9/19-23の米議会/つなぎ予算をめぐって民主党内分裂は未だ解消せず

2022年度予算は、9月末で終了する。そのため、新しい予算を可決するまで「つなぎ予算」を通さなければならないのだが…、つなぎ予算可決が今週は結局できずじまいだった。あと10日間しかないのだが、無事に成立するのか雲行きが怪しくなってきた。

上院議会のカレンダー。日付を囲う枠は、本議会の休会期間(non-legislative period)。打消し線は、本議会、pro forma session (非公開の小規模会議)を含めて、上院議員同士でなんらかの会合をもった日(月曜は予定が入る) 。ソースはこちら

つなぎ予算をめぐって民主党内が分裂したままで解消されていない

先週に引き続き、民主党内の80名が 「環境汚染を引き起こす可能性のあるプロジェクトの環境審査の期限を決める 条項」「 Mountain Valley Pipeline(WV州からVA州への天然ガスパイプライン)の建設と運用許可を各機関に義務付ける 」を マンチン議員&民主党幹部に対して反対表明しているが、未だ解消されていない。この反対についてはRaúl Grijalva民主党下院議員が主導になっているが、この条項反対のためにつなぎ予算を否決する議員は多くないと認めている。
Raúl Grijalva民主党下院議員も、政府閉鎖は避けるべきとしている(引用元:The Hill

まあ2024年が再選の選挙なので、選挙をきにしなくていいマンチン議員と数カ月先に選挙を控えた全下院議員と立場が全然違うので、反対を表明しつつも結局は容認してしまうのではないかなあと考えている。
何より、この条項については少なくともシューマー院内総務はマンチン議員と 「THE INFLATION REDUCTION」 の時に約束しているからだ。
一方で、下院院内総務のホイヤー議員は「私は合意していない」と表明して、パロシ下院議長まで「投票にかけることは約束したが、どのように投票にかけるかは約束していない」と言い始めていてなかなか面白い展開になってきた(引用元:The Hill

なお、マンチン議員も 環境汚染を引き起こす可能性のあるプロジェクトの環境審査の期限を決める 条項」「 Mountain Valley Pipeline(WV州からVA州への天然ガスパイプライン)の建設と運用許可を各機関に義務付ける 」 法案を正式に発表していない。これがまた民主党内部をいら立たせているし、共和党もピリピリしている。共和党は基本的には同意する方向性ではあるが、重要なのは法案に何がどこまでルールとして盛り込まれているかだ。大事なのは法案に書かれてあるルールなので、それが正式に出されないとなんとも評価いえないのだろう。


メガドナーをコントロールできない民主党

民主党はこの10年間、州議会を制覇できないでいる。全米50州のうち、30州も州議会をおさえているのだ。州の立法部を完全におさえてしまっている。

選挙戦略が異なることは認識していたが、まさか献金額がここまで差が開いているとは私は知らなかった。このPoliticoの記事は必読。民主党寄りのメディアではあるで、主張が激しくてうんざりする時もあるが、たまにこうした民主党の弱みも記事にしてくれるので重宝している。
で、Politicoの報道によると無党派のCenter for Political Accountabilityの調べでは、2010~2020年の間で、州知事、州司法長官、州議会の候補者への献金総額は共和党は$10.5億を超えたが、民主党へは$6.3億だったということが判明している。一方で、パープルステートでの上院選や注目する選挙については過去最高の資金調達額が更新されていたりする。
しかも、民主党ストラテジストが民主党へのメガドナーをコントロールしきれていないことが書かれてしまっている。これは10年前からそうで、今でも変わっていないということだ。

確かに小口献金プラットフォームAct Blueにより、民主党の資金調達額は大きく膨らんできた。ただ、資金調達額が膨らんでいるものの、適切な振り分けになっていないとしたら大きな問題になってくるだろう。どうやらAct Blueも人気投票のような気軽さがあるところから、注目されている選挙にばかり資金が集まるようになっているという話もある。本来なら、自分の代表をしてくれる人物に献金するほうが重要だろうが、どうもそうなっていはいない。

よく共和党はメガドナーからの資金調達に頼っているという批判はある。しかし、どういった調達をするかよりも、集めた献金を選挙戦略にそったキャンペーンに分配することが重要だし、選挙資金に限りがあるので、勝てる選挙と勝てない選挙に見極めて振り分ける必要がある。
民主党幹部がどう考えているかはわからないが、少なくとも民主党メガドナーが州議会・州司法長官あたりの州の重要な役職を民主党にしたいと思っていないということは重要な意味をもつ。たぶん意図的にやっているのだろう。その意図については、もっと別のところで深堀したい。