3/20-25の米議会は今週は再開/銀行破綻に対応する立法はたぶん進まない/システミックリスクによる例外措置が次も発動するのか?

下院は先週休会で22-24日だけ本議会開催予定。
上院は先週のハイライトは、イラクに対する武力行使を許可した2002 Iraq AUMF とthe 1991 Gulf War AUMF の廃止が一歩前に進んだことだ。早ければ今秋にも可決。これが廃案になっても現在のイラク内における軍事行動に変更はない。ただ、 イラクや他の同盟国に無制限に大統領に武力行使権限を与えることを廃止するということは中東との外交で重要なメッセージを送ることになるとしている(引用元:The Hill

上院議会スケジュール
Red dates = Senate not in session
https://www.senate.gov/legislative/resources/pdf/2023_calendar.pdf

相次ぐ銀行破綻に対応するための法整備は進まないだろう

ウォーレン上院議員、サンダース上院議員が規制強化、保険料上限撤廃、役員報酬の没収などを訴えていますが、全体的に規制強化など法改正を進めようとする動きはあまり見受けられません。
バイデン大統領は「 銀行が破綻した場合、FDICが役員報酬を没収 」「銀行業界への再就職を禁止」をFDICに権限をつけるよう米議会に要請した(引用元:Roll Call)。経営者や富裕層を敵視するプログレッシブコーカスには人気がでる法改正だが、可決の見込みは現段階では薄い。ただし、プログレッシブコーカスがさらに民主党内で勢力拡大した時にはこれが立法される可能性があるので注意が必要だと思う

極めつけは上院銀行委員会委員長のブラウン委員長の発言としては、 「ドット=フランク法を緩和した2018年Economic Growth Act(通称:ドッド=フランク改正法)が廃止・あるいは改正する可能性はない」と15日に明確に発言しました(引用元:Roll CallBBG)。銀行委員会委員長の発言と考えると極めて重いので、法改正はないと思われる。
一方で、 ブラウン委員長 はFRB金融規制担当副議長などFRB内での規制変更を依頼している。
FRBの銀行に対する監督と規制の見直しは5月1日までに発表される予定で、おそらく「FRBの裁量」に任された$1000~2500億の資産をもつ銀行に対して変更がかかるだろう。

http://www.nicmr.com/nicmr/report/repo/2018/2018sum02web.pdf

システミックリスクによる例外措置

Mid-Size Bank Coalition of America(MBCA) が規制当局に今後2年間すべての預金にFDIC保険を適用するよう要請する書簡を規制当局に送った。
MBCAのメンバーは、約100億ドルから1,000億ドルの資産を持つ110社の銀行で構成されている(引用元: Mid-Size Bank Coalition of America
BBGの記事では、やや踏み込んでこの規模の銀行ならば システミックリスクによる例外措置の発動は難しいのではないかと書いている。
MBCAのメンバーリストみたけど、シグネチャー銀行なみの資産をもつ銀行がパラパラ見受けられますね。昨年末時点で$3億以上の資産をもつ銀行は、FRBが公開しているリストがあったのでリンクはっておきます(引用:FRB

シグネチャー銀行とシリコンバレー銀行の預金はシステミックリスクによる例外措置(systemic risk exception )が米財務省イエレン長官によって発動され、FRB・FDICの理事投票・バイデン大統領の承認をふまえて決定した(引用元:FDIC)。この段階で、すべての銀行の無保険範囲の預金が保護は決定していない。
バイデン大統領だけの権限で、無保険範囲の預金を保護することはできないし、バイデン大統領の演説みても「銀行システムは安全だ」とは発言しているが、すべての銀行の預金が保護されたとは発言していない(引用元:Whitehouse
システミックリスクによる例外措置ならまた同じステップをふむことになるだろう。さらにいくつかの銀行が破綻した場合、 システミックリスクによる例外措置が承認されれば全預金保護が続くかもしれないが、どこかで無理が出てくるはずだろう。まあ預金保険基金を使いつくしても米財務省からFDICが借り入れできて後から保険料増額で積み立てていくことは可能ではあるが…。
また、金融機関救済の禁止および納税者負担の禁止 は2010年ドッド=フランク法の第2編の214条で明記されているので新たな法案を可決しない限り無理だ。

ちなみに、リーマンショックの時に2008~2011年でざっくり銀行は約100~200社が事業譲渡(P&A)していて、2009年140社、2010年157社、2011年92社は譲渡しないで破綻となった。州法銀行だけでざっくり約4000社の銀行があり、 資産$1億~10 億小規模行は約3,000社ある。おそらく小規模銀行から大規模銀行への預金流出はしばらく止められないのではないだろうか。

関係者によれば、First Republicの預金者は$700億を引き出しており、これは預金全体の40%に相当。大手行が$300億の預金しているが、やや焼け石に水感が否めない。VBと同様に損失を抱えているので他行による買収か資金調達が必要としている(引用元:WSJ)シグネチャー銀行はすでに買収合意されたようだ(引用元:BBG) 事業譲渡(P&A) できるのがベストだ。

WSJでは、NY地区では先週、FRBシステム全体(FDICふくむ)$550億の貸し出しがあったが、このすべてがシグネチャー・バンクの買収のための融資かもしれない。また、First RepublicはすでにFEDのDiscount windowで$200億から$1090億を借り入れたとしている。

The balance of last week’s borrowing, at $233 billion, was in the San Francisco district. That could include roughly $88 billion in borrowing to the successor to Silicon Valley Bank. First Republic Bank has also said it borrowed between $20 billion and $109 billion at the discount window between March 10 and March 15.

https://www.wsj.com/livecoverage/stock-market-news-today-03-17-2023/card/fed-data-most-emergency-lending-was-in-the-west-kxnej1EBAiqh9yZ5XUZO

預金保険料増額に不満の声

SVBやシグネチャー銀行破綻で全額預金保護にでたことと同時に、預金保険料の増額がいきなりリリースされた。
なぜ経営者の失敗による他行破綻の預金保険料増額という形で尻拭いを自分たちがしなくてはいけないのか不満が上がっているという話だ(引用元:BBG
たぶんここも預金保険料増額しないようにロビー活動が活発化しそうだ。

債務上限問題は未解決のままXデーに近づく

イエレン財務長官が米議会証言で「銀行システムは依然として健全だが、米議会が債務上限引き上げを期日までに実施できなかった場合、銀行には壊滅的な打撃となる」と警告した。
米議会で債務上限引き上げ問題は、ほぼまったく進んでいません。Xデーは6~8月であと数か月後にくる。
まずは共和党下院内の交渉がやっとスタートラインにたちました。さすがにフリーダムコーカスの要求を他の共和党下院議員が全部のむとは思わないが、まあこれのすりあわせですね。