◆ 読むキッカケ
A Promised Landが何を指しているのか知りたくて。正直、特にそれ以外は期待していなくて、一応読んでおこうかくらいでした。
◆ 目次
第一部:賭け
第二部:YES WE CAN
第三部:反逆者
◆ 概要
オバマ元大統領のルーツにはじまり、カリフォルニア州オクシデンタル大学→コロンビア大学→ハーバード・ロースクールへの進学。イリノイ州議会議員、連邦下院選挙での敗北、上院選挙当選、大統領選出馬、リーマン・ショック、大統領就任して約1年間の出来事が書かれている。
長い。とにかく長い。ミシェル元大統領夫人へのねぎらいや、褒めたたえや家族おもいな一面がぎっしり詰め込まれている。
◆ 抜粋
私は、女性参政権論者から、あるいは初期の労働組合組織者から多くの学びを得た。ガンディーから、レフ・ワレサから、アフリカ民族会議から。何より公民権運動における若い指導者っちに感銘をうけた。(数行省略)
第一部「駆け」P.31
他人をおとしめるのではなく持ち上げることで、いかに自分たちが大きな力を発揮できるか?それこそが真に機能する民主主義だ。誰かから与えられるものではなく、利益集団が特権を分け合うためのものでもない。民主主義とはみんなの力で実現させるものなのだ。そうすれば、現状を変えるだけでなく、関わった人達やコミュニティに尊厳が備わり、ばらばらに見えた者どうしも絆でつながることができる。私は、この理想を追求してみようと思った。
自分の思いに一番近いと感じたのが、コミュニティ・オーガナイジングという活動だった。地域の課題解決にむけて、ごく普通の人たちを連帯させていく草の根活動だ。(省略)
第一部「駆け」P.36
まず、私は頭でっかちな自分から脱却できた。人々にとって本当に大切なことを知るためには、机上の論理だけでなく、そういう人達の生の声を聞く必要があった。
それに、なす術もなく終わった下院選と比べて今回は幸運に恵まれた。4月に入り、ピーター・フィッツジェラルドが再選に向けて出馬はしないと表明した。キャロル・モズリー・ブラウンは、復帰を目指せばおそらく指名されたはずなのに、どういうわけか大統領選への挑戦を選んだ。これで、戦いはかなり楽になった。予備選ではほかに6人の民主党立候補者がいたが、私は複数の労働組合や主だったイリノイ州選出議員からの指示をとりつけて、イリノイ州南部やリベラル層の支持基盤強化にもつなげた。
「今回の選挙で君も出馬を考えるべきだと思う。いや、そのつもりはないと繰り返し言ってきているのは知っている。それに間違いなく、君の経験不足を指摘する声も多く出るだろう。だが、これだけは言っておく。上院であと10年働いたからといって、大統領としての資質が上がるわけじゃない。君なら人々を元気づけられる。特に若者、マイノリティ、それに白人の中道派もだ。わかるか、これはほかの人にはまねできない。国民は、新しい政治を求めている。もちろん、厳しい戦いになるだろう。だが、私は君なら勝てると思っている。チャック・シューマーもそう思っているぞ」ハリーは立ち上がると、ドアのほうへと歩いて行った。明らかにミーティングはこれで終わりというメッセージだ。「私が伝えたかったのはそれだけだ。考えてみてくれ、いいな?」
(数行省略)
しかし、そのあとでシューマーに会い、さらにディック・ダービンに会うと二人からも同じ話を聞かされた。この国は新しい声を切望している。出馬するのにこれ以上有利なポジションにつくことは今後もない。そして、私が若者やマイノリティや無党派層のあいだに築いてきている関係が、党の支持基盤を拡大させて、ひいてはほかの選挙区で民主党候補者を勝利に導くきっかけにもなるというのだ。
「僕自身は何一つ計画したわけじゃない。」そう言って、彼女の隣に座った。ミシェルは無音の画面を見つめたまま答えた。「知ってる」
公民権や職権乱用、その他黒人に特有の問題ばかりに焦点を当てすぎると、より幅広い有権者層から、反感とまではいかずとも不信感をもたれてしまうと懸念していたのだ。それでも良心から人種問題に声をあげようという政治家はいたかもしれないが、その代償を払う覚悟が必要だった。黒人も、農民や銃愛好家や特定の民族集団などと同じく普通の利益誘導型政治を行うことはできるが、あくまで危険を承知のうえで行わなければならないのである。
第二部「YES WE CAN」 P.197
(数行省略)
ホワイトのアメリカがいつまでも罪を償わないことに義憤をもちつづける永遠の抗議者になるつもりはなかった。どちらも先人たちが通ってきた道であり、どちらも根本的には絶望から生まれたものだからだ。そうではなく、大切なのは勝つことだ。私は黒人に、白人に、そしてあらゆる肌の入りのアメリカ人に証明したかった。もはや古い理屈は超越して、進歩的な課題のもとに、安定した過半数の票を集結させられるということを。不平等や教育機会の不足の解消といったアジェンダを国政で議論の中心に据えて、しかも実際に成果をだせるということを。
バイデンは出身地のペンシルベニア州スクラントンに深く根を下ろし、アイルランド系労働者階級の家系に誇りをもっていた。私たちの先祖はどちらもアイルランド出身の靴職人で、わずか5週間違いでアメリカに旅立っていた。(省略)
第二部「YES WE CAN」P.269
バイデンの熱さには、まずい一面もあった。一人でしゃべり続けてしまう癖が、誰よりも強いのだ。発言に遠慮や配慮がないせいで、苦しい立場に陥ることもしばしばだった。
(省略)
当初、バイデンは副大統領要請に難色を示した。大半の上院議員と同じく、彼も健全なエゴの持ち主で、ナンバー2に甘んじることを嫌ったからだ。私は会談で、副大統領の仕事が彼のためになる理由を説明し、形式的な代役ではなくパートナーを探していると言い切った。
(省略)
バイデンにもリスクはあった。マイクの前で自制を失い、無用な論争を引き起こしかねないし、古いやり方をするところや目立ちたがり屋なところ、ときおり内省や自己観察を欠くところもあった。
しかし、ナンシーを過小評価する政治家は自分の首を絞めることになる。彼女が権力の会談を上りつめることができたのは、まぐれでもなんでもないからだ。ナンシーは東部のイタリア系アメリカ人の家に生まれた。父親がメリーランド州ボルチモア市長を務めていたこともあり、幼少よりイタリア人街のぼすや港湾労働者たちと交流していた。政治の世界でも、物事を決着させるためならひるまず強硬策に打ってでる。夫のポールとともに西海岸に移ってからは、夫はビジネスで成功を収める一方、彼女は家で5人の子どもを育てていた。だが、やがては若くして仕込まれた政治教育をいかして、カリフォルニア州の民主党と議会の双方で着実に頭角を現し、アメリカ史上初の女性下院議長となった。ときに民主党の同僚から不平が聞こえてきても動じることはない。実際のところ、ナンシーほどタフな人物はいないし、法案成立の戦略家としての腕前で彼女に肩を並べるものもいない。そして、持ち前の注意力、資金集めの技量、約束を果たせなかったものをすっぱり見限る気概の総合力で自分の会派をまとめあげている。
第三部「反逆者」P.391
初動の勢いをつけるために、私の署名ひとつで実現できる選挙公約を見定めておくよう、ラーム・エマニュエルは政権移行チームに支持を出していた。私はキューバにある米軍のグアンタナモ収容所における拷問を禁止する大統領令に署名し、1年はかかるとみられる同施設の閉鎖手続きを開始した。私たちが立てたいくつかの倫理規定は、ホワイトハウスの歴史上もっとも厳しいもので、ロビイストに対する規制強化も含まれていた。
第三部「反逆者」P.370
商工会議所のような昔ながらの業界団体は、底が割れたような経済状況と、その衝撃ですでに会員の収益に影響が出ていることに動揺し、最終的に賛成の立場をとるようになった。しかし、共和党に対する彼らの影響力は、すでにコーク兄弟のような億万長者のイデオローグにとって代わられていた。コーク兄弟は何十年物歳月と何十億$もの資金を計画的に費やして、シンクタンク、利益団体、メディア操作、政治工作員などからなる巨大ネットワークを築きあげた。その明白な目的は、近代福祉国家の痕跡を一掃することだ。彼らにとってあらゆる税は収奪にほかならず、社会主義への道を均すものであり、あらゆる規制は市場主義の原則とアメリカ流の生活様式に対する裏切りなのである。大統領就任式の直後、アメリカでもっとも富裕な保守数名をカリフォルニア州のリゾート地に集め、秘密会議を開いた。彼らは私たちと妥協する気も合意をとりつける気もない。彼らがしたいのは戦争なのだ。そして彼らは、オバマの政治に逐一反対するほどの根性のない共和党政治家は献金が干上がっていくのを目の当たりにし、金回りのいい挑戦者の標的にされるだろうと吹聴してまわった。
私が全米自動車労働組合(UAW)と個人的に強いつながりをもっていることも助けになった。組合のリーダーたちは、組合員の職を確保するには大きな変革があると認識していた。
オバマ政権かでUAWは特別扱いうけたようだ(引用元:ヘリテージ財団)
◆ 感想
オバマ元大統領みたいな理想主義者は、もう米国大統領にはなれないのではないだろうか。というのも、あそこまで理想主義に徹したのには、彼が幼少期をほとんど米国本国以外で過ごしたことが大きな要素なのだろう。だからこそ「A Promised Land」が米国であるということを暗にほのめかせているのかもしれない。明確には書いていなかったが、そうだろうと思える。
高校までを本国以外で過ごし、大学進学では、リベラルなカリフォルニア州、NY州にある大学に進学している。そのうえで、シカゴに愛着をもち、労働者からヒアリングして苦労がわかったなどと書いているのは、自分がその立場になかったということだ。
一番驚愕したのは、当時の民主党上院院内総務ハリー・リード、現在の上院院内総務チャック・シューマー現在の上院院内幹事のディック・ダービンから背中をおされて大統領選に出馬したということだった。彼なら選挙に勝てるという風に明確に書いている。その読みは、ピタリと当たったということだ。
ということは、現在、上院議会を牛耳るシューマー議員とダービン議員は大統領選で「バイデン大統領なら勝てる」と考えて後押ししたとしてもなんら不思議ではない。そもそも、バイデン大統領は、オバマ大統領が立候補した時にも、もちろん立候補しているが、資金不足や票集め不足で早々に撤退している。2020年も当初は資金集めが民主党内部で5番目くらいで無理だとみられていたくらいだ。
あと、オバマ政権時代から、バイデン大統領は当初賛成していたイラク戦争に反対しはじめ、アフガニスタン戦争にも反対していたから、今騒がれている撤退は遂行されるだろうね。
ラーム・エマニュエル(元シカゴ市長/ユダヤ人)については、戦略家で非常に厄介な人物だね。オバマ元大統領自身は、重宝していたようですね。この人、日本の米国大使をするよう指名されたはずですが承認はどうなっているんだろうか。
オバマ元大統領自身でさえ「そんなに信仰熱心ではなかった」と言っているわりに、やたらと聖書が引用されているのはあるね。牧師の発言がたびたび出てくるからかもしれない。注意書きが書いてあるけど、聖書の世界観がわからないと、ほんとわからないだろうなあと。