2022年11月米中間選挙にむけて

2022年11月中間選挙に向けて着々と動きが出てきたので、いったんまとめようと思う。中間選挙では、米連邦下院議員の選挙、上院議員の選挙が実施される。
大統領選がある総選挙と異なり、例年は注目度は控えめではあるが、今年は米議会の議席数が拮抗していることもあり、今までよりは注目が集まるだろう。
バイデン政権にとっても上下院で民主党が多数党ではなくなると、バイデン政権の政策が更実現が難しくなるので、決して負けてはならない戦いでもある。

【1】米上院選挙(民主党議席14、共和党議席20)

上院議員の任期は6年で、だいたい3分の1くらいが2年ごとに入れ替わる。
現在の議席数は50vs50なので、上院選は非常に重要だが、そもそも共和党は苦しい戦いを強いられるだろう。
というのも、2022年で引退する共和党上院議員が少なくとも5名いて、2名の引退も予測されている。
―パット・トゥーミー (PA州)
― ロブ・ポートマン(OH 州 )
― リチャード・バー (NC 州 )
― リチャード・シェルビー(AL 州 )
― ロイ・ブラント(MO 州 )
この2人も引退が噂されている
― チャック・グラスリー(IA 州 )←87歳と高齢
― ロン・ジョンソン(WI 州 )←3期目はやらないと過去に宣言してたが微妙

皆、2期以上務めた重鎮だし、超党派で動ける議員も数名いる。彼らは主流派に属す。AL、MO州などは真っ赤な州なので、よっぽどではない限り共和党が議席を埋めるだろうが、問題はPA、NC、WI州だ。また、OH、IA州も民主党が勝利することもあるから気が抜けないだろう。270towinをみても、PAとNCがまだみえない状況のようだ。

だからといって、民主党上院が安泰なわけでは決してない。民主党にとっては上院議席をのばせるチャンスであることは間違いない。しかし、民主党上院議員で選挙予定の14議員のうち4議員は、再選確率が決して高くはない。

―マーク・ケリー/Mark Kelly(AZ 州 ) ←2020年勝利したばかり1期目
―ラファエル・ワーノック (GA 州 ) ←2020年勝利したばかり1期目
―マギー・ハッサン (NH 州 ) ←2017年勝利して2期目
―キャサリン・マスト (NV 州 ) ←2017年勝利して2期目

既にインフラ法案を巡って、インフラ支出法案は、バイデン大統領案&民主党指導部の政策を盛り込むことよりも、超党派であることが重要だと民主党ケリー議員とハッサン議員が発言している(引用元:Politico
そう、バイデン大統領の経済対策案を民主党単独で実現させるということは、2022年中間選挙でパープル州または民主党の地盤がやや弱い州の選挙戦が不利になるということなのだ。ケリー議員とハッサン議員は、よくわかっているからこそ 、超党派の重要性を発言している。
2022年中間選挙をふまえた動きをする議員が出てきているので、バイデン政権の経済対策が民主党単独の$6兆案は実現しない可能性が少し高まってきたと考えてもいいかもしれない。

また、 労働組合リーダー達は、「労働者の団結権を保護するための法案( the PRO Act)」に民主党議員全員が賛同しないと、次の選挙で選挙支援しないぞと脅している。ケリー議員は、PRO Actに賛同していない(引用元:Politico

尚、民主党内部で反対票が目立ってきているマンチン上院議員とシネマ上院議員は2024年再選挙に該当する。なので、2022年に民主党議員が例え議席数を伸ばせたとしても、マンチン上院議員とシネマ上院議員の反対がでて法案が通過しないということは考えなくてはいけない。

【2】米下院議会の現状と、議席空席の特別選挙

まずは、現在の下院議会の構成がどうなっているかを振り返り。コロナ禍の中、議員で亡くなる人などがでていて現在は4議席が空席なのだ。
一番早い補欠選挙で House Texas District 6 が7月末なのだが、もう共和党2人の決選投票となっている。
つまり、現在は下院で過半数可決するには3名しか内部反対者を出すことができないが、TX下院議員が決定してその宣誓が確定したら2名しか内部反対者をだせないことになる。その次の補欠選挙はオハイオ州で2名で決選投票は11月初頭だ。とはいえ、オハイオ州で民主党2名が制したとしても、やはり3名しか内部反対者をだせないので苦しい戦いがしばらく続くのだ。

尚、下院民主党の一大勢力は、プログレッシブ・コーカス(急進左派)だ。当然だが、Squadは全員入っているし、下院予算委員会Yarmuth 議長、下院金融サービス委員会  Maxine Waters議長、 天然資源委員会Raúl Grijalva議長、歳出委員会 Rosa DeLauro 議長などざっとみただけでもかなりプログレッシブ・コーカスから委員会議長という要職についていることがわかる。

https://progressives.house.gov/caucus-members

【3】米下院選挙

①国勢調査の影響
2020年は10年に1度の国勢調査が行われたため、下院議席数配分も変更が入った。CA州、NY州の人口が減少したと話題になったが、選挙への影響をみてみよう。
以下が示すように、民主党州は人口減少した州もあるが、OR、CO州が増加して-2議席といったところだろうか。逆に共和党は+3議席といったところだ。PA州はどちらにもカウントしていない。なので、ほんの少しだけ共和党が有利になると考えていいだろう。
現状の下院議席差を考えれば、数議席でもプラスで獲得できれば

https://www.reuters.com/world/us/new-us-census-data-will-show-which-states-gain-or-lose-house-seats-2021-04-26/

②主に共和党州で着々と行われている投票制限法

既に、14の州で投票に関する規則を強化する法律が制定されている。
例えば、以下のようなものだ(参照元:ワシントンポスト
【FL州】
・有権者が2年ごとに郵便投票申請を更新し、身分証明書を提出することを義務付ける
・有権者が郵便投票用紙を返送するためのドロップボックスは、期日前投票の時間帯に限定され、1日最大12時間までしか投函できない
【GA州】
・有権者に郵便投票申請書を積極的に送付しない
【AZ州】
・郵便による早期投票の申請時に身分証明書の提出を義務付ける

総じて、郵便投票が不利になり、選挙に対してコミットしていない人が多い民主党には不利に働く結果となるだろう。民主党は、これらの選挙に関する制限法を激しく非難している。年内にTX州が最も厳しい選挙制限法を可決するかもしれないので、これも注目しておく必要がある。

あと、 ゲリマンダの影響はおさえておく必要がある。赤い州でも都市部は人口流入で民主党員が増えるというのはその通りではあるんだが、肝心なのはゲリマンダだ。選挙区はだいたい同じ人口ならよく、飛び地的なエリアがあっても成立する。その選挙区を決める権限は州議会に委ねられているのだ。 現在の州議会は共和党が牛耳っている州の方が多いのだ。

国勢調査の影響と、 共和党州で着々と行われている投票制限法という二点だけでも、下院議会にとって民主党は2020年よりは苦しい戦いを強いられることになると予測される。また、現状の議席差をふまえると、少しでも議席を獲得して法案を可決しやすくしたいはずだ。

あとは、選挙となるとトランプ元大統領の影響についても書き留めておく方がよいが、それはまた別の記事にします。