米議会は先週は休会中なので、法案については特に大きな動きもなく1週間が過ぎました。
今週の米議会は、8/23、24日に1つ大きな動きがあります。
それは、下院での$3.5兆の財政調整法案の予算決議です。予算決議とは、財政調整法案を進ませるための第一歩で、この決議が可決されないと財政調整法案は進みません。予算決議は、予算委員会が各委員会に予算を割り振るため、ある程度は予測することが可能になります。
既に上院で可決した予算決議は、先日のブログで記載済なので、ご覧ください。
さて、予算決議についてはスムーズに進むと思いきや、民主党下院議員9名が「上院で可決したインフラ法案を先に採決して可決しない限り、予算決議には反対票を入れる」と宣言しました(参照元:Roll Call)
この9名が宣言通り否決したら、予算決議は可決しません。
なぜなら、現在の下院議席数をふまえると民主党は3議席しか造反者を出せないからです。本来の下院議席数は435名ですが、現在は3議席が空席。最短で11月にOH州特別選挙(日本でいうところの補欠選挙)が予定されています。それまで空席は埋まらないため、造反者を3名におさえて可決させる必要があります。 空席の理由は、①バイデン政権入りして、下院議席辞任 ②コロナ禍で亡くなったなどです
さて、ペロシ下院議長は、この9名の宣言に対して、まったくひるむことなく「インフラ法案は、$3.5兆財政調整法案可決後に可決させる」と強気の姿勢です。尚、下院民主党で最大コーカスであるプログレッシブ(約100名)のうち半数は、 「インフラ法案は、$3.5兆財政調整法案後に可決させる」 という姿勢です。要は、下院民主党内で意見が対立しているんですね。
ペロシ下院議長は、インフラ法案も財政調整法案も10/1までに可決させるために “hard at work” と発言していますが、8/23-24の予算決議次第になりそうです。
可決しなければ、11月~12月を覚悟した方がよいかと思う。
Speaker Nancy Pelosi (D-Calif.) said Saturday that the lower chamber is “hard at work” to pass both a bipartisan infrastructure bill and a larger, Democrat-backed spending package by Oct. 1.
https://thehill.com/homenews/house/568891-pelosi-says-house-working-to-pass-infrastructure-bills-by-oct-1
インフラ法案の上下院の調整
先日のブログでも書きましたが、上院議会ではインフラ法案(新規支出では$5500億)を可決しましたが、下院議会では6月末に$7600億のインフラ法案を可決しています。下院と上院で可決した法案では$2100億の相違があり、その相違は①飲料・廃水インフラ:$550億(下院は$1680億)、②EV用充電ステーション構築&zero-emissionバス:$100億(下院は$500億)です。
この相違をどう解決するのか注視していましたが、どうやらインフラ法案を作成した上院超党派グループは、下院交通委員会DeFazio委員長の協議に応じない姿勢を貫いた。なので、 下院交通委員会DeFazio委員長が妥協して、彼が実現したかった上下水道インフラ整備や EV用充電ステーション構築については財政調整法案に盛り込む考えのようだ。(引用元:Roll Call)
ただ、Roll Callにも指摘があるように、バード・ルールの壁があるので、果たしてインフラに関する支出が、バード・ルールにより除外されないのか疑問が残る。しかも、その判断は Senate Parliamentarian が判断する。
2022年中間選挙とゲリマンダ
先日、2020年の米国勢調査が発表された。米国の国勢調査は10年に1回だ。
各州はこの国勢調査結果をもとに、各州法にもとづいて選挙区を再編成していくわけです。
多くの州では州議会がこの選挙区の再編成を決める権限をもつ。自党に都合のいいゲリマンダをするのも、州議会次第なのだ。なので、州議会で多数党になるということは、非常に重要だ。しかし、民主党は2020年の州議会選挙では現状維持になった。つまり、州議会を一つも多数党にひっくり返せなかった。むしろ、いくつかの州では州議会の多数党を奪われる結果になった。数十年にわたる選挙戦略の失敗だといってもいいだろう。
この結果、共和党は187の下院議会の区割りを決定し、民主党は84の下院議会の区割りを決定することになったままだ。
この最新の国勢調査をもとに、州議会が下院の区割りを決定していくということは、直近10年間は民主党にとって不利に働く。
The Hillの記事は、まさに今後10年間の選挙は不利に働くことを指摘していて、そのために民主党に必要なことを示している。その通りだと思うわけだ。
要は、民主党は穏健派とプログレッシブに分裂した状態のままで、「警察改革」や「投票権」などの問題を含め、内部での争いが絶えないのだ。
共和党は州議会選挙を重視していることを民主党は嘆いているようだが、この攻略法は正しい。すべてがRuleで動いていて、Divide&Ruleが基本なのだ。
Walking that line will require the type of unity that has been scarce among Democrats.
https://thehill.com/homenews/campaign/568476-democrats-scramble-to-reclaim-lost-ground-in-statehouse-battles
The party remains riven with internal squabbles, including on issues like “defund the police” and voting rights.
Moderates say those issues made centrist candidates vulnerable, while progressives say strong stances on those topics are needed to energize voters. But every Democrat acknowledges that some form of unity is needed to shore up their defenses.
“That would be the ideal thing,” said Arizona’s Alston, “but I don’t know that in the Democratic Party that’s ever been the reality.”
Beyond policy presentation, Democrats also need donors and the party infrastructure to step up early.
Several Democrats who spoke to The Hill lamented that Republicans put a greater emphasis on state legislative races and that money must start flowing now to be prepared for 2022 and beyond, including for the next redistricting cycle.
すべてがRuleで動いていて、Divide&Ruleが基本というのは現在の50州の構造をみていてもわかる。以下の地図でカラーリングされているところは、公有地(連邦政府の土地)なのだ。赤い部分は、インディアン居住区。
いくつか、米国の歴史をみる文献をみると「ファーイーストエリア&アラスカは内陸植民地だ」なんという表現をみるが、まさにその通りなのだろう。独立州でありながら、ほとんどが連邦政府の土地で、州の土地ではないわけだ。「米国の 統治は、Divide&Ruleが基本」というのがわかると、色々とつながるのである。