米議会118会期は1/3からスタート!まずは下院議長選挙に注目

米議会は1/3の正午にスタートとなり、東部標準時間14時頃に下院議会の議長選挙が行われる。下院議会は2年ごとの会期スタート時に下院議長選出の投票を実施している。基本的には多数党の指導部から選出されることになるが、今年は1回で終わらない可能性が高まっている。
そして、下院議長選挙で下院議長が決まらないことには、新たに選出された議員の宣誓式だけでなく下院議会の本議会さえスタートできない。

もし、一回の選挙で終わらなければ1923年以来のことだ。1923年にFrederick Gillett議員を選出するまで9回の投票、3日を費やした。1855-1856年に至っては2か月かかったようだ (引用元:FOXニュース


“Never Kevin”を表明した共和党フリーダム・コーカス議員 

下院議長選挙で下院議長に選出されるには、過半数の票が必要となる。下院議員の全員が出席すれば435議席なので218議員からの賛成票が必要になる。しかし、全員が出席するとは限らないので、過半数の議席数は変わる。ペロシ議長も過去に218議席を獲得しないで当選したことがあるので、あくまで「過半数」なのだ。
もし、118会期の共和党下院議員全員が集まったら222議席となる。民主党は212議席で、1議席が中間選挙当選後に亡くなったので空席となっている。
中間選挙以前から、マッカーシー共和党下院院内総務は共和党内の厳しい圧力にさらされると予測されていた。今回の下院選挙もフリーダムコーカス所属の5名の議員がマッカーシー院内総務に投票しないと宣言している。また、フリーダムコーカスではないが共和党下院議員のMatt Gaetz も反対を表明している(引用元:Roll Call

共和党下院議員を構成する5つのコーカス

ここで今一度、下院共和党内の構成をおさえておこう。Familyというとイタリアやカトリック系を思い出すのだが、1931年にイタリア系アメリカ人マフィアを形成した5つのファミリーが率いた“five families”になぞらえた共和党の5つのコーカスがある。(どうも議会では”Gang of 14”とか”Gang of Six Senators”とか表現するよなぁ…)
最も大きい勢力は1973年に設立された the Republican Study Committee で下院共和党内の過半数をおさえているコーカスだ。一時期は消滅したこともあるが、2005–2007年には当時下院議員だったペンス元副大統領も議長に就任したことがある最大勢力のコーカスだ。
次に大きいのがメインストリート・コーカス。メイン・ストリートコーカスはすでにマッカーシー院内総務を下院議長として支持している(引用元:MAIN STREET CAUCUS
そして次に大きな勢力が the Republican Governance と  the Freedom Caucus 。 メイン・ストリートコーカス、the Republican Governance 、数名しかいないProblem Solvers Cacusの3つは‘Only Kevin’を掲げてマッカーシー下院院内総務を支持している。

共和党のフリーダム・コーカス

2015年に設立された下院フリーダム・コーカス。約40名と書いているには訳があって、所属している議員を招待した議員だけにしていて名簿も非公開性なのだ。そのため30~40名弱という表現をされることが多い。リバタリアニズムの影響が強いフリーダム・コーカスは、連邦政府に懐疑的であり、中央が権力をもちすぎることをよしとしない。連邦政府よりは州政府、それよりも個人の判断や市場原理に委ねることを第一義的に考える傾向がある。そのため、米国下院共和党内でも最も保守的なイデオロギーをもち、時にfar-right とも表現されることがある。

2015年にはもともとは the Republican Study Committee に所属していた9名が創設した。トランプ前大統領の首席補佐官を務めたメドウズ補佐官やFL州デサンティス知事も創設者メンバーだ。

John Fleming(R-La.)
Matt Salmon( R-Ariz.)
Mark Meadows( R-N.C.)
Jim Jordan( R-Ohio)
Ron Desantis( R-Fla.)
Mick Mulvaney( R-S.C.)
Scott Garret( R-N.J.)
Raul Labrador( R-Idaho)
Justin Amash(R-Mich)


で、今回の下院議長選挙で問題になっているのがハウス・フリーダム・コーカス。 フリーダム・コーカスといえば、2015-2019年にライアン元下院議長が下院議長をつとめた時代から衝突が絶えなかった。2015年に共和党ベイナー下院議長を辞任においこむための仕掛けや、その後任選出の際には当時のマッカーシー議員に下院議長立候補をあきらめさせるように動いたこともある(引用元:VOX

フリーダム・コーカスの敵は民主党ではない。共和党内部をより保守的にすることにあり、トランプ元大統領とも戦ったことがある。トランプ・ケアを廃案に追い込んだのもフリーダム・コーカスだ。トランプ前大統領には「フリーダム・コーカスは2018年の選挙で追い出すべきだ、共和党内で団結できないなら」ともツイートされたことがある(引用元:NPR

 “The House Freedom Caucus gives a voice to countless Americans who feel that Washington does not represent them. We support open, accountable and limited government, the Constitution and the rule of law, and policies that promote the liberty, safety and prosperity of all Americans.”

https://www.facebook.com/freedomcaucus

フリーダム・コーカスは2015年の設立以来、共和党が一致団結しにくくなっている原因でもある。トランプ前大統領時代にもまとまれなかった。おそらく、マッカーシー下院院内総務も極めて難しい舵取りを迫られるだろう。

すでにフリーダム・コーカスは下院議長の権力集中の分散を求め、下院議長の職を投票によって解任できるようにすることも求めている(引用:Roll Call)マッカーシー院内総務がどこまで彼らの要求にこたえるのか注目されているがいまだ答えはでていない。おそらくこのまま下院選挙に突き進むことになり、1回では決まらず彼らの要求をいくつかのむことになるだろう。