前回書いた話の続き。
上院議員がワシントンに戻ってきた。早速、トランプ政権と共和党幹部の会合が行われた。明日は、ムニューシン財務長官と、共和党幹部、民主党幹部それぞれでの会合が行われる予定だ。
共和党案1兆ドルというのがみえてきた段階で、民主党は既に下院で通過している3兆ドル規模のThe Heros Actを実現させるために徹底的に戦うとシューマー上院少数派院内総務は宣言している。
まず、共和党案が検討している項目について、民主党案を照らしあわせて考えていくことにする。共和党案の中で、 ほぼ確定していてメディアに出てきたのは、この5つのようだ(順番に特に意味はない)
共和党案 | 民主党案 | ||
1 | 現金給付 | 年収4万ドル以下に 1人$1200 給付 | 1人$1200 世帯$6,000 上限 |
2 | 失業保険週$600増額 | 継続したとしても、一律増額ではなく、失業前収入を上限 | $600増額を2021年1月まで継続 |
3 | 学校への支援 | $700億 | $1750億 |
4 | 給与保護プログラム(PPP) | なんらかを実施 | 年内継続 |
5 | COVID-19テストや防護服など費用支援 | COVID-19テストや防護服 などの経費50%までを給与税控除 |
まず、現金給付だが、マコネル上院院内総務の発言だから、ほぼ確定だと判断していいだろう。年収4万ドルというと、軽トラック運転手やファストフード店員など、ブルーワーカーがだいたいカバーされることが予測される。
次いで、学校支援もほぼ確定で、学校を再開させるというのは共和党にとっても最優先事項の一つだ。民主党案の予算まで引き上げられる可能性があるだろう。
相場にとって一番気がかりなのは、失業保険週$600が増額するかどうかだが、継続したとしても一律増額ではなく、失業前収入を上限とすることでほぼ確定になるだろう。
そう考える理由としては、ムニューシン財務長官がそのように発言していること、共和党議員から根強い継続反対意見があることだ。
失業保険週$600については、収入の2倍ちかく受給してしまうことになるとしてグラム議員をはじめとしたコーカスが最後まで反対していたが、緊急予算ということで妥協している。もう妥協しないだろう。共和党議席数53議席なので共和党造反者がでれば法案は通過しない。
給与保護プログラムについては、未だに1100億ドルちかく予算がのこっていて、ローン受領した半分近くが既に使い切ったとしている。これ以上申請企業数は増えないと思われるが、二回目のローンとして申請したい企業はある。ここをどうするかだろうが、ぜんぜん情報がない。
COVID-19テストや防護服などにかかったコストの給与税免除は、まだ一部のコーカスからの提案らしいので未定といったとこだろう。
トランプ政権要求の給与税は含まれない
ジョン・スーン共和党上院院内幹事が給与税を支持しない と発言しているし、ジョン・コーニン共和党元院内幹事も給与税を支持しないとしている。
上院銀行委員会委員長のチャック・グラスリー議員も、「給与税が効果あるとは思えない」と発言しているのを重く受け止めるべきだろう。
給与税がメディケアなどの財源になっていることから、民主党は大反対しているので民主党が下院で多数派党を占めているようでは、給与税減税は入らないな。
米民主党は、州・地方政府への財政支援が最優先事項
米民主党にとって最優先事項は、州政府・地方政府への財政支援だ。 The Heros Actでは1兆ドルの予算を割り当てている。 共和党案との交渉でここを最優先で使いたいはずだが、共和党がどうしても受け入れない時は、次にどこを交渉カードに使うかはわからない。
現段階で、地方政府は破産申請可能だが、州政府の破産というのは法整備が整っていない。マコネル上院院内総務が、「州政府の法整備もしたほうがいい」なんて発言をして猛反発をくらったが、共和党は基本的に州・地方政府への財政支援をしたがらない。しかも、FRBが地方自治体流動性ファシリティー(MLF)で地方債を買い取るから、州の財政を先方政府に頼るなというのが本音だろう。
選挙前ではあるのだが関係ない上院議員も多い
選挙前だから財政出動するだろうという考えは、その通り。
上院共和党議員で再選挙を控えている議員は53名中24名で半分いる。再選を控える議員には、マコネル上院院内総務やグラム議員などの幹部(ギャング8に入るようなメンバー)がいる一方で、二期目をかけての戦いとなる新人議員も多い。すでに3名ほどは落選がほぼ確実視されている。
共和党は、過半数議席を確保できるかどうかの瀬戸際なので、重要な局面であることは間違いない。 ただ、多数党を確保するために、再選挙を控えていない上院議員が自分の信念を曲げるかというと、どうも私はそう思えない。
パット・トゥーミー議員をはじめとして、財政健全化に対して強い信念をもつ議員もそれなりにいるので、どんどん財政支援していくとはどうも考えにくいのだ。
主要な参考資料URL
https://www.washingtonpost.com/us-policy/2020/07/20/coronavirus-stimulus-bill-july/
https://thehill.com/homenews/senate/507904-congress-set-for-showdown-on-coronavirus-relief-legislation
https://www.politico.com/news/2020/07/20/trump-gop-payroll-tax-cut-coronavirus-negotiations-373090
https://www.rollcall.com/2020/07/20/payroll-tax-cut-on-menu-in-coronavirus-aid-talks-mccarthy/