10/23-28米議会:長引く下院議長選。立候補者9名のうち有力候補はエマー院内幹事とRSCハーン議長

先週までの流れ:3度の下院議長投票でも決まらず

フリーダムコーカス初代議長(現在はフリーダムコーカスから脱退)のジョーダン議員は20(金)は下院議会で3度の投票を実施したが、1回目 200票(10/17)・2回目199票(10/18)・3回目194票(10/20)と過半数を得ることができずに終わった。10/20の朝、ジョーダン議員は議長から撤退しないと宣言して迎えた投票ではさらに票を落とした。そのこともあり、ジョーダン議員を議長候補として続けるかどうかを巡る党内の無記名投票を実施。候補指名を取り消すに賛成112対反対86でジョーダン氏の候補指名を取り消すことになった(引用元:House GOP abandons Jordan for Speaker after secret ballot loss

下院議長選はリセット。立候補者は10名

今回の立候補者は9名。有力候補は2名。
House Majority Whip Tom Emmer (R-MN) 共和党下院院内幹事/RSC所属
Reps. Kevin Hern (R-OK) RSC議長

Jack Bergman (R-MI)  RSC所属 / U.S.-Japan Caucus
Mike Johnson (R-LA) 共和党会議副議長/RSC幹部/天然ガスコーカス
Austin Scott (R-GA)   RSC所属
Pete Sessions (R-TX)  RSC所属
Dan Meuser (R-PA) RSC所属/Problem Solvers Caucus 
Gary Palmer (R-AL) 共和党政策委員会委員長/ フリーダムコーカス所属
Byron Donalds (R-FL)  RSC所属 /フリーダムコーカス所属

有力候補は、共和党下院院内幹事のトム・エマー院内幹事。
共和党指導部の役職はすべて下院共和党党内選挙で選ばれるのだが、エマー院内幹事は当時のRSC議長ジム・バンク議員に115-106で勝利した(引用元:ballotpedia)。このように院内幹事選も圧勝というより、ギリギリで勝利しているので最有力候補ではあるが、圧勝できるとは言い難い。ただ、マッカーシー元議長はエマー院内幹事を支持したので、マッカーシー支持派はエマー院内幹事支持で動くだろう。ただ、エマー院内幹事はトランプ前大統領を支持すると表明していないし、1/6以降は批判もしているのでトランプ前大統領を支持する議員は投票を控える可能性が指摘されている。
ちなみに、エマー院内幹事は先日の政府閉鎖を回避するつなぎ予算にも債務上限一時停止にも賛成している。一方で、RSC議長のハーンはどちらもNAY。

下院共和党内にはFive Familiesがいるといわれている。5つのコーカスがあり、最大コーカスはRepublican Study Committee(RSC)だ。やはり一番懸念されるのは、フリーダムコーカスがどこに票をいれるかだろう。マッカーシー下院議長選の時は、一部がRSC議長のハーン議員にいれる時もあったので、ハーン議員なら妥協するのではなかろうか。そうなると、エマー院内幹事とRSC議長ハーン議員の一騎打ちになるのではないかなぁというところだ。いずれにしても一回では済まず、また数日~1週間はかかるだろう。

つなぎ予算が執行する11/17が着々と近づく

年初にたてた下院のスケジュール(黄色が本会議実施日)では、本来は来週から2週間の休会に入る予定だった。年度予算作成にむけた貴重な審議と採決の時間を下院議長選につかってしまったことで、スケジュール再構築することになるだろう。で、時間がない。

2024年度予算は各委員会が可決した12の法案をセットにして本議会で採決にかけるわけだが、現在は12法案のうち4法案しか下院で可決できていない。
上院は基本的に下院議会の法案を待つというスタンスだったが途中から上院でも作成するという方針に変えたが、こちらも委員会での採決は通過しているが、本議会では採決にはまだかけられていない(引用元:Appropriations Status Table: FY2024
12月いっぱいは、またつなぎ予算を可決して政府閉鎖を防げばいい。昨年までは1年間くらいつなぎ予算でも特に問題はなかった。

しかし、今年はFiscal responsibility Act of 2023により年度予算は政策をうける。年内にはつなぎ予算ではなく、年度予算を可決しないと強制的な1%削減となる。来年に年度予算を可決すればいいと悠長には構えてられないのだ。

Fiscal responsibility Act of 2023で制約をうける2024年予算
①国防費は2023年度の水準より△約3%、$280億多い$8863億に制限。
(3%というのは、米インフレ率の約半分に相当するので実質減額となる)
②非国防費(退役軍人給付は維持)は2023年度の水準より▼約9%、$700億少ない$7037億に制限
[予算編成に関して注意点]
注意1:2024年度と2025年度の年度予算法案がそれぞれの会計年度の1月1日までに制定されない場合、裁量支出は現在の2023年度より強制的に1%削減となる(PAYGO原則の復活)。つなぎ予算で可決することは認めていない。
つまり、
注意2:特定の部分で1%引き下げではなく、全体的な削減
1985 年均衡予算法(Balanced Budget and Emergency Deficit Control Act of 1985) に基づきOMB(行政管理予算局)が削減可能な範囲を算出することになる。
参照元:『米議会6/5-9:FISCAL RESPONSIBILITY ACTの整理と政治的勝者・敗者 』https://ni225-topix.com/?p=9891
Automatic spending cuts would threaten infrastructure funding

上院議会の動き

上院議員は超党派で、イスラエルに訪問。サウジにも訪問(引用元:The Hill
これだけ短期間に超党派議員が訪問するってなかなかないわ。上院議会は全会一致でイスラエル支持・ハマスを非難する決議を通した(引用元: The Hill )
シューマー上院院内総務は、バイデン大統領から要請されたウクライナ・イスラエルなどの支援予算$1000億に応じる構えをみせている。上院共和党は反対は多少でても可決できるだろうけど、下院がどうなるかまだみえない。議長決まらないとなんともいえない。