10/16-21米議会:今週も下院議長選挙に注目

1週間の休会を経て、上院は本議会が再開する。今週から11/17までは、週末以外は本議会を開催する予定(今のところ)。下院は先週からカレンダーが更新されず…。

共和党党内会議による下院議長選が続く

先週は下院本議会ではなく、党内会議の無記名投票で下院議長選が行われていた。最終的に、スカリス下院院内総務(LA州)とジョーダン議員(OH州)が10月11日に一騎打ちとなって投票するが 113対99でスカリス議員が多く票を得た。

スカリス下院院内総務はここから、ジョーダン議員支持派から票を獲得できるように動くが、健康面も含めてスカリス下院院内総務に対して根強い反対派がいたことで10月12日に下院議長選からの撤退をスカリス下院院内総務は表明した。現在就いている下院院内総務は続けるとのこと。
ここで、スカリス議員に一度党内投票では負けたジョーダン議員が再浮上。

ジョーダン議員一択になるかと思いきや、スコット議員(GA州・RSC)が立候補表明したことで、ジョーダン議員 v. スコット議員となる。無記名投票の党内投票による結果は1回目 124-81でジョーダン議員が多く票を獲得する。2回目では 152-55でさらに多く票を得る。驚くべきことに、初回のスカリス下院院内総務よりも、票を多く獲得した状況だ。
しかし、それでも下院議長に就任するには票が足らない。217票が必要なのだ。歴史的に本議会での投票では少数党からの票は得られない。1月の下院選挙で15回投票した時も民主党はずっとジェフリーズ下院院内総務に投票していた。

ジョーダン議員は、週末に票をかためるとしていたが、二つの動きがでている。
複数の議員によると10月17日(火)正午頃に、たとえ共和党から217票が見込めなくても本議会で下院議長選を実施するとのことだ(引用元:Politico)

①ジョーダン議員反対派の説得・交渉に30~50人は動きそうというフリーダムコーカスのマッシー下院議員は最新情報として発言した(引用元:Washington Times
②ジョーダン反対派は本議会投票にむけて、別の候補者を立てようと画策しているという動きもある(引用元:Politico

さすがに下院議長空席を続けられないので、どの議員が立候補するにせよ、反対派との取引が必要になることは間違いない。
下院議会が動かないので、当然ながら年度予算も動いていない。なので、11月17日のつなぎ予算を前に年度予算を可決できずにまたつなぎ予算になるだろう。

ところで、共和党内の一部議員は、現在の仮議長であるマクヘンリー議員に権限をもたせてイスラエル支援法案を進めようという動きをしている。しかし、これは党内でも多く反対派がいることもあり実現するかは未知数だ(引用元:The Hill

ジョーダン議員が下院議長に就任したら

ジョーダン議員は、 フリーダムコーカス創設者のメンバーで、初代議長。”legislative terrorists”ともよばれているほどだ。
LibertyとBill of Rights(合衆国憲法修正第1~10条)、財政規律を何よりも重んじる議員ですね。増税反対・減税推進。

ジョーダン議員は、基本的に法案をまとめるために取引しない。なので、実は反対派を取り込んで立法をまとめていくような経験がほぼない。 正直、巧みな取引で立法を進めてきたシューマー上院院内総務と協議できるのか未知数なところがある。話が平行線になって取引できないのではなかろうか。

尚、直近の重要な投票では
・9/30に下院で可決した政府閉鎖を防ぐつなぎ予算にはNAY(NO)に投票
・6月の債務上限(Fiscal Responsibility Act)にはYEA(YES)

さらに、ジョーダン議員といえば、2013年オバマの医療改革・2018年トランプ前大統領が国境の壁をめぐって実施した時の政府閉鎖を引き起こした1人の議員なんですよね。

また、ジョーダン議員が下院議長に就任したらウクライナ支援は遠のく。ウクライナ支援をしないとは発言していないが、自国の国境警備が先だと断言してる。一方で、イスラエル支援はおそらく進むだろう。ジョーダン議員はAIPACがendorseする人物の1人だからだ。

ちなみに、ジョーダン議員は政治家になる前は高校・大学チャンピオンのレスラーとしてキャリアを積み、オハイオ州立大学のレスリングコーチだった人物だ。なかなか珍しい経歴でもある。