2023年も米最高裁が米国を揺るがす

2023年も、米議会・バイデン政権と同じくらい米最高裁の動きには注目したい。

最高裁の会期は10月スタートで翌年6~7月までが1タームとなる。
今年実施したバイデン政権による行政措置に対しての訴訟が追加され、早ければ来年にも判決がでることになる。
最高裁の開廷期は、実際に開廷期間と休廷期間に分かれる。約2週間の開廷期間には、公開で審理を行い、非公開の会議を開催する。 開廷期間が始まる前の週の金曜日に会議を開くのが一般的であり、それが今年は1/6からだ。 また、口頭弁論は、開廷期間の月曜から水曜に日程を組むのが一般的であり、今回のタームもそうだ。

https://www.supremecourt.gov/oral_arguments/2022TermCourtCalendar_rev.pdf

2023年に注目されている裁判

1と2はバイデン政権の行政措置をうけて起こった訴訟だ。
3~6については連邦控訴裁判所から上告されたものだが、4~6は可能性であって今期の審理に含まれるかはまだ定かではない。

  1. BIDEN V. NEBRASKA (バイデン政権の学生ローン債務免除)
  2. タイトル42の失効
  3. アファーマティブ・アクション
  4. 選挙法と投票権についての裁判(Moore v. Harper、Merrill v. Milligan)

1. 2023年2月の審理はバイデン政権による学生ローン債務免除が含まれる

すでに最高裁の審理スケジュールが2023年1月~3/1までは公開された。その中で 「 BIDEN V. NEBRASKA 」というバイデン政権による学生ローン債務免除に対する訴訟の一つが2/28に審理されるスケジュールが公開された。この裁判は、バイデン政権が実施した学生ローン債務免除(1人$1万)に対して、共和党州司法長官がこの行政権限は教育長官の権限を超えており、三権分立と連邦行政手続法に違反すると主張して裁判をおこしていたものだ (引用元:Supreme court

ちなみに、2月21・22日には「Gonzalez v. Google LLC」「Twitter, Inc. v. Taamneh」の裁判の審理も行われて、プラットフォームがテロほう助の責任を負うことができるかどうかも行われる予定だ。どちらも損害賠償を求める訴訟で、ISISのコンテンツを投稿させて拡散させたことに対して責任を負わせるものだ。


2. タイトル42停止の一時停止

米国の南の国境には毎月20万人を超える難民・移民が押し寄せている。大半が即時送還されているが、バイデン政権になってからは移民・難民が増加し続けている。

https://www.cbp.gov/newsroom/stats/southwest-land-border-encounters

バイデン政権は「タイトル42」を撤廃すると公約して当選していたわけだが、民主党内でも意見がわかれていたので動かせなかったわけだが中間選挙を終えてやっと行政措置をだした。しかしながら、12/21(水)にタイトル42が終了すると行政措置命令をだしていたが、共和党率いる州司法長官が上告したため最高裁がタイトル42終了の一時停止を判断しおた。タイトル42は、トランプ政権時代からメキシコとの国境で拘束した移民希望者を亡命申請を経ずに出身国に即時送還可能にしてきたものだ(引用元:AP通信

3. アファーマティブ・アクションの訴訟

アファーマティブ・アクションに関する訴訟は2つだ
・Students for Fair Admissions, Inc. v. University of North Carolina
・Students for Fair Admissions Inc. v. President & Fellows of Harvard College

ハーバード大学とノースカロライナ大学に対する訴訟は、高等教育機関が学生を集める際に人種を考慮することを認めている長年の判例を覆し、大学入試の決定におけるアファーマティブ・アクションを廃止するよう求めるものです。 Students for Fair Admissions (“SFFA”)は、Blumによって設立された原告で、ハーバード大学の人種を考慮した入学政策は、1964年の公民権法に違反し、アジア系アメリカ人志願者を違法に差別していると主張しています。SFFAは、ハーバード大学や他の大学が志願者の人種を考慮すること、あるいは知ることさえも禁止することを求めている。

4 . 選挙法と投票権に関しての裁判

最高裁は12/7にMoore v. Harperの口頭弁論を行った。
この訴訟は、NC州の州最高裁に却下された同州の共和党議員らによって上訴された党派的なゲリマンダ(選挙区割り)に対する訴訟。NC州州最高裁に拒否されたことに対する反論として、独立州立法理論(independent state legislature doctrine)に違反していると共和党議員は主張している。

州の三権分立(チェック&バランス)を考えれば、州の司法が判断したことについて連邦の最高裁が介入することが重要な意味をもつ。
仮に訴訟をおこした共和党議員の主張が通れば、州の議会議員に並外れた権力を与える事を意味する。その結果、州最高裁判所は、連邦選挙において、州法が州自体の憲法に準拠しているかどうかを判断する州裁判所の権利を妨げることになる。 連邦選挙の権限は、州議会の議員になるため、彼らが規定する選挙法は、州の最高裁、州の長官、州の選挙当局がチェックできなくなることを意味する。

そもそもなんでこの裁判を却下しないで最高裁が審理に持ち込んだかになるが、少なくとも4人の判事の審理すべきと考えたということを意味する。最高裁は、最低で4人が審理するに値すると考えなくては取り上げない。

ちなみに、2019年に党派ゲリマンダーを評価するための連邦政府による基準は存在しないと米最高裁の判事が発言している。基本的にゲリマンダを評価できる正当な基準が連邦憲法にはないということだ(引用元: The Brookings Institution

また、 Merrill v. Milligan は、黒人有権者を州の投票区の一つにまとめて、黒人の投票力を低下させたとして、投票権法第2条に違反するかどうかを審理する予定。連邦裁判所は、この選挙区割りが違法であると判決を下したが、ミシガン州は選挙区割りをつくる際に中立的な基準を用いた主張をしている。


2022年中間選挙が終わったばかりだが、次は2024年総選挙が控えている。そして、下院は共和党勝利で終わったが、まだ各州のゲリマンダ訴訟も係争中の州が10を超える(引用元:redistricting
今期で判決が下される予定であろうMoore v. Harper、Merrill v. Milliganの結果によっては州議会をおさえているほうが圧倒的に有利になることは間違いない。

また、バイデン政権が公約として進めていた学生ローン債務免除、タイトル42の撤廃も最高裁によって断念せざるおえなくなった場合は立法せざるおえなくなるのでこれも選挙に影響がでてくるだろう。

今までもそうだったが、来年は特に米最高裁の判決に注目していこうと思う。