11/21-26米議会は感謝祭のため休会/来年1月の指導部を決める内部選挙/中間選挙の進捗

今週の米議会は感謝祭のため、本議会は休会。下院議会は28日(月)まで休会だが、上院議会は28日(月)15時から本会議開催予定。 本議会再開後は、the Respect for Marriage Act を進める予定。

先週は、来期(118会期)の指導部を決めるための動きが多かったので少し整理する。

民主党下院指導部の内部選挙

ペロシ下院議長は、自身が宣言した通りに下院議長を宣言した(引用元:roll call)。バイデン大統領、シューマー上院院内総務は留任をお願いしていたのか期待していたようだが、残念ながら身をひくことを決意したようだ。ペロシ下院議長の政治手腕は政敵であるかつての共和党政権メンバーが認める実力だ。しいていうならば、彼女の後継者をこの20年間のうちに残せなかったことが下院民主党が解決できなかった課題の一つだろう。
また、ペロシ下院議長と共に20年ほど民主党下院指導部を率いてきたホイヤー下院院内総務も指導部を引退することを決意した。かろうじて三番手のクライバーン下院議員が次の指導部の4番目のポジションに残るようだ(引用元:TheHill

今までの20年続いてきた下院民主党指導部が入れ替わるということは、大きな変化となる。特にホイヤー下院院内総務は穏健派だったため、彼が去ること、今回の選挙で中道穏健派メンバーが引退を含め縮小したことを考えると、下院はますますプログレッシブコーカスの勢力が増すことになる。というか共和党とは水と油の関係なので超党派で取り組むというのがさらに難しくなるだろう。

尚、下院民主党指導部トップ2が退いたことで、誰が立候補したかというと同じく民主党指導部の若手であるHouse Democratic Caucus議長であるジェフリーズ議員と副議長のPete Aguilar議員だ。また、下院副議長を務めるクラーク議員。ホイヤー下院院内総務がジェフリーズ議員の下院議長就任を強く支持していることもあり、初の黒人議員の下院議長となるため彼で決まりではなかろうか。
投票は、感謝祭後の11/30,12/1に決定される。

https://www.house.gov/leadership

・ジェフリーズ議員(NY州) はProgressive Caucus/Black Caucus所属
・クラーク副議長(MA州) Progressive Caucus/Women’s Caucus所属
・アギーラ議員(CA州) New Democrat Coalition所属
これで現在下院院内幹事のクライバーン議員が加わると、プログレッシブコーカスとブラックコーカスが多い印象だ。
まあ、すごく簡単にいうと、下院民主党はさらにracial justice(人種差別是正)、environmental justice(環境差別是正)にシフトしていくことになるだろう。

なお、プログレッシブコーカスがずっと求めてきていた議員の株式取引禁止についてはホイヤー下院院内総務が止めていたのは有名な話である。ホイヤー下院院内総務が指導部から外れたことで、民主党が多数党になった時には本会議にかけられる可能性も高まるだろう。


下院共和党指導部内の選挙

下院議長の決定方法は来年1月3日に下院議員全員で投票し、過半数を超えた議員が就任する。そのため、多数党になった党首がなることになる。ただし、多数党の議席数が僅差の場合は、ほぼ全員に投票してもらう必要がある。そのため、僅差の議席数になればマッカーシー少数党院内総務にとっては厳しくなるというのは以前から指摘されていた。
中間選挙をおえて僅差の議席数になっている状況だが共和党下院の非公開会議で、188対31でマッカーシー少数党院内総務が議長に指名された。ただし、来年の本会議で31名が投票するかどうかが焦点となる(引用元:The Hill
マッカーシー議員は、下院共和党内部の非公開投票でなんとか下院議長指名を勝ち取った。しかし、 House Freedom Caucusのアンディービグ氏が31票を獲得している。 House Freedom Caucusの大半に投票してもらわないと、少数党である民主党の下院議長が誕生してしまうことになるため、なんとしても阻止する必要がある。マッカーシー院内総務が House Freedom Caucus の要求をどれだけのむかになるだろう。このあたりは、これからの話し合いになる。

上院共和党指導部内の投票

上院共和党のリーダーを決める投票では、スコット議員の挑戦があったがマコネル上院院内総務が37票を獲得。スコット議員は10票を獲得。スコット議員は、主にGA州上院選後の投票を望んでいた一部の声を押し切って投票を進めた(引用元:The Hill)共和党上院もまとまれないまま2024年中間選挙に突入しそうだ。最近、メディアがこぞって”Republican Divedend”と報道しているが、まあ分裂しているのはその通り。マコネル上院院内総務をトップとするジョン・スーン院内幹事、ジョン・バラッソ議員など指導部留任となった。

GA州上院決選投票をめぐっても、スコット議員率いる上院選挙部門NRSCが展開している広告と足並み揃えず、マコネル上院院内総務が展開するPACの広告を入れてくるなど。中間選挙前からあった対立がさらに表面化してきている(引用元:The Hill

ちなみに、トランプ前大統領はマコネル上院院内総務とメディアを通じて非難合戦をやっているので、当然ながらスコット議員を応援していたようだ(引用元:FOXニュース

ちなみにマコネル上院院内総務は”I Never Predicted A Red Wave”と言い切っていたのが物議をかもした。まあ確かにマコネル上院院内総務はRed Waveがあるとは発言していなかったわけで、上院立候補者に’candidate quality’ の問題があると言い切っていて、またこれがスコット共和党選挙対策議長を怒らしていた(引用元:FOX) 


中間選挙の進捗(連邦下院議会、知事、州議会)

まだベージュの色、CA州の2つの区、AK州、CO州3区が最終的な結果がでていないが、共和党は221~222議席獲得見込みで動いている。

知事選は、民主党は予測通りMA州とMD州を奪還した。共和党はRCPの予測では4州ほど奪還するという話もあったが、結局は一つも奪えることなく終わりそうだ。


さて、注目していた州議会の結果がようやくでてきた。
結果としては、民主党が躍進してMI州が上下院で奪還、MN州上院を奪還して上下院を支配、PA州下院を奪還した。スイングステートのPA州で下院を奪還したのは注目に値するが、どちらかというと青い州が州議会を奪還したというだけで、赤い州の州議会を奪還するには至っていない。MI州については 独立委員会が作成した新しい議会地図が民主党に有利に働いた。約40年ぶりに、州知事、州議会上下院がオールブルーになった。このことで、州内の立法はかなりやりやすくなるだろう。まあ結局はゲリマンダの勝利だ。(引用元:Politico
ミネソタ州は、2014年以来、 州知事、州議会上下院がオールブルーになった。ミネソタ州は州最高裁判所が任命した独立委員会による新しい地図がプラスに働いたのではないかと思われる。
まだAK州とNH州で結果が出ていない。

民主党は州議会の奪還について1934年以来の中間選挙で歴史的な偉業を成し遂げたとしている。その通りではあるが、独立委員会によるゲリマンダが有利に働いたというのが大きく、中絶容認やZ世代の躍進というのは二の次ではなかろうかというのが今のところの感想。

それにしても、各州の州議会、州知事がオールブルーなりオールレッドが加速すると、隣の州であっても全然違うルール設定が加速するのだなあと思う。二極化がますます進むことになるのだろう。どこかの州が独立宣言とかしてしまうこともあるのかもしれないなぁ…