち退き訴訟起こすはずだ。最高裁は、 evicion moratrium を実施するなら立法化すべきという見解を示しているので、立法化せずの行政判断ではもう続くことは難しいわけだ。
立退き訴訟の基本フローとしては、立ち退き訴訟を起こしてから実際の立退きまでは1~2か月かかる。たまに、荒っぽい家主が「今すぐ出ていけー!」みたいに家具を外に出すことはあるが、それは稀である(ディープ・サウス(南部)では多そうなイメージもあるが…)。少なくとも、今まで家賃を支払わずに他に支出していた分が、家賃を支払うことになるため消費は落ちるだろう。 賃貸遅延をしているのは約400万人もいる。

なお、NY州、CA州、NJ州、MD州あたりの青い州とTX州は10月・年内まで州内については立退き禁止令(evicion moratrium)を知事が発令した。しかし、これも家主グループが、州政府を訴訟すれば最高裁判断に従わざるおえないだろう。 既に家主グループは$400億ほど、家賃収入を得られなくて損害をうけているという試算もある。

二つ目は、8月25日、前政権が実施したMPP政策(難民/不法移民をメキシコに残留させる政策)を直ちに復活させるという下級裁判所の判決を最高裁が支持したことだ。バイデン大統領はMPP政策廃止を公約にしていたが実現できない結果となったわけだ。
7月、国境を超えてくる移民(難民)は21年ぶりに20万人を突破。昨年10月から累計で130万人が中南米から米国に押し寄せているって… 米国の州で一番人口が少ない州は約60万人くらいだから、州を乗っ取れそうな人数だ。
参照元:https://www.washingtonpost.com/politics/courts_law/supreme-court-remain-in-mexico/2021/08/24/6bba350a-0507-11ec-a654-900a78538242_story.html

米国の三権分立は非常にはっきりしていて、政府に対して訴訟が起こることが非常に多い。米議会は行政活動を監視する役割を担うし、最高裁は政府・大統領の行政命令を違憲とすることもある。司法判決は時間がかかるが、行政に対しておこっている訴訟に対してはきっちり後を追っていく必要がある。

失業保険給付増額の期限切れ

さて、今週末に失業給付増額が期限切れをむかえます。
PUAとPEUCも連邦政府が実施している失業給付なので、これも失効します。
つまり、 PUAとPEUC受給者の約900万人が給付を失い、州プログラムを受給している約280万人は増額分を失います。

尚、ヤーマス下院委員会委員長からの発言からは、延長の見込みがないようです。