11/28-12/3 米議会再開/つなぎ予算期限は12/16、年内に2023年度予算は進むか

米議会は、年末の長期休暇前の最後のセッションとなる。
今のところでは、上院議会は12月21日まで、下院議会は12月15日までを予定していて下院議会の方が1週間早く終わる予定だ。

上院議会のカレンダー。日付を囲う枠は、本議会の休会期間(non-legislative period)。打消し線は、本議会、pro forma session (非公開の小規模会議)を含めて、上院議員同士でなんらかの会合をもった日(月曜は予定が入る) 。ソースはこちら
https://www.majorityleader.gov/calendar

今週は、ThanksGivingだったので米議員は家族と過ごす写真が多くみられた。
まあサンダース議員をはじめとしたプログレッシブ議員は感謝祭の話よりも、Amazonの世界ストライキ、全米ストライキを強く支持するツイートをしていた。

中には、バイデン大統領と同じように軍人に感謝祭のディナーをふるまう姿もちらほらみられた。WY州バラッソ議員は、沖縄の嘉手納基地に訪問してWY州兵と感謝祭の夕食をサービングしつつともに夕食をしていたようだ。
本来なら故郷にもどり家族と祝う感謝祭を、国のために(もっというと同盟国のために)休暇をとらず奉仕する人達に感謝を示して、示すだけでなくディナーをふるまう。WY州兵をねぎらうのも、当然WY州上院議員の勤めの一つなのだ。
州兵の役割がこうして同盟国を守るために派遣されてしまったり、戦場と化していたアフガニスタン派遣までされたりしているのは、また別の次元で米国で問題になっているのだがそれについてはまた別の機会にでも書きたい。


年内に可決が見込まれる法案

1. 2023年度予算(あるいは、つなぎ予算)

米議員誰もが懸念しているのが、2023年度の予算だ。つなぎ予算については、9月末に可決していて12/16までが期限だ。12/16を過ぎても何もアクションをおこさないと政府閉鎖になる

政府閉鎖を積極的におこしたいと考えている議員はいない。
そして来年から、ねじれ議会になることを強く懸念しているため年内に可決したいと考えている。しかも、来年は長年、歳出委員会を取り仕切ってきた上院トップ二人がいなくなる。年内で引退してしまうのだ。
しかも上下院民主党の間でも合意がとれずに別々の法案を用意しているとのことだ。いろいろな情報筋から内部事情がもれてきているが、1週間だけつなぎ予算をかけてなんとか年内に可決する可能性もあるようだし、状況がよくわからないというのが正直なところだ。

But Tuesday night, sources said Senate Appropriations Chairman Patrick J. Leahy, D-Vt., and House Appropriations Chair Rosa DeLauro, D-Conn., began writing an omnibus bill without any bipartisan agreement as hopes dimmed for passing the measure before current funding runs out on Dec. 16.

https://rollcall.com/2022/11/23/negotiations-at-standstill-on-omnibus-spending-package/

下院共和党は、来年から自分たちが多数党になるので来年の審議に持ち込むことを推進するだろうが年内なら共和党の協力ゼロでも可決はする。上院はまだ年度予算パッケージを1つも通過しておらず、上院の歳出委員会もそのいずれにも目を通していない。なかなかまずい状況だ。
まあ、つなぎ予算にするので政府閉鎖にはならないだろう。

2. その他、民主党が進めたい法案

米議員が月曜にワシントンから戻ってきたら、さっそく、 the Respect for Marriage Act の修正案からはじまる。

これは上院民主党が法整備を急ぎたい法案の一つだ。なぜならば、最高裁が来年6月までに進んでいる訴訟の中で、LGBTQの権利を覆すことになる可能性があるからだ。来年のねじれ議会では立法化が困難なことをふまえ、今のうちに可決しておきたいと考えている。しかしながら、 既存の同性婚の権利を認めるということは、「結婚は同性であるべき」という信仰の自由を脅かすことにもなる。
そのため、信仰団体に対して「同性婚を認めなくてもよい」という信仰の自由や、非営利団体の非課税の地位を保つようにするなど、信仰の自由が保護される文言も挿入された。
しかし、納得がいかない団体も多くいて、保守シンクタンクの「ヘリテージ財団」や信仰団体はthe Respect for Marriage Actに反対するキャンペーンもうっている(引用元:FOXニュース
これはもしかしたら、立法化しても、共和党の州司法長官が「信仰の自由を脅かす立法だ」ということでまた訴訟おこすかもなぁ…


その他でいくと・・・ 
・マンチン議員が提案していた「Energy Independence and Security Act of 2022 」エネルギー関連の許認可プロセスを早め、承認プロセスの一部である環境レビューの期間を制限する(訴訟を防ぐ)法案は、年内に可決が難しくなっているようだ。 共和党は2024年WV州の議席奪還を目指すため、もうマンチン議員との協力をしない見込み。(引用元:The Hill

・マリファナ改革法案も急いで進めたいようだが、難しそうだな。
(引用元:Politico

来年からの議会

先週も書いた通り、今週は民主党下院指導部を決める内部選挙だ。
まあ、すんなりいくのではないだろうか。クライバーン議員が改めてNo.4の立候補表明をしている。クライバーン議員が主張するように「南部代表が必要だ」というのは一理あり、指導部が東部・西部に偏っているのでその通りだと思う(引用元:The Hill

下院民主党指導部トップ2が退いたことで、誰が立候補したかというと同じく民主党指導部の若手であるHouse Democratic Caucus議長であるジェフリーズ議員と副議長のPete Aguilar議員だ。また、下院副議長を務めるクラーク議員。ホイヤー下院院内総務がジェフリーズ議員の下院議長就任を強く支持していることもあり、初の黒人議員の下院議長となるため彼で決まりではなかろうか。投票は、感謝祭後の11/30,12/1に決定される。
・ジェフリーズ議員(NY州) はProgressive Caucus/Black Caucus所属
・クラーク副議長(MA州) Progressive Caucus/Women’s Caucus所属
・アギーラ議員(CA州) New Democrat Coalition所属
これで現在下院院内幹事のクライバーン議員が加わると、プログレッシブコーカスとブラックコーカスが多い印象だ。

https://ni225-topix.com/?p=9265

共和党のフリーダム・コーカスの動きに注目

フリーダム・コーカスは現在30名存在ほどで活動しているとされ共和党下院議員のなかでざっくり7分の1を占める。先日は、共和党下院内部選挙でもマッカーシー議員に対抗してフリーダム・コーカスのビッグス下院議員が立候補して30票だけしか集められなかったが、来年の下院共和党が222議席で過半数すれすれということを考えると数票しか落とせないで下院共和党で団結する必要がある。

Those dynamics play to the great advantage of the far-right Freedom Caucus, the home of McCarthy’s loudest internal detractors, where members are already angling to secure a number of conservative priorities — including a balanced budget amendment and an end to U.S. funding for Ukraine — that party leaders have been reluctant to endorse.

https://thehill.com/homenews/house/3748749-gop-prepares-for-house-takeover-five-things-to-watch/

フリーダム・コーカスはウクライナ支援にも基本的には反対しており、債務を増やすことには反対で財政均衡を目指す。
コーカス発足は2015年で、2010年のティーパーティーの流れを受け継いでいる。
トランプ前大統領を支持する議員も多く所属しているが、フリーダム・コーカス全員がトランプ前大統領支持というわけではない。フリーダム・コーカス内でもうまく統一していないのは見受けられる。このあたりが次の議会で注目したほうがよさそうだ。

The Freedom Caucus launched in 2015 with a vow to promote “open, accountable and limited government, the Constitution and the rule of law, and policies that promote the liberty, safety and prosperity of all Americans.”

https://www.politico.com/news/2022/04/29/house-republican-freedom-caucus-challenges-00023071

FREEDOM CAUCUS FOUNDING MEMBERSに2024年大統領候補者であるRon DeSantisも入っていることは覚えておいた方がよいだろう。