1/30-2/4 米議会:債務上限に関する動向

上院は、23日から本会議を再開したが、月曜に政府高官の承認1件、24~26日は何もなし、27日も1件で終わった。それぞれの党内では会合をもっているようだが、本議会投票はほぼない州で終わった。おそらく今週もほぼないのでは。

下院議会での動き

1)債務上限に関する米議会の動向

マッカーシー下院議長とバイデン大統領は、債務上限について2月1日(水)に会合を設けることで合意したようだ。
というか、バイデン大統領はオバマ政権時代の失敗を繰り返したくないと債務上限交渉にかかわらない姿勢を示していたのにいきなり態度を変えてきた。
2月7日(火)に一般教書演説を控えるバイデン大統領なので、まあいったん話し合って「社会保障やメディケアへの削減には応じないとはっきり言った!」ということを言いたいがための会合ではないかと邪推してしまう。

はっきりいってこの会合で債務上限に関する合意はうまれない。
問題は共和党内の交渉なので、初めの段階では民主党が出る幕はない。ねじれ議会だから債務上限問題が起こるという分析は私は違うと考えている。
フリーダム・コーカスが歳出削減で何を要求するかもわかっていないし、軍事費削減まで手をつける可能性があるが、そうするとRSCが猛反対するのは目に見えている。仮に軍事費は歳出削減対象にならなかったとしても、より民主地王に近いメインストリート・コーカスが大幅な社会保障・メディケア削減に応じるかは未知数だ。まずは共和党内で歳出削減案がまとまるかだろう。民主党との交渉はそのあとだ。まあ最後の最後には民主党は歳出削減案に応じざるおえないと思う。

債務上限がなぜあるかといえば、米連邦議会は連邦政府の債務を管理・監視する義務を負っているから。三権分立のcheck&balanceです。 1917年にSecond Liberty Bond Actが成立するまでは債券発行のたびに米議会が立法化してました。この法案が成立したことで発行のたびに立法化が不要になった。 要は債務上限を設けることで債券発行の承認手続きを簡素化したわけです。 一部民主党は、政府が無制限に借り入れることができるように債務上限を撤廃しようとする動きもありますがそれはまだ主流ではありません。共和党・民主党ともに政府へのcheck&balanceという意識が強い 。

なので、 政府が1兆ドルのプラチナコインを発行し、それを米連邦準備制度理事会(FRB)が買い入れれば、政府がFRBに持っている政府預金に同額が入金され れば防げるという案があるが、それをもし実現したら即座にWV州の司法長官あたりから「権限を超えた越権行為」として訴訟が起こるのではないでしょうか。
あとは憲法修正第14条の発動とか、コンソル債の発行とかいろいろとあるが、どれもリスクがある(引用元:WP

過去100回、債務上限を引き上げてきたからといって今回も大丈夫という考えはちょっと違うと思う。フリーダム・コーカスにどれだけ加速主義的な考え方の議員がいるかまだ把握できていないけど、加速主義者が5~6名でもいるとしたら、デフォルト危機はありえるだろうなあと。

2)交渉タイミング

下院共和党が債務上限を決めるタイミングを変更する動きがある。
というのも、現在の状況だと6~9月までの間に米議会が行動を起こす必要があるのだが 、休会後の2024年度予算での歳出削減と話をセットにしたいようなので、交渉時期をずらそうという動きもある(引用元:RollCall)。しかし、それを上院民主党が応じるかは別の問題だが、交渉時期がずれる可能性は多分にある。


下院で可決した注目法案

債務上限問題を除くと、共和党が主導で下院議会で可決した法案は、民主党が多数党を占める上院議会でほぼ可決できずに終わることになる。ただ、2024年に共和党が上下院奪還した場合を考えると、どんな動きをみせているかはウォッチしておいたほうがいいと思っている。なので、可決することはないが、今後の動きとしてチェックしておいたほうがいい法案

the Strategic Production Response Act (H.R. 21)

戦略石油備蓄(SPR)で放出した量に応じて、エネルギー省が同じ量の増産計画を策定することを義務づける法案。
ちなみに、下院は1月12日、別の法案で中国共産党の所有、支配、影響下にあるいかなる団体に対しても、SPRからの石油製品の売却を禁止する法案も可決している。
いずれも、可決できるかの見込みはまだたっていない。

バイデン政権の バウンダリー・ウォーターズ での 20年間採掘一時停止措置

米国ミネソタ州「バウンダリー・ウォーターズ・カヌー・エリア・ウィルダネス」 に銅とニッケルが埋蔵されているのだが、環境破壊につながるため内務省から20年間の採掘一時停止措置が発令された。 2022年1月に公有地リースを取り消した動きに次ぐ措置(引用元:RollCall
ただしこれは行政指示なので、政権が代わって内務省高官が変われば簡単に覆ることになる。オバマ政権時代に採掘禁止措置を発動したが、トランプ政権時に解除されて公有地リース承認していたのでまた同じことが起こる可能性がある。なので、

ちなみに、ツインメタルズは昨年8月、公有地リース取消に異議を唱える訴訟をおこし、コロンビア特別区の米連邦地裁に起こしているがまだ訴訟中。

全米鉱業協会会長のRich Nolan氏は、バイデン政権が掲げるEVや太陽光・風力発電のインフラ導入を加速させるという目標に逆行し、鉱物需要を増加させるものだと発言。

まあバイデン政権は環境保護団体×労働組合の圧力に応じて対応しているので、クリーンエネルギー促進とはいってもあくまで環境保護団体と労働組合の意見が一致しているところだけを進めているのだろう。