1/9-13の米議会/マッカーシー議員が下院議長に就任/フリーダム・コーカスとの取引はこれから明らかに

118会期の下院議長は、15回目の投票でやっとマッカーシー議員に決まった。
1/9(月)17時から下院議会が再開することしか公表されていない(引用元:https://clerk.house.gov/
まずは4日連続で下院投票選挙が15回も行われたので、最終的にどうなったか振り返っておくことにする。細かい投票結果を追っていてもしょうがないので、どういう構造だったかと、最後まで投票しなかった議員をおさえておきたい。

マッカーシー議員vsフリーダムコーカス

先日の15回にわたる下院議長の投票では、簡単にいうとフリーダム・コーカスの主要メンバーと共和党内のそれ以外のコーカスの対立だった。もちろん、フリーダム・コーカス創立メンバーのジム・ジョーダンのようにマッカーシー議員に賛成票を投じている議員もいるので全員ではない。 しかしながら、フリーダム・コーカス議長のスコット・ぺリー議員が13回も反対し続けたのはおさえておいたほうがいいだろう。
フリーダムコーカス以外のメンバーは昨年の中間選挙後に早々に指示表明をだしていた。共和党内の最大コーカスであるThe Republican Study Committee議長、ジム・バンクス議員は昨年の段階でマッカーシー議員を支持すると表明していた。また、メイン・ストリートコーカスも、Tuesday Groupも同様に昨年12月に声明を発表し、所属議員にはマッカーシー議員を支持するよう促していた(引用元:The Hill

13回投票終了後の交渉をおえて、やっとマッカーシー議員に投票したメンバーをみると、基本的にはフリーダム・コーカスのメンバー。ここにスコット・ペリー議員やチップ・ロイ議員などフリーダム・コーカスの顔となっている議員がいる。一方で、新たに当選した Keith Self(TX州)議員と、RSC所属のVictoria Spartz(IN州)議員がフリーダム・コーカスに所属していない数名もこの段階で賛成にまわった。

なお、最後までマッカーシー議員に反対票を投じていた6名は最終的に白票を投じた。 ”present”は、賛成にも否決にも入らないので投票数にカウントされないという定義だ。なので ”present” に投票されると、過半数のハードルが下がるというわけだ。投票記録は議会議事録に残されることになるので、最後までマッカーシー議員に投票しないことを望んだ6議員というのは覚えておいたほうがよいだろう。Gaetz議員、新人のCrane議員以外はフリーダム・コーカス所属だ。

なお、トランプ前大統領はマッカーシー議員を下院議長として支持するよう早い段階から呼びかけていたわけだがほぼ影響力がなかったとみなしていいだろう。
正直、今回の件はマッカーシー議員が下院議長としてふさわしいかどうかの投票だったのでトランプ前大統領を関連させて考察しないほうが私はいいと思っている


ちなみに、過去の下院議長の投票では10回を超えたのは19世紀で、しかも南北戦争以前のことだ。党派を超えて団結や協調することが進歩・進化を意味するわけではない。左派メディアは混乱を否定しがちなので、”後退”と表現するがそれは一方的な見方だ。南北戦争から150年以上が経過して、今、また150年ぶりに分裂の時代に向かいつつあるという表現のほうが私にはしっくりくる。
まあ共和党は Republican Study Committee への反発としてフリーダム・コーカスが出発しているので、どこまでこの党内の抵抗勢力が拡大できるかというところだろう。


マッカーシー議員が実施したフリーダム・コーカスとの取引

まだ共和党下院議員にさえ公開されていないので詳細が定かではないが、フリーダム・コーカスの要求にマッカーシー議員はかなり譲歩したようだ。
ただし、まだ不確定なので噂レベルだと考えていただきたい。
また、年度予算や税制については下院だけで可決はできない。上院は民主党支配なので、下院だけで決めることはできないし、バイデン大統領の署名というハードルが残っている。

◆10年以内に財政赤字を解消する予算作成
・2022年度の水準に戻すことを要求しているため約$1300億も削減することになる、国防費・非国防費ともに影響をうけることになることが推測されている。
・ 歳出削減などの財政改革なしに債務上限を引き上げない

◆下院規則に関する変更
・下院議長解任の投票提案を1人の議員でも可能にする
・最終法案発表から下院投票まで72時間を要求
・議場に向かうすべての法案の審議条件を決める下院規則委員会のメンバーをjフリーダム・コーカスから3名確保させる

◆クリーンエネルギー税控除の廃止を含む減税
これは一部でさらっと書かれていたのでまだ詳細がまったくわからない

引用元:FOXニュースRoll Call

権力を分散したいフリーダム・コーカス

フリーダム・コーカスが最も要求を強めていることの一つは、議会内の権力の分散だ。過去10数年以上、ペロシ元下院議長、共和党のベイナー元下院議長、ライアン元下院議長は下院議長と下院指導部に権力を集中させてきた経緯がある。指導部に権力を集中させることで、議員1人ひとりの影響力はどんどん弱まってきていたのは事実である。指導部に権力を集中させないようにするためには、下院規則を変更する必要がある。なので、フリーダム・コーカスは下院規則の変更にこだわっているのである。

Under Nancy Pelosi’s speakership and Republican Paul D. Ryan’s before it, leadership has dominated the four pillars of power in the House, said Schuman: election fundraising support, committee appointments, the Rules Committee and which bills are brought up on the floor.

https://rollcall.com/2022/11/17/freedom-caucus-decentralize-power-what-does-that-mean/

ひとまず現段階では、どういった規則変更が議題になるかさえまだわかっていないので、来週以降にまた解説しながら書くことにする。