今週の米議会イベントは、なんといってもつなぎ予算期限12/16が迫っていることだろう。下院議会は12/15までの予定となっているが、それまでに上下院で調整がつくのだろうか。下院はリモート投票が可能なので、ワシントンから離れていてもさほど問題ではない。
1. 2023年度予算の進捗
少なくとも先週木曜日の時点では、短期間のつなぎ予算というのは作成していないようだ(引用元:RollCall)
退役軍人医療費予算を22%増額することは合意したようだが、国防費増額で共和党と民主党の意見も一致していない。民主党が支配する下院で独自の年度予算が可決したとしても、上院では可決が難しいとのことだ。
財政調整法案ではないので上院でフィリバスター突破のために60票必要になるので難しい。
“It’s already failed before it starts,” said Alabama Sen. Richard C. Shelby, the Senate’s top GOP appropriator. “It’s going nowhere. It might come out of the House, but it will go nowhere in the Senate.”
https://rollcall.com/2022/12/08/parties-play-chicken-on-omnibus-as-shutdown-deadline-approaches/
このままいくと、1年間のつなぎ予算提出になる。さすがに強気に交渉を進めるために政府閉鎖をすることはどちらの党も望まないだろう。
上院歳出委員会で長年、両党の委員長を務めてきたリーヒ委員長とシェルビー議員は年末で上院議員を引退してしまう。名コンビが引退してしまうので、共和党・民主党での交渉が難しくなることが予測されるうえ、来年になると下院は共和党支配になるのでそれこそ予算交渉は難航するだろう。
来年は、債務上限問題がある上に、2024年度の年間予算の交渉まで発生するとなると、どうも嫌な予感がしてならない。どちらも最悪な事態にならなければよいが。
2. シネマ上院議員の民主党離脱
シネマ上院議員の民主党離脱で米議会としては大きなニュースだった。
ジョージア州上院選で民主党勝利の直後だったので、色々と憶測をよぶタイミングではあったが正直、ジョージア州選挙とは関係がないだろう。
シネマ上院議員の民主党離脱じたいに驚いている人は少ない。
マンチン上院議員よりも早い離脱判断だったことは驚いている人はいるかもしれないが、シネマ上院議員は民主党内でもそもそも独立的なポジションをとっていた。彼女のアリゾナ州内の活動をみていてもプログレッシブコーカスの思想からはほど遠い。
ただ、自身がバイセクシュアルであることを公表していたり、いわゆる伝統的なクリスチャンではないのでリベラルな面が強い。なので、民主党のアジェンダと一致することも多い。
シネマ上院議員は、民主党とも共和党とも組む気がないようなので、自分の政策アジェンダにあわせて交渉して投票するだろう。なので、彼女がどちらに投票するかは過去の投票履歴や発言を参考にして予測するしかないだろう。まあ、これは以前からそうだったが。上院民主党はやりにくくなった。49議席は団結して投票できそうだが、マンチン議員とシネマ上院議員の投票がこれからも上院議会を左右するといったとこになるだろう。
一方で、雇用については異なる。シネマ議員は、共和党の大きなロビー団体である米商工会議所から民主党で唯一、 第1回エイブラハム・リンカーン・リーダーシップ・フォー・アメリカ賞およびジェファーソン・ハミルトン賞(超党派主義賞)の両方を2020年で贈呈している(引用元:U.S. CHAMBER OF COMMERCE GIVES SINEMA TOP AWARDS FOR EXEMPLARY LEADERSHIP AND BIPARTISANSHIP)
シネマ上院議員がウォール街や企業から多額の献金を受け取っている(引用元:Fortune)ということで特にプログレッシブコーカスから批判されているが、そもそも上記のように米商工会議所とは深いつながりがある。また、 大手製薬会社からも多額の献金をうけており、プログレッシブコーカスが好きな薬価引き下げを支持しなかったことは有名な話だ。そして共和党のドナーからも献金を受け取っていることも有名だ。(引用元:Insider)
シネマ上院議員は、いきなり連邦の上院議員になったのではなく、AZ州州議会下院議員→AZ州議会上院議員→連邦下院議員(AZ州選出)→AZ州上院議員ときれいにステップを踏んでいるのでいきなり支持基盤が崩れるということは考えにくい。
シネマ上院議員は、2024年再選を目指すかは宣言していないが、おそらく私は2024年再選に向けた一つとして判断したと考えている。もう民主党はシネマ上院議員の対抗馬を用意していたし、彼女を落選させようと躍起になってくるので確かに無所属に登録しておけば民主党内予備選は免れることができる。また、アリゾナ州は有権者の無所属が非常に多いし、なんなら民主党登録の有権者は少ない。なので、無所属にしてもたいして問題ないし、むしろ、余計な民主党内の内部対立をうまくすり抜けようとしているのだろう。むしろ、2024年再選挙が本格化する前に手をうった彼女の判断力は素晴らしい。
シネマ上院議員が民主党離脱の判断をしたということは、もしかしたら民主党内の中道派の無党派所属を促進する動きになるかもしれない。
もっとも、来年からは民主党内で下院の中道派(おもにブルードック連合)は人数が減少するので自然に消滅する可能性もある。上院は中道派が消えてしまうかもしれないなあ…
民主党は大きな変化に直面している。