米議会5/29-6/3:債務上限引き上げ含む「Fiscal Responsibility Act of 2023」 がリリース

※大前提として執筆時点(日本時間10時)情報です。
法案が提出されたばかりで、これから各議員の支持表明がでてきます。

まず、やっと先ほど「Fiscal Responsibility Act of 2023」がリリースされました

「Fiscal Responsibility Act of 2023」 法案審議のスケジュール

5月30日:
・共和党下院院内総務のSteve Scalise議員は休会中の下院議員らに火曜日までにワシントンに戻るように招集かけたようです。下院規則委員会は15時に開催がセットされました。まずは、下院規則委員会で「 Fiscal Responsibility Act of 2023」の審議に入ります。
正式にホームページに記載はないのでずれる可能性あり
・上院も15時から連邦判事の承認投票で招集済(スケジュール確定)
5月31日:
On Wednesday, the House will meet at 2:00 p.m. for legislative business. First votes expected: 3:30 p.m. Last votes expected: 8:30 p.m. (日本時間4:30~9:30)(引用元:www.majorityleader.gov/schedule
午後8時30分までに債務上限に関する取り決めを討議し、その後投票に入る予定。下院では今年から法案提出から72時間まで投票に入れないルールがあります。法案を読み込む時間がない状況で投票になっていたため、フリーダム・コーカスが強く要求した経緯があります。もちろん、ルール変更すれば投票を早めることは可能です。ただ、ルールを変更するための投票が間に挟むことになるので得策ではありません。

なお、上院議会の審議スケジュールの権限をもつ民主党シューマー上院院内総務は、下院議会が債務上限引き上げ法案を可決してから上院で審議をすると方針を示しています。

審議フローの概略

デフォルトを回避させるためには、債務上限を引き上げる法案(今回なら「Fiscal Responsibility Act of 2023」 を成立させる必要があります。大統領署名まで到達してゴールです。
アメリカンセンターから転載したフローを掲載しておきます。(概略版ですね、これは)下院議会は435議席あり、共和党222議員・民主党213議員の議席数だ。
下院議会では過半数の賛同を得れば、可決する。
ちなみに6/1に民主党David cicilline議員は引退する予定なので民主党は1議席減らすことになり空席が発生する。

https://americancenterjapan.com/aboutusa/translations/3162/

一方で、上院議会は100議席あるのだが、フィリバスターを突破するために60票が必要になる。また、フィリバスターを突破(クローシャー動議Cloture motion を可決)したとしても、討論時間は30時間に限られるだけで時間がかかる。
また、 下院には 法案に関連した修正案の提出しか認めない関連性規則があるのに対して、上院にはこういった規則は存在せず、原則として法案の内容に直接関係のない修正案も提出可能となってい る。ライダー(rider)と呼ばれる、全く 別個の法案を修正案として法案に盛り込むことも可能なので妨害手段の一つとしても使われる。


合意案が発表された時点での下院議会各コーカスの反応

基本的に米国の議会では、「派閥」ではなく「Issueや理念ごとのコーカス」でみていくのがいいです。共和党は今年作成し、民主党は昨年つくったものですが、おおよそはこれで勢力図がわかると思います。

共和党フリーダム・コーカスと民主党プログレッシブコーカスの票がとれなかったとしても、他のコーカスから票をとれれば可決します。両党が党内をまとめていくのに、そんな分裂した投票を許すのか?という疑問はもちろんありますが、その可能性も多分にでてきていますね。下院共和党の大多数を占める Republican Study Committeeが静かなのは気になりますが、彼らにとって最優先だったエネルギーの許認可改革も盛り込まれたのである程度満足しているのではないでしょうか。

交渉代理人のマクヘンリー議員とグレイブス議員が所属しているのがRepublican Study Committeeで、下院共和党の最大勢力です。 Republican Study Committee 議長から特に支持声明がでていないので状況はわかりません。とはいえ、交渉代理人が所属しているので Republican Study Committee の大勢が納得できる落としどころにしたとは思います。
また、次に多いMain Street Caucus議長(Johnson議員)や、数名しかいないProblem Solvers Caucus議長は支持声明をだしています。

一方で、フリーダム・コーカス所属の議員はこぞって反発している。
まあ40名弱しか所属していないので、民主党からそのくらいの人数が確保できれば問題ない。


次に、民主党の勢力図。

ペロシ元下院議長ふくむ、下院民主党の約半分であるNew Democrat Coalitionは明確ではないですが合意案を支持するような表明だしていますね。まあ、バイデン大統領を一番支持している人たちでもあるのでここが反対することはないでしょう。

で、問題なのがプログレッシブコーカスです。プログレッシブコーカスは現在101名が所属する下院民主党の一大勢力となっています。現在のジェフリーズ下院院内総務もプログレッシブコーカス所属です。
バイデン政権からのブリーフィング前に”not happy with some of the things”と懸念を表明しているし、法案詳細をみる必要があると発言している。
また、補助栄養支援プログラム(SNAP)受給者の年齢引き上げは現在の49歳から2023年度は51歳~、2024年度は53歳~、2025年度は55歳~となっていることなどプログレッシブコーカスが賛同するか懸念が残ります。

発表された時点での上院議会各党の反応

シューマー民主党上院院内総務からやっと声明文が発表されました。この時点で合意案に合意するともなんとも発言していないあたり何かありますね。また、法案をすでに発表されたので注意深くチェックして検討するととどめています。シューマー上院院内総務にしては、きわめて慎重な発言だと思います。

https://www.democrats.senate.gov/newsroom/press-releases/majority-leader-chuck-schumer-dear-colleague-on-an-agreement-to-avoid-default

一方で、共和党のマコネル少数党上院院内総務は早々と合意案を支持する声明文を発表しました。早いな。(引用元:Leader Mitch McConnell 
まあ上院共和党の一部は早々に反対表明だしたので、全会一致は無理そうですがマコネル上院院内総務が支持すれば10議員ほどついてくるのでフィリバスター突破は問題ないと思われます。

「Fiscal Responsibility Act of 2023」内容について

※可能な範囲でピックアップしていて、定期的に書き直す可能性あります

・債務上限は2025年1月1日まで引き上げられる
→2024年総選挙の結果をふまえて、今と同じ118会期メンバーでもう一回債務上限引き上げ法案を可決する必要がある。

・裁量的歳出から国防費と退役軍人ヘルスケア以外を除外した非国防費の歳出が2022年度より若干下回る歳出となった。2023年度よりも$420億の削減となる。

https://www.speaker.gov/house-gop-leadership-statement-on-the-fiscal-responsibility-act/

その削減は、未使用のパンデミック対策費$約280億、2022年の予算調整法で2023年分に計上されたIRS資金$14億、2024~2025年のIRS資金$100億を歳出削減の対象とする(引用元:Roll Call

・ PAYGO原則の復活
2024年度と2025年度について1月1日までに予算案が成立しなかった場合、支出を今年度の水準より自動的に1%削減

・バイデンの2024年予算案と同じように、国防費の総額は$8,860億

・2024年度と2025年度の裁量支出を国防と非国防のプログラムに分けて上限を設定し、その後の4年間は一つの上限でまとめる。2024年度以降は、毎年1%ずつの支出増となる

・ 補助栄養支援プログラム(SNAP)受給者の就労要件を設ける年齢の引き上げは現在の49歳から2023年度は51歳~、2024年度は53歳~、2025年度は55歳~となる。ただし、退役軍人とホームレスはこの就労要件を除外。

・マンチン議員、Mountain Valley Pipelineの建設許可を法案に入れ込む!
パイプラインは94%完成しているが、小川や保護された生息地を横断する建設にはまだ許可が必要で停止したままの状況(引用元:Bloomberg

・バイデン政権に対して、学生ローン支払い再開(8月末まで現在は一時停止)を要求する。

・国家環境政策法(NEPA)に基づく審査を1年以内、調査を最長2年以内とする。また、Fast-41として知られる、インフラプロジェクトの連邦政府の許可を迅速に行う既存のプログラムも拡大(引用元:E&E