米議会6/26-7/1:米国とインドが21世紀を決めていくと定義

7/4(火)はIndependence Day(米独立記念日)があるため米議会は2週間の休会に入りました。次の米議会、下院は7/11~、上院は7/10~本議会開催です。

ロシアの件も気になりますが、米議会が休会中に加えて土曜・日曜日ということもあり米議員から懸念の声が極めて少ない。本当に危機の時は、すぐさま声明文発表などあるので私は様子見にしています。
バイデン大統領およびバイデン政権は動いておりますね(引用元:The Hill

モディ首相の訪米まとめ

モディ首相は、6/21~6/23に訪米した。今一度まとめておきたい。

①バイデン大統領、モディ首相の歓迎式典(6/22)

21世紀の行方を定義するのは米国とインドの二か国と定義したということだ。
世界を動かす潮目が完全に変わったと思っていいだろう。

I’ve long believed that the relationship between the United States and India is one of the — will be one of the defining relationships of the 21st century.
(中略)
Stories that define the relationship and the limitless possibilities between the United States and India: two great nations, two great friends, two great powers that can define the course of the 21st century.

https://www.whitehouse.gov/briefing-room/speeches-remarks/2023/06/22/remarks-by-president-biden-and-prime-minister-modi-of-the-republic-of-india-at-arrival-ceremony/

②バイデン大統領との共同記者会見 (6/23)

「インドと米国のパートナーシップは世界で特に重要なものであり、今まで最も強靭で、緊密で、ダイナミックなものです」と共同記者会見で発言しているわけだが、これは米国はインドを最重要国と定義したわけです。
「でも…」と言いたくなりがちだが、ここは黙って「 米国はインドを最重要国と定義した」と考えたほうがよさそうです。記者会見でいろいろ突っ込まれていますが、バイデン大統領も「私たちはともに民主主義国だ」と発言しているので、もうそう定義したのでしょう。

A partnership that is among the most consequential in the world, that is stronger, closer, and more dynamic than any time in history.

https://www.whitehouse.gov/briefing-room/speeches-remarks/2023/06/22/remarks-by-president-biden-and-prime-minister-modi-of-the-republic-of-india-in-joint-press-conference/

◆2024年に国際宇宙ステーションにインド人宇宙飛行士を送り込むことを含む有人宇宙飛行の協力を行う
◆量子コンピューティングや人工知能のような重要かつ新たなテクノロジーに関する専門知識を共有し、抑圧の道具として使用されないようにする
◆半導体サプライチェーンの協力およびインドと米国間で強化
◆RANオープンネットワークの推進と協力
◆防衛産業の強化
◆インド企業が米製造業への$20億以上の投資
◆インド人学生・インド人のH-1Bビザの優遇(H-1Bビザのすでに73%がインド人だが、さらに増やす気のようだ!引用元:ロイター
その一環として、 BengaluruとAhmedabadに新たな領事館も開設するようだ(引用元:hindustantimes.com
→もしかしたら、インド企業に勤めて移民となってインド国籍を取得したほうが米国企業に就業しやすい未来がでてくるのかもしれない。
◆ インド、イスラエル、UAE、米国で構成される新しい枠組み「I2U2」を通じて、私たちは中東との地域的なつながりを構築し、食糧安全保障やクリーンエネルギーといった世界的な課題に対して取り組んでいく。
→どうやらI2U2は、 インド太平洋地域で、日本、アメリカ、オーストラリア、インドで構成される「クアッド」の中東版とも呼ぶべき存在のようだ。 インドは、長年の友好国であるイランに加えて、エジプト、イスラエル、ペルシャ湾岸のアラブ諸国との関係も強化しようとしてきている(引用元:www.newsweekjapan.jp
ちなみに、モディ首相は訪米後は、エジプトに訪問していてアル・ハーキム・モスクまで訪問している(引用元:www.ndtv.com


③米議会でのモディ首相演説 (6/23)

全文読まなくてもいいですが、インド政府のページには全文掲載されていました。 突っ込みたいところはおさえましょう。ガンジーとMLBの話をだしてきて justiceを打ち出してきたことは民主党には強く響くだろう。
やはりポイントは、インドは民主主義・インクルージョン・サステナビリティの国家だと定義してきたことでしょう。「世界の2大民主主義国であるインドとアメリカ」という風に強くアピールしてきていますね。ちなみに、米議会で モディ首相に最大の拍手喝采があったのは 「米国はインドにとって最も重要な防衛のパートナー(“most important defense partner”)」と発言した時です。民主主義国ということについては、やや冷ややかだったよう(引用元:Roll Call

Now, the US is the oldest and India the largest democracy.
Our partnership augurs well for the future of democracy.
Together, we shall give a better future to the world, and a better world to the future.
(中略)
We pay tribute to Mahatma Gandhi and Martin Luther King Junior. We also remember many others who worked for liberty, equality and justice. Today, I also wish to pay a heartfelt tribute to one of them – Congressman John Lewis.
(中略)
A spirit of democracy, inclusion and sustainability defines us. It also shapes our outlook to the world. India grows while being responsible about our planet.

https://pmindia.gov.in/en/news_updates/address-by-pm-to-the-joint-session-of-the-us-congress/?tag_term=pmspeech&comment=disable

ちなみに、米議会で唯一のムスリム教徒であるタリブ議員とオマール議員はモディ首相の演説をボイコットしました。理由はもちろん、インド国内でのムスリム教徒弾圧です(引用元:the Hill
尚、米議員70名弱はバイデン大統領に対してモディ首相のヒンドゥーナショナリズムやヒンドゥー教以外の弾圧を問いただすように圧力はかけたようです。
とはいえ、ボイコットするような米議員は数名だし、問いただす程度なら今のところは大きな問題にはならないでしょう。ただし、民主党内にこうした指摘があることと、火種があることは間違いないです。


④恒例のインドディアスポラ向けイベント

モディ首相は、世界各地でディアスポラ(インド系移民コミュニティ)向けコミュニティイベントを開催しています。今回は事情があり、ワシントンDCで小規模イベントでした。とはいえ、ホワイトハウスでのモディ首相での演説聴くために数千人集まっているのですごいことです。米国内にインド系ディアスポラは約440万人存在していて、NYとシカゴに集中しているようです。
ちなみに、2019年はトランプ大統領がゲストで登場していて、ヒューストンの会場ではローマ教皇につぐ集客力で5万人を集めました(引用元:theprint
今回はブリンケン国務長官が特別ゲストで参加しました。ちなみに、この時も“two great nations, two great friends, two great powers that can define the course of the 21st century.” と発言しています(引用元:米国務省

ちなみに、このディアスポラは米選挙にとっても極めて重要です。選挙献金にとっても重要であり、このインドディアスポラは集団票になっているので、ここから支持を集められれるのは選挙を制すうえで重要なのです。


インドと同盟関係を結ぶことへの懸念

懸念は当然あります。モディ首相が所属するHindutva(ヒンズー教徒に極端に偏ったナショナリズム)などは最大の懸念要素の1つです。

インドの反自由主義への急激な傾斜は、米印の関係強化を図るべきだという米国内でかつて強固だった超党派のコンセンサスを、揺るがしている。20日には、70人以上の民主党議員がバイデン氏に宛てたある書簡に署名した。同書簡は、米印連携への支持を再確認する一方で、宗教面の不寛容な姿勢、報道の自由の縮小傾向、インターネットの頻繁な遮断など「懸念がある分野」について問題点を指摘するよう大統領に求めるものだった。米国平和研究所(USIP)の南アジア研究者、ダニエル・マーキー氏は、米外交誌フォーリン・アフェアーズに先週掲載された寄稿の中で、米印の「共通の価値観という認識そのもの」が「絵空事にみえるようになってきた」と主張した。
インドは重要な国であり、関係緊密化を目指すバイデン政権の姿勢は正しい。しかし、モディ氏が中国との格差を狭める方策を見つけ出し、同時にすべてのインド人の平等を実現しない限り、インドの将来性に賭ける米国の姿勢が長続きするとの見方には依然、疑問が残る。

https://jp.wsj.com/articles/can-america-rely-on-modis-india-ee8c77f6?mod=hp_opin_pos_1

とはいえ、先日のG20後に、Atlantic Council(大西洋評議会)の記事やウォルター・ラッセル・ミードが明確に「the Indo-Pacific has replaced Europe as the central theater of global politics.」と書いていることをふまえると、インド太平洋が中心にうつり、米国とインドの関係が深化していくことはもう既定路線でしょう。