9/5-10 米議会再開で9月はつなぎ予算に向けた動き/中間選挙前に共和党は分裂

長かった休会が終わり、今週から上院議会の本議会がスタートします。下院議会もLabor Day明けの6日から委員会活動開始。

日付を囲う枠は、本議会の休会期間(non-legislative period)。打消し線は、本議会、pro forma session (非公開の小規模会議)を含めて、上院議員同士でなんらかの会合をもった日(月曜は予定が入る)。ソースはこちら

9月末の政府閉鎖を防ぐため、つなぎ予算可決に向けた動き

米国の年度予算の期間は10/1~9/30のため、9月末までに次年度の予算を可決する必要がある。なんだけど、ここ10年くらいは9月末までに可決できることなんてないに等しくて、次年度予算可決するのに、本来の期限から数か月後、半年後になることが多いわけです。特に、選挙がある年は、選挙後に可決させるのが例年の流れ。というわけで、民主党も共和党もそれはわかっているので、つなぎ予算じたいはスムーズに進むと思われる。既に下院議会では12/16までのつなぎ予算を作成中だ。

ただし、つなぎ予算可決にあたって2つほど懸念がある。
バイデン政権がCOVID19対策、サル痘対策、ウクライナ支援で$471億の緊急予算を要求していることが懸念点として残る(引用元:Roll Call)。つなぎ予算にこれを追加するかしないかを巡って、政府予算の交渉が長引く可能性がある。
予算内訳としては、以下の通りで COVID19対策が約半分を占める。
COVID19対策 :$224億
サル痘対策:$45億
ウクライナ支援:$117億
ハリケーン・干ばつ対策:$65億
エネルギーコスト上昇対策(戦略石油備蓄の補充を含む):$20億
低所得者向け冷暖房支援:$5億

COVID19対策は、半年前からバイデン政権は要求していた。が、共和党が反対してきたため可決を阻まれていた。今でも共和党は反対するだろう。一方で、一部の共和党議員は妥協する可能性がある。ハリケーン・干ばつ対策のうち、$29億をKY州でおこった記録的な洪水への対処に割当る予定だとされている。共和党のKY州選出マコネル上院院内総務にとって、これは必要な資金のはずなので一部共和党も何らかの妥協を示すかもしれない。

また、もう一つの懸念点は、マンチン議員がシューマー院内総務が「THE INFLATION REDUCTION」と交渉妥結した時に約束した条項をつなぎ予算に盛り込む件だ。その条項は何かというと、環境汚染を引き起こす可能性のあるプロジェクトの環境審査の期限を決めるというものだ。主要プロジェクトは2年、影響の少ないプロジェクトは1年という期限になる予定だ。また、大統領が優先順位の高い25のエネルギープロジェクトのリストを保持することを義務づけられる。マンチン議員にとって重要なこととしては、Mountain Valley Pipeline(WV州からVA州への天然ガスパイプライン)の建設と運用許可を各機関に義務付けることも盛り込まれている(引用:The Hill
既に下院天然資源委員会委員長の Raúl Grijalva 議員は、この条項をつなぎ予算に含めないように要請している(引用元:The HillPolitico
少なくともシューマー院内総務は、マンチン議員と合意する前提でこの約束をしているから守る必要がある。しかし、下院議会はその約束をしていないので、反対できる立場だ。この約束が明らかになった時から物議を醸している状況なので、どう交渉が進むかは非常に興味深い。
マンチン議員は妥協することはないだろう。 Mountain Valley Pipelineの完成・運用開始は、マンチン議員にとって、WV州にとって悲願の達成になるのだから。

最後になるが、今年を最後に長年、歳出委員会のトップを務めてきた民主党リーヒ議員、共和党シェルビー議員が引退してしまう。この2人だから、なんとか交渉妥結してきた部分も大きいと度々報道されている。民主党が上院で多数党になれば、次期歳出委員会委員長はPatty Murray (WA州選出/民主党上院No.3)が就く予定だ(引用元:Politico)。共和党はどうなるんだろうか。


共和党は分裂していき、自滅の道を歩む

先週のAK州下院特別選挙で、元アラスカ州知事で副大統領候補だったサラ・ペペイリン氏が民主党の Mary Peltola氏に負けて共和党に衝撃が走っている。AK州下院議員は、共和党の故Don Young氏が長年勤めていたが、今年亡くなったため特別選挙が開催された。
ここにも書いたが、特別選挙第一戦では Mary Peltola氏は第四位だったにも関わらず、無党派の候補者が脱落した後もベギッチ氏とペイリン氏で競争してしまい、票が分かれてしまったことが大きな理由だろう。
トム・コットン議員は、アラスカ州のトップ4選挙を批判しているが、ベギッチ氏からサラ・ペイリン氏に票が流れていないのをみると共和党で団結できたかどうかはかなり疑問だ。実際、 7月に行われたAlaska Survey Research 世論調査では、ベギッチ氏を1位に推す有権者のうち、70%が同じ共和党のペイリン氏を好ましくないと見ていたことが明らかになっている(引用元:WSJ
なお、 Mary Peltola氏ははじめてのアラスカ・ネイティブ出身の議員となり、民主党だが銃擁護派で「銃はアラスカの文化です。ハンティングで私は育った」と明言している(引用元:Roll Call

さらに共和党にとっては、良くないニュースが出てきている。

過去10年間で最大のメガ・ドナーであったアデルソン夫人からの献金が大幅縮小しているというのだ(引用元:Bloomberg)。ラスベガス・サンズのアデルソンが亡くなり、アデルソン夫人(世界で6番目に資産をもつ女性)が継続して献金をしてくれるものと見込んでいたが、そうはなっていない。

BBG報道による今年の共和党献金者メガドナー
・Peter Thiel  $3000万
・オラクル創業者 Larry Ellison $2100万
・暗号通貨取引所FTXのRyan Salame $1830万
・Blackstone GroupのSchwarzman $1000万
・Citadel のKen Griffin $1000万
故アデルソンは億に近い献金額だったからこれは痛いだろう。

しかも資金の振り分けについて、マコネル上院院内総務とピーター・ティールの足並みが揃っていないことが報じられている(引用元:WP
まあ共和党重鎮のマコネル上院院内総務と、現在の共和党幹部を壊そうとしている候補者を支援しているピーター・ティールでは意見があうはずがないだろうな…
功利主義の立場にたって、アライアンスを組めるかどうか非常に興味深い。
民主党に負けるくらいなら、お互いが相容れないが団結すべきなのだが、果たしてできるかどうか。

また、もう一つ共和党の分裂が起きているのが選挙戦略上でリック・スコット議員とマコネル上院院内総務の相違だ(引用元:The Hill)
どうも資金が集まらない点、資金の振り分けにしろ、選挙戦略にしろ、分裂していて、共和党にとっては良くない兆候がいくつも出てきている。
その兆候の中でも、決定的によくないのは党内でアライアンスが組めずギクシャクしているということだと思う。
その党内分裂の大きな理由が、まさにトランプ前大統領の存在であることは確かだ。トランプ前大統領がマコネル上院院内総務を批判するなどまたギクシャクしている。まあ、ここがどうにかならないと、厳しいだろう。
一方で、勝利の鍵をにぎる無党派はインフレや経済状況が最大の関心ごとだから、こればっかりはあと数カ月でどうなるかにかかっているだろう。

民主党は上院だけでなく、下院まで勝利するのではないかという見解までではじめた。ここへきて、民主党の大きな支持基盤である労働組合も勢いづいている。AFL-CIO (米労働総同盟・産業別組合会議)が中間選挙に向けて 、pro-unionの候補者たちを支援するため10万人以上のボランティアを組織化する。パープル州で上院選が接戦となるAZ州、GA州、PA州、OH州で実施する予定で、AFL-CIOとしては過去最大規模となる(引用元:The Hill