9/12-17の米議会、つなぎ予算で一波乱あるかも/2022年中間選挙、無党派の関心はインフレ

まずは今週の上院本議会のカレンダー。
2022年度予算は、9月末で終了する。そのため、新しい予算を可決するまで「つなぎ予算」を通さなければならない。早ければ今週にも可決される見込みではあるが、いくつかの条項や予算追加をめぐって民主党内でまた対立が再燃している。
政府閉鎖は現段階ではないとは思っているが、先週よりもやや懸念される状況が増えてきている。

上院議会のカレンダー。日付を囲う枠は、本議会の休会期間(non-legislative period)。打消し線は、本議会、pro forma session (非公開の小規模会議)を含めて、上院議員同士でなんらかの会合をもった日(月曜は予定が入る)。ソースはこちら

マンチン議員が要求した条項をめぐって民主党内が分裂

先週も書いたが、 「THE INFLATION REDUCTION」の時にシューマー院内総務とマンチン議員は約束したことがある。それが以下の内容だ。しかも、その約束を10月までに可決させるとシューマー上院院内総務、マンチン議員、ペロシ下院議長、バイデン大統領と民主党指導部間で約束したことまで明らかになってきた(引用元:The Hill
なので、採決にかける必要があるわけだが、下院民主党72名あまりが 民主党下院指導部ペロシ下院議長、ホイヤー下院院内総務に反対を表明してきた(引用元:Roll Call) 。

マンチン議員がシューマー院内総務が「THE INFLATION REDUCTION」と交渉妥結した時に約束した条項をつなぎ予算に盛り込む件だ。その条項は何かというと、環境汚染を引き起こす可能性のあるプロジェクトの環境審査の期限を決めるというものだ。主要プロジェクトは2年、影響の少ないプロジェクトは1年という期限になる予定だ。また、大統領が優先順位の高い25のエネルギープロジェクトのリストを保持することを義務づけられる。マンチン議員にとって重要なこととしては、Mountain Valley Pipeline(WV州からVA州への天然ガスパイプライン)の建設と運用許可を各機関に義務付けることも盛り込まれている(引用:The Hill

https://ni225-topix.com/?p=9041

マンチン上院議員は、基本的には、民主党内の圧力には屈しない。それは今までみてきたとおりだ。むしろ、今までと同様に下院民主党が妥協することになる気はするが、 どうやって妥協させるかはとても興味深い。特に、下院民主党は、共和党に議席を奪われる可能性が極めて高いので、さらに下院民主党の支持団体である環境団体から反感をかうようなことは指導部はしたくないだろうし、ましてや民主党内部の対立で政府閉鎖なんて選挙前に起こしたくはないだろう。
妥協案としては、「10月」としていた約束を「11月」にすることなのかなとは思うが、果たしてどうなるか。


なお、以前にも書いた通り、つなぎ予算にバイデン大統領が要求している追加予算もあるが、それは共和党から反対が多数でるだろうが、マコネル上院院内総務を巻き込まれば60票はかたいだろう。これはまだ情報がキャッチできていない。

予算内訳としては、以下の通りで COVID19対策が約半分を占める。
COVID19対策 :$224億
サル痘対策:$45億
ウクライナ支援:$117億
ハリケーン・干ばつ対策:$65億
エネルギーコスト上昇対策(戦略石油備蓄の補充を含む):$20億
低所得者向け冷暖房支援:$5億

https://ni225-topix.com/?p=9041

2022年中間選挙、無党派の関心はやはりインフレ

民主党メディアは、民主党が巻き返してきているのは「中絶規制への反発」「インフレが和らいできた」が追い風の主な要因として報じているが、後者は一部要因としてあるが、どうも前者についてはかなり疑問がある。

まず、無党派がどっちに傾くかで選挙は決まる。なので無党派が今回の選挙において何を重視しているかを知る必要がある。特にスウィング州は、無党派が重要になる。また、「中絶規制への反発」とあるが、そもそも最高裁の判決は「州で決めなさい」となっているので、すでに中絶アクセスがじゅうぶんにある州の人たちが関心あるとは思い難い。また、すべての年齢の女性が反発しているのか、男性まで本当に関心があるのかという疑問もでてくる。

で、やっと党派別でみせてくれる調査がでてきた。NPR/PBS NewsHour/Maristの国勢調査だ。詳しい集計表はこちら。8月末~9月実施の調査なので、ガソリン価格が下落した、学生ローン債務免除発表後のタイミングでの調査というのがポイントだ。

◆投票する上での最も重要なこと
(無党派のみ)
インフレ 37% ・中絶規制問題 22% ・ヘルスケア 12% ・移民問題 8%
( Republican)
インフレ 40% ・移民問題 22% ・中絶規制問題 10% ・ヘルスケア 2% (Democrat )
中絶規制問題 35% ・1/6議事堂襲撃事件調査 22% ・ヘルスケア 16% ・インフレ 13%

現段階では、無党派の最大関心は、インフレのようだ。正直、共和党と民主党で差がすごい。

なお、同じ問題を性別でみると
(男性)
インフレ 37% ・中絶規制問題 14% ・ヘルスケア 11% ・1/6議事堂襲撃事件調査 11%
(女性)
中絶規制問題 30% ・インフレ 23% ・ヘルスケア 15% ・移民問題 10% →女性も中絶規制問題が圧倒的に高いわけではないことがわかる。正直、州別でみたい。 なお、Women – White – College Graduateになると38%になり、最も高いが、NO College Graduateでは18%にまで落ちる。学歴差も大きい。

ちなみに、民主党立候補者、現職議員もバイデン大統領の不人気があるため、選挙演説ではバイデン大統領と距離をおく傾向が報じられていたが、無党派からも「経済を弱くした」と63%も回答されてしまっているようだ。バイデン大統領の支持率もこの調査では無党派からは38%。応援演説で現職大統領が追い風になってくれないというのはなかなか辛いだろう。とはいえ、バイデン大統領も選挙まで演説出張しているが、それぞれの候補者がどう距離をおくのか興味深い。

一つの調査からすべてを語れるわけではないが、今回の調査からは
・無党派の関心はやはりインフレが高いといっていいだろう。ただし、男女別でみると、もしかしたら中絶規制の方が高いかもしれないが、女性の中でも若い女性、大卒以上の女性といえそうだ。女性だったら全員関心があるとは言い難い調査結果だと思われる。だとすると、民主党がいう民主党が巻き返してきているのは「中絶規制への反発」 というのはちょっと偏った見方ではないかと思われる。

最後になるが、「 今、米国はリセッションになっていると思うか 」の質問に対する回答が非常に興味深い。
(全体) Yes 62%/ NO 32%/わからん6%  
※過去調査の2013年の水準、2011年9月は75%だった
(無党派)Yes 69%/NO 28%/わからん 2%
(共和党)Yes 83%/NO 13%/わからん4%
(民主党 )Yes 39%/NO 56%/わからん6%

党派ではなくセグメント別にみると、非大卒・田舎ではやや高くでている。

スウィング州の上院選では、民主党が資金調達をリード

選挙じたいが盛り上がっているというより、選挙広告が随分と盛り上がっている。大統領選挙がある年の方が投票率も高いし、盛り上がりもあるが、前回の中間選挙(2018年)と比較すると2倍以上が広告に投下されている。

政治広告分析を手がけるアドインパクトによると、今回の選挙戦で11月8日の投票日までに投入される政治広告費が100億ドル近くに達し、米国の1回の選挙として過去最高額になる見通し。これは2018年の中間選挙の2倍以上で、20年の大統領選に投じられた従来の最高記録の90億ドルを塗り替えることになる。

https://jp.reuters.com/article/mid-term-ads-idJPKBN2Q80F5

FiveThirtyEightでは、上院では民主党51議席、共和党49議席になる予測で先週と変わらず。下院では民主党208議席(先週より+1)、共和党227議席の予測で、どんどん共和党議席数が下落しているトレンドには変わりない。
私のビューとしても、上院民主党は52~54議席で多数党、下院民主党は引退議員数の多さとゲリマンダがあるためギリギリ下院共和党が勝利するといったところだろう(引用元:The Hill

接戦となっているGA州、AZ州、NC州、OH州、WI州の上院選の資金調達をみてみると、民主党が圧倒的で差が開きすぎている。GA州については世論調査では8-9月で共和党のWalker氏がリードしているが、資金調達では州内でも負けている。要は、スウィング州は民主党の方が資金調達ではリードしている。
州外については民主党が小口献金(Act Blue)をつかって集めているのでそこまで気にしなくてもよいだろうが、州内でも負けているのは致命的だろう。
実は、WI州以外は、このように州内でも州外からでも資金調達で民主党がリードしているのが現実だ。

https://www.opensecrets.org/races/geography?cycle=2022&id=WIS2&spec=N

一方で、少し事情が違うのがWI州だ。WI州ではTrafalgar調査でさえ民主党候補者がリードしていて現職共和党ジョンソン議員と民主党バーンズ候補者は接戦とされているが、どうも資金調達をみると、州内・州外でも3倍ちかく現職ジョンソン議員がリードしている。少し他候補者と異なる傾向にある。