民主党にとって、勝負の2週間になるだろう。
下院議会は今週本議会を開催したら休会に入り、地元に戻って選挙活動となる。
下院議会はリモート投票できるので、上院さえ法案が通過されれば地元に戻っても採決は可能だ。問題は、50vs50の議席配分である上院議会だ。先週からバイデン大統領をはじめ、民主党内でCOVID-19陽性が相次いでいる。民主党上院議員も21、22日に陽性になったと公に発表していて5日間の隔離となった。
下院はリモート投票を認めているが、上院では認められていないため、彼らが議事堂に来れるのが、27日か28日になるだろう。民主党上院議員全員の投票が必要な法案については、この日までは動かないだろう。
中間選挙まであと数カ月しかないため、支持団体への「アピール法案」提出が目立つ。特に下院議会は上院で可決しないとわかっていても、下院議会では可決したと民主党はアピールすることが多い。
たいていは上院議会でフィリバスター(60票)を越えられないのでそこまで注目しなくてよい。まあ、リベラルは何を実現させたいかという意味で法案ウォッチしておくのは有益なんだけど、たいていは可決しない。米議会で法案は、2年ごとの1会期で2万本も提出されていて、大統領署名まで到達するのは数%。なので、法案が提出されたていどではたいしたことないということを覚えておいたほうがよい。
さて、選挙を目前に控えた状況で、財政につながり注目されている法案は以下だ。
① the CHIPS Act(米半導体補助金法案)
シューマー多数党上院院内総務は、半導体助成金法案の審議の動議入り可決をした(引用元:Bloomberg)。マコネル少数党上院院内総務は、宣言通り”Nay(NO)”として投票したが、共和党から16票も入り賛成が64票になり、超党派で賛同が集められている。現段階でのスケジュールとしては、月曜日にクローシャー投票(動議終結)を実施して可決すれば、火曜か水曜には本採決できるだろう(引用元:WP)
今回の法案は、現時点では以下の2点が含まれている。少なくとも、補助金は可決されるという見込みだが、投資税額控除については共和党でも反対している議員がいるので、
・ 米国内半導体製造・5G構築の補助金を5年間で$520~540億
・数年間、半導体・半導体製造装置メーカーへ25%の投資税額控除(推定$240億)
問題は、どこまで修正案(amendment)が可決されるかになるだろう。シューマー上院院内総務も“test vote”と表現している通り、どこまで賛同が集まるかで内容を変えていくと宣言している(引用元:Roll Call)
特に注目されているのは、 the National Science Foundation(全米科学技術財団)に$200億が追加されるかどうかだ。
ところで、この法案を巡ってロビー活動は盛況なようだ。インテルは、 四半期では過去最高のロビー活動費($180万)に費やしたことが判明した(引用元:The Hill)。今年、OH州で半導体工場を新設すると発表しているが、補助金がでなければ白紙撤回すると脅しをかけている。
他にも、スカイウォーターテクノロジー社が、この助成金をつかってIN州で工場建設を発表しており、IBM社もNY州で新工場を建設すべくロビー活動に力をいれているようだ (引用元:WP)
②薬価引き下げ法案(財政調整法案)
シューマー多数党上院院内総務とマンチン上院議員が合意している薬価引き下げについては、財政調整法案をつかうため、 Parliamentarianの承認が必要になる。先週で来るはずだったが、結局何もでてこなかった(引用元:CNN)
民主党は8月第一週にも採決にかけたい意向だが、これを待っている状況だ。
① メディケア(高齢者・障害者向け医療保険)でカバーされる医薬品の価格について連邦政府に交渉を義務付け、インフレを超える薬価の大幅引き上げに対し医薬品企業に罰則を科す 。交渉は2023年から開始される予定で、この交渉で10年間で累計$2400~2800億の歳出削減をもくろんでいる
②Affordable Care Actの下で期限切れとなる健康保険補助金の2年延長
→マンチン議員は、①のメディケア交渉で削減した$2800億のうち$400億を予算割当しようと考えている。延長しないと年末で期限切れとなり約1300万人の保険料が値上がりし、数百万人が保険に入れなくなる恐れがある(引用元:WP)
③ メディケアの薬剤費に年間$2000の自己負担上限を設け、これを過ぎた場合は、保険会社やメーカーが支払うようにする
11月の中間選挙にむけ、8月予備選
8月前半の注目の予備選は、8/2 アリゾナ州、8/9 ウィスコンシン州、8/16 ワイオミング州・アラスカ州だろう。
まずは、アリゾナ州の共和党予備選。
共和党のメガ・ドナーであるピーター・ティールが多額の献金をして応援しているブレイク・マスターズ。トランプ元大統領・FOX司会者タッカー・カールソンもマスターズを支持している。一方で、退役軍人で元アリゾナ州上院議員のラモン氏の方がリードしているようだ。ラモン氏は、CPACやアリゾナ警官協会からも支持されている(引用元:Jim Lamon キャンペーンサイト)
ティールはマスターズに追加で$1500万の献金を実施したと報じられているが、マスターズにとっては苦しい戦いになっているのだろう。(引用元:Politico)
アリゾナ州でも、トランプ大統領の影響力が試されることになりそうだ。その一方で、共和党にとって、アリゾナ州はもっとも勝ちやすい上院選といわれている。共和党にとって総力戦となる州になるだろう。
次いで、ウィスコンシン州上院選。
ここは、民主党にとって現職の共和党ロン・ジョンソン上院議員から議席を奪いやすい州とされている。ロン・ジョンソン上院議員も引退すると宣言しておきながら、結局しないことになって再出馬宣言が遅れたことは少し痛手になっているようだ。民主党上院選で誰が対抗馬になるかが重要になるだろう。民主党で一番リードしている上院議員候補者のトム・ネルソン氏は牧師の息子なようだが、支持層をみると典型的に労働組合とプログレッシブ層なのでわかりやすい(引用元:トム・ネルソン キャンペーンサイト)
最後に、 トランプ元大統領にとって重要な戦いとなるワイオミング州とアラスカ州だ。
まず、ワイオミング州。ワイオミング州はトランプ元大統領を非難し続けているリズ・チェイニーの選挙区だ。チェイニー議員は、選挙活動よりも1/6議事堂襲撃事件特別委員会の副議長として委員会を取り仕切っている。ワイオミング州共和党は、チェイニー下院議員をワイオミング州共和党員として認めない決議をおこなっており、ワイオミング州共和党からの支持は得られていない。 トランプ元大統領を支持する挑戦者ヘイグマンを公式に支持している。チェイニー下院議員は、ディック・チェイニー元副大統領からの支持層があついことは確かだが、当選できるかどうか定かではない(引用元:AP通信)
また、アラスカ州もトランプ元大統領にとって宿敵といえるマカウスキ上院議員の上院選再選がある。マカウスキ上院議員は、トランプ元大統領弾劾に2回も賛成票をいれているため、トランプ元大統領にとっては最も落選させたい議員の1人だ。トランプ元大統領は共和党上院候補であるKelly Tshibaka氏を支持している。
ただ、 マカウスキ上院議員は共和党の中でも中道派で民主党議員からの支持もある。アラスカ州は党別の予備選ではなく、党関係なく予備選をおこない上位4位を本選挙で戦わせる形式をとっている。そのため、中道派の マカウスキ上院議員には有利だといわれているが予断を許さない状況だ(引用元:Politico)
トランプ元大統領の影響力も薄れているとはいわれているが、8月の選挙でさらにみえてくるのではなかろうか。前半戦に注目が集まることになるだろう。