米議会3/13-18: 共和党フリーダムコーカスから債務上限交渉の条件が公開

今週は、上院議会のみ14-16日の開催。下院議会は、13~21日まで休会。

下院議員はワシントンを離れていた議員も多かったが、シリコンバレー銀行の件でワシントンに戻ってきた議員もそれなりにいたようだ。
上院議員は火曜日の夕方から投票が1件あるだけ。

上院議員では入院が相次ぐ

さて、米議会は入院が相次ぎ、党派で別れるような投票がずっとできていない。
民主党PA州選出上院議員 John Fetterman氏は脳卒中が原因のうつ病に患っているようで “will be back soon”と3月6日時点で発表しつつも、まだいつ復帰するか声明がでていない。

また、上院議員共和党トップのマコネル上院少数党院内総務(81歳)も転倒して入院した(引用元:The Hill)命に別状はないようだが、共和党上院を長く務めたマコネル上院院内総務が急遽引退になったら共和党内の勢力バランスが変わることは間違いない。さらに、彼の資金調達力は選挙において極めて重要なので、マコネル上院院内総務が不在となったら上院共和党議員の選挙に後退することになるだろう。


フリーダムコーカスから債務上限交渉の条件が公開

下院では共和党が多数党ではあるものの、下院共和党内では著しく分裂している。マッカーシー下院議長は民主党と協力するか、下院共和党内を団結させるかしか道はないが極めて交渉が難しい。簡単にいうと民主党と協力はできないけど、三権分立・財政規律・Libertyを強く重んじるフリーダムコーカスの要求に屈すれば、大多数の共和党の方向性にそぐわない。もう大多数の共和党は財政規律を主張しつつも、フリーダムコーカスほどにはLimited Governmentを望まないのですよね。マッカーシー議長にとっては非常に難しい舵取りだ。

そんな中で、まずはフリーダムコーカスからの要求待ちだったわけだが、やっと公表された。これで債務上限に関してやっと交渉がスタートできるようになったわけだ。とはいえ、具体性にいまいち欠ける部分もあるのだが、経済的に重要なところをまとめると以下5点になる。

①裁量支出を10年間2022年度の水準に維持
-2023年度から$1310億削減が必要 ( 国防費以外のすべての支出を25%削減)
-国防費は現水準を維持し、非国防費を削減
②バイデン政権に対して学生ローン債務免除の撤回
③IRA法の気候変動対策で無駄な部分をカット(具体的には言及なし)
④国内エネルギー増産(連邦政府の土地のリース促進・拡大)
⑤COVID19基金で使われなかった基金を終了させる

フリーダムコーカスの要求についての詳細声明文

.facebook.com/freedomcaucus/

さて、年間の裁量的歳出から非国防費以外で $1310億削減 ってなかなか大変です。当然民主党は反発していますが、さすがに債務上限引き上げを拒まれて経済混乱させられるくらいなら、この要求を呑むのではないでしょうかね。もっとも、まずは共和党下院議員内でも $1310億削減は意見が分かれるところでしょう。交渉はこれからですので、見守るしかない。

あとは、リントン時代の福祉プログラムの就労要件の復活、REINS法( Regulations from the Executive in Need of Scrutiny ACT)の制定を求めている。このREINS法は非常に興味深い。 1996年の議会審査法(CRA)を改正し、行政主導を抑制することを目的とした法案。REINS法は、CRAを拡大し、議会が行政の規則に対して不承認決議を出せるようにするだけでなく、特定の主要な省庁の規制を実施する前に、議会の承認を必要とするようにするものである。まあもしこれが可決したら、行政の権限が弱まり、議会がまた強くなるだろうね(引用元: Ballotpedia

ちなみに「債務上限なんてなんであるんだ?」という話をみかけるが、米議会が政府の債務に責任をもち監督をしているからです。1917年までは新規債務が発生するたびに米議会で可決していたのですが、手続き簡素化のためにthe Second Liberty Bond Act が議会で可決した。なので、米国の三権分立(行政・立法・司法)がそれぞれ管理・監督していることを考えれば当然のことで無制限(Unlimited)な権限など与えてはいけないのですよ。

オバマ時代も債務上限引き上げたし、過去100回債務上限について引き上げてきたんだから今回引き上げないわけがないという論調も見受けられるが、今回は共和党内の議席数があまりにも小さく正直どうなるかわからないというのが正直なところ。

米財務省からのすべての預金が保護される発表についてメモ

まあ要は保険対象外の預金も全額保護されますよという発表なのだけれど、” systemic risk exception ”を発動させたということが気になるわけです。

Today we are taking decisive actions to protect the U.S. economy by strengthening public confidence in our banking system. This step will ensure that the U.S. banking system continues to perform its vital roles of protecting deposits and providing access to credit to households and businesses in a manner that promotes strong and sustainable economic growth.

After receiving a recommendation from the boards of the FDIC and the Federal Reserve, and consulting with the President, Secretary Yellen approved actions enabling the FDIC to complete its resolution of Silicon Valley Bank, Santa Clara, California, in a manner that fully protects all depositors. Depositors will have access to all of their money starting Monday, March 13.  No losses associated with the resolution of Silicon Valley Bank will be borne by the taxpayer.

We are also announcing a similar systemic risk exception for Signature Bank, New York, New York, which was closed today by its state chartering authority. All depositors of this institution will be made whole.  As with the resolution of Silicon Valley Bank, no losses will be borne by the taxpayer.

https://home.treasury.gov/news/press-releases/jy1337

「 the Federal Deposit Insurance Corporation Improvement Act of 1991 」 1991年連邦預金保険公社改善法に ”systemic risk ”の判定は、 財務長官は FDIC理事とFRB理事の投票3分の2が必要とある。また、FDIC・FRBからの書面による勧告を受けることも。”After an SRE determination was made, the FDIC would be authorized to act ”ってある

Congress incorporated the systemic risk determination into the Federal Deposit Insurance Corporation Improvement Act of 1991 (FDICIA), but amended the regulatory process that Treasury recommended.b Unless the SRE was invoked, FDICIA prohibited protection for uninsured depositors and other creditors if protecting those depositors and creditors would increase a resolution’s cost to the deposit insurance fund. It also required that the decision to grant an SRE be made by the Secretary of the Treasury in consultation with the President, but only after a written recommendation by a two-thirds majority of both the FDIC Board of Directors and the FRB. After an SRE determination was made, the FDIC would be authorized to act or assist as necessary to avoid the potential adverse effects of a major-bank failure. The SRE was not used until 2008.

https://www.fdic.gov/bank/historical/crisis/chap2.pdf

と思ったら、 ”systemic risk ” の投票済でした。失礼しました。反対者なし。
FDICの投票結果は発表されていないが、まあやったんだろうね。

https://www.federalreserve.gov/aboutthefed/boardvotes.htm

ちなみに、税金は使わない!FDICの預金保険基金(DIF)から支払うので納税者の負担はない!と強調しているが、銀行から徴収された保険料は、預金保険基金(DIF)にプールされてFDICが管理する。それってめぐりめぐって納税者負担ってことですよね?という話もある。