【1】米議会上下院スケジュール
上院議会は、予定通り2週間の休会に入りました。 Pro forma sessionはありますが、本議会はないので投票はありません。7/12午後から再開予定。
また、下院議会は7/1までは本議会がありますが、7/5の独立記念日をはさみ1週間は休会、7/12~16は投票はなしで、委員会活動のみ(現時点での状況)
通常なら、8月はほとんど議会は休会です。下院はほぼ1ヵ月休会で地元に戻っての活動になり、上院は1週目だけ本会議がありますが、8/9~9/12まで約1ヵ月休場。民主党指導部は、夏季休暇返上でインフラ法案を可決すると意気込んでいますが、どうなることやら。
連邦政府による失業給付増額の期限切れが9/4に迎えることになります。それまでにはなんとか法案を可決させたいとしていた。しかしながら、マンチン上院議員が 「連邦政府による失業給付増額は不要だ」と発言しているので、もうそこに間に合わせなくていいのではないか?という疑問も生じる。
【2】インフラ法案の行方
①インフラ法案、今どうなっているかというと
「合意した」とはいうものの、民主党指導部は条件をつけた。どういう条件かというと$4~6兆の大型パッケージである経済対策を財政調整法案として可決しない限り、超党派インフラ法案を可決させないとしたのだ。ペロシ下院議長は明確に本会議でとりあげないと宣言し、バイデン大統領に至っては署名しないと拒否権をちらつかせた。6/26(土)に、バイデン大統領は「拒否権行使する」と脅したつもりはないと言い訳(6月28日追記)
下院議会で最大勢力をほこるプログレッシブコーカスのジャパル議長が同じ宣言をしているので、これは彼らの条件なのであろう(参照元)
尚、現在、上院予算委員会ではサンダース議長が主導して10年間で$6兆の予算を作成している。また、下院予算委員会のヤーマス議長も$5~6兆の予算を組んでいると報じられている。(引用元:Roll Call)
一方で、この財政調整法案を先に可決しないとインフラ法案を本会議でとりあげないという条件には共和党員も怒り心頭だ。超党派インフラ法案に賛同していた11名の共和党員のうち2名が「この条件なら、超党派インフラ法案の支持を取り下げる」と宣言した。そうなると60票に届かなくなるので可決が危うくなる。
また、全然別方向から、民主党内部の下院議員2名が財政調整法案について賛成しないという話がでてきた。現在の下院議会は3名の造反者しかだせないので、これ以上反対者がでてくると財政調整法案が下院でさえ可決が厳しくなる。(引用元:Roll Call)
②インフラ法案の交渉メンバーと法案の内容
今までの経緯とインフラ法案の内容を少し振返ってみる。 まず、木曜日にバイデン大統領と超党派議員が合意に達すると報じられる。メンバーは、共和党5名、民主党5名だ。シネマ上院議員はこの法案を主導したのかね、先日のWPでの「フィリバスターの動議終了させるには60票が必要」宣言と言い、かなり目立つ存在になってきた。WPの記事はこちら、一読する価値があると思います。
Our bipartisan agreement will upgrade critical infrastructure, create jobs, and expand opportunities for AZ. Honored to have @POTUS’s support. pic.twitter.com/uy4dKOubGa
— Kyrsten Sinema (@SenatorSinema) June 26, 2021
次に、超党派インフラ法案の内容です。
いくつか数字が飛び交っているのですが、 すでに承認されたインフラ資金に加えて新規で$5,790億予算を追加して、合計で5年で$9,740億となるインフラ法案の枠組みです。共和党が頑なに増税(富裕税にもガソリン税にも)は賛同しなかったので、増税なしに実現できるようにするようです。歳入をどこで賄うかというとIRSに$400億増額して、徹底的な税金取り締まりを行うという計画なようです。ただ、本当に実現できるのか?という疑いがあるので、まだ要検討ということでしょう。詳細の内容は、マンチン上院議員のツイートからとりまして、この内訳です(参照元:WP)
クリーンエネルギー関連プロジェクトで大きいところは以下の通り。
・送電網整備を含む電力インフラ $730億
・EV用バッテリーに$75億
・EVバス/トランジットにも$75億
この法案で$1,000億近い資金が投入されることになるが、バイデン政権が掲げた再エネプロジェクトへの$3,000億規模の税額控除は含まれていない。
また、50万台の電気自動車用充電ステーションを建設や、全米スクールバス20%をEV化も実現は難しいだろう。
ただ、税額控除などの税制については財政調整法案で盛り込めるのででそこは心配ないだろう。可決するかどうかは別ですが。
③インフラ法案と財政調整法案の今後の流れ
以下のような流れで進んでいくと予測している。繰り返すが、 10年間で$6兆の予算を作成している。
バイデン政権で含まれていなかったのに、民主党指導部が盛り込もうとしている大きな予算としては以下のような内容だ。
・メディケアの受給適格年齢の引き下げ 65歳→60歳
・メディケアの対象範囲拡大 歯科、聴力、視力なども対象にする。
・薬価引き下げ(←ただしこれは民主党内部でも反発が強いので可決難しい)
・Child Tax Creditについて年内限定ではなく恒久化(いっても最大10年だが)
→確かこれだけで$1.6兆かかる。
・増税
いずれにしろ、何度も書いているように予算決議(予算委員会が各委員会に振り分ける予算)がみえてこないとなんともいえない状況だ。上下院予算委員会で微妙に一致していないこともわかっているので、その調整も必要だろう。
まずは、7月中に上下院予算委員会から提出される予算提案書を待つしかないだろうと思う。その手掛かりになるのは、既に各委員会で提出された法案であり、それについては何度か書いているのでそちらをご覧ください。