2022年中間選挙/下院は共和党が勝利できそうだが予断を許さない

先週はこのように書いたが、 選挙アナリストの予測は民主党勝利にかなり傾いてきたようだ。今回は、前回からの補足として気づいたことを書いていく。

共和党メディアのWSJでさえ、「Republicans Still Favored to Win Back House Control but Outlook Tightens」と下院選挙を楽観視できなくなってきた状況を認めているような記事を書いている。

FiveThirtyEightの上院議席予測では、遂に民主党が51議席と逆転してしまった(引用元: FiveThirtyEight )。下院議席数はずるずると議席予測数が落ち続けている。 (引用元: FiveThirtyEight
遂に Cook Political Report では、下院議席獲得数を15~30議席だったのが10~20議席に引き下げた(引用元: Cook Political Report 
MD州ホーガン知事は、下院はなんとか共和党が勝利できそうだが、知事選も上院選も議席を獲得できなそうだと見解を示している(引用元:WSJ

それにしても、共和党寄りのTrafalgarの世論調査でさえWI州上院選で共和党現職議員が負ける予測がでている。共和党にとっては危機的状況だろう。PA州でも、共和党のOZ候補は負け予測がでている。OH州のヴァンス候補は今のところリードしているが、まだ油断がゆるさない状況だ。

じゃあ、これらの共和党上院立候補者をマコネル院内総務が資金面をはじめとして助けるかというと、これまた難しい。共和党からでている新人上院候補者はだいたいトランプ前大統領の強い支持をうけて出馬して予備選で勝利した。その過程で、現在のマコネル上院院内総務をはじめとする旧態依然とした指導部に対して不満や批判をぶつけている。マコネル上院院内総務としては、「候補者の資質の問題で負けそうだ」とまで発言していて、さらに助けるような見込みが薄い(引用:WSJ)。民主党も分裂しているが、共和党もトランプ前大統領派とそうでない派で分裂していることは確かなので、ここへきて党内でアライアンスが組めない状況が露呈してきてしまったように感じる。

NY州特別選挙の結果

NY州予備選では、現職民主党ベテラン議員同士の対決が大きく注目されていたが、次の中間選挙にむけておさえておくべきはNY州19地区の下院特別選挙だ。 Antonio Delgado下院議員が、NY州副知事に就任したため辞任したことで実施された選挙だ。NY州19区は、2012、2014、2016は共和党が勝利していて2018、2020年は民主党が勝利している(引用元:Ballotpedia
今回、民主党のPat Ryan が共和党候補者を65,995(51%)得票数で勝利した。共和党候補者は63,137票数(48.9%)なので数千票差だった。
ただ、ここで民主党は議席を確保できたことで、勢いづいていることが伺える。

一方で、共和党トム・リード議員が辞職したNY州23区の特別選挙では、共和党が勝利した。23区は2012年からずっと共和党が議席を確保しているので、これで共和党候補者が落選したらまずかったが、共和党Joseph Sempolinski氏が約5000票をリードして当選した(引用元:WP)

勝てていない民主党プログレッシブコーカス

現在、プログレッシブコーカスのメンバーは下院で約100いるが、2018年選挙時を含めて3回選挙を実施しているが90~100名前後で大幅に議席数を増加できていない。NY州の民主党予備選で、注目されていた NY州州議員Alessandra Biaggi氏は、AOC議員の強い支持をうけたにも関わらず、現職の Sean Patrick Maloney 議員を破ることができなかった。

また、オハイオ州予備選でもサンダース上院議員の選挙に深くかかわったニーナ・ターナー候補者もAOCの支援をうけたにも関わらず敗訴した。
どうも民主党内でも、プログレッシブコーカスの勢いが弱まってきていることが伺える。その一方で、ブルー・ドッグも引退が多くさらにメンバー数が縮小すると考えられる。

一方で、懸念点としては下院民主党指導部のペロシ下院議長の後任だ。ペロシ下院議長、ホイヤー下院院内総務、クライバーン院内幹事は下院民主党を長く幹部をつとめており全員80代だ。118会期も彼らがこれらの役職を務めるのかまだ議論にも出ていないようだ。ほんと民主党下院の次の代はどうなるのだろうか…

中間選挙で共和党の勢いが弱まっているのは確かだが、こうして民主党内部もよくみてみると議席を増すような気配がうかがえないことがわかる。
2022年中間選挙は、民主党下院内の勢力図も大きく変わりそうな予感がする。

あと、気になるのが、バイデン大統領による学生ローンの債務免除措置だ。
プログレッシブコーカスの悲願の政策でもあり、たとえ一部であってもやっと実現したわけだが、訴訟リスクを抱えているのはあちらこちらで報道されている通り(引用元:Politico
なお、ペロシ下院議長は去年に大統領による学生ローン債務免除措置は難しい、議会で可決する必要があると述べているくらいだ。そもそも、行政ができる権限があるのかかなり微妙ではある。
ただ、訴訟も難しくて、誰が訴訟できる資格を有するのかが不明瞭なのだ。バイデン政権の債務免除措置によって具体的な損害を被ったことを証明する必要があるためだ。共和党だけでなく、中小企業支援団体 Job Creators Networkは訴訟検討中と報道されているので、どこかしら訴訟をおこすだろう(引用元:WSJ