6/13-18の米議会/銃規制法案はまだ暫定合意/6-7月は最高裁判決に注目

今週も米議会は開催予定。
1/6議事堂襲撃事件の下院公聴会をプライムタイムで放送したり、米議会の話はそればかりになっていますが視聴者数は2000万人ていど(引用元:The Hill)。無党派を振り向かせるようなものにはなるかは疑問。

https://www.majorityleader.gov/calendar

銃規制法案の暫定合意

まさか日曜日に「銃規制が上院で合意」というニュースが飛び込んでくるとは思わなかった。金曜日の時点では、交渉が長引くと予測されていたのに、急転直下。
立法化するためには、上下院で銃規制法案を可決、バイデン大統領の署名まで到達することが必要。上院では共和党と民主党が50vs50議席なのでフィリバスター突破できるように10名の共和党議員を納得させられるかどうか、それを今回の交渉担当である共和党コーニン上院議員ができるかどうかに注目が集まっていた。

コーニン上院議員(TX州選出)は2013年-2019年に共和党上院院内幹事を務めたこともあり、重鎮の一人だ。しかしながら、今はRepublican Leadershipには入っていない(引用元:senate.gov
一時期は幹部補佐という役割をしていたが、今ではマコネル上院院内総務主催の幹部会にも出席していない。そのため現院内幹事であるJohn Thune (SD州)がマコネル上院院内総務の後継者候補として最も有力ではあるが、コーニン上院議員も候補者なのだ。もし、この難しい交渉で結果を出せれば、再び共和党上院幹部選挙で当選して幹部入りするかもしれない。この交渉はコーニン議員にとっても非常に重要なのだ(引用元:The Hill
マコネル上院院内総務が彼を交渉担当者として指名したのは、コーニン議員はNRAから「A+」の評価を得ているからというのもある。NRAの代表を果たしている人物なら、NRAから反発を受けないようにうまく交渉できるという意図があるのだろう。

転載: https://www.nrapvf.org/campaigns/2014/vote-cornyn/

さて、そんな前提状況がある中で、コーニン上院議員の暫定合意内容発表文から引用する。今回、暫定合意に達したのは、この9点だ。
内容をみるとバイデン大統領が求めていた「殺傷能力の高い武器の購入可能最低年齢を18歳から21歳に引き上げ 」「アサルト銃禁止」は含まれていない。また、メンタルヘルスプログラムへの投資、学校への安全対策への投資なども暫定合意しているが、予算はまだ決まってはいない。
最も合意に達しそうだった銃の安全管理(安全保管器具への税額控除)などさえも入っていない。購入可能年齢の引き上げは見送られ、21歳未満の審査プロセスの強化にとどまった。 危険な所有者から裁判所が銃を押収することを認めるレッドフラッグ法も結局は州議会判断なので、連邦政府としては推奨・支援するしかできない。

・Support for State Crisis Intervention Orders
 Provides resources to states and tribes to create and administer laws that help ensure deadly weapons are kept out of the hands of individuals whom a court has determined to be a significant danger to themselves or others, consistent with state and federal due process and constitutional protections.

・Investment in Children and Family Mental Health Services
・Protections for Victims of Domestic Violence
・Funding for School-Based Mental Health and Supportive Services
・Funding for School Safety Resources
・Clarification of Definition of Federally Licensed Firearms Dealer
・Telehealth Investments
・Under 21 Enhanced Review Process
・Penalties for Straw Purchasing

https://www.cornyn.senate.gov/content/news/cornyn-bipartisan-senators-announce-agreement

一方で、下院議員の銃規制法案は民主党がやりたいことを全部盛り込まれて既に可決している。半自動小銃の購入年齢の18歳から21歳への引き上げや、大容量弾倉の販売制限、銃器の安全な保管に関する連邦基準設定などの条項が盛り込まれている(引用元:ブルームバーグ
この上院合意案と下院の銃規制法案を比較すると、上院合意についてはかなり民主党が譲歩したといえよう。ものすごく譲歩したといっていいだろう。

なお、NRAは法案全文が公開された時点で、立場を明確にすると発表している。詳細の法案が出された時点で、ちゃぶ台ひっくり返される可能性もある。とはいえ、今回は引退する3名の共和党上院議員が賛同していることもあり、共和党上院議員10名くらいは確保できそうだなという感じもする。

法案全文が公開された時に、コーニン議員がNRAから「A+」の評価をもらい続けるかどうかは非常に興味深い。
というのも、過去に銃規制法案を手掛けた共和党トゥーミー議員、民主党マンチン議員は、NRAからレーティングダウンという仕打ちをくらった。NRAが納得できる法案をだせるかというのは重要だし、コーニン上院議員の政治生命にも関わってくるだろう。
マコネル上院院内総務としては、彼が交渉に成功すれば、幹部入りとうエサがある一方で、失敗すれば、おそらく2026年引退、マコネル上院院内総務の後任はジョン・スーン上院議員で決まりということにもなるのだろう。

また、法案作成についても、来週を目指しているとのことだが、6/25~はまた休会に入るため、6月中に決着がつくかわ疑わしいようだ(引用元:WP)これが7月に長引くと、他の法案可決にむけた動きは絶望的になるだろう。

他の法案はもう進まなそう

さて、先週に引き続き、以下の法案は動きがない…
民主党は、何らかの立法での成果を欲しているので、もう共和党に譲歩して「銃規制法案可決させた」ということで中間選挙戦を戦うつもりかもしれないなぁ。銃規制で票がついてこないから、いつまでたっても可決しないのはわかっているはずなんだけど、それで乗り切ろうということみたいですね。

・Build Back Better $5000億規模
(薬価引き下げ、クリーンエネルギー推進)
・マンチン議員が進めるエネルギー法案
・COVID-19追加支援 $100億規模
・マリファナ合法化(刑事罰の廃止)法案
・ Bipartisan Innovation Act
→ペロシ下院議長は7/4より前に可決する可能性を発言(引用元:The Hill) したが、おそらく無理。
上記以外にも、 労働者の団結権保護を確保する Protecting the Right to Organize (PRO) Act 、選挙改革法案U.S. Electoral Reform Actについては完全に頓挫している。

6-7月は最高裁判決に注目

さて、前回書いた通り、6-7月の最高裁判決は必ず注目しておいた方がいい。いずれの判決も、米国民生活に大きく関わることだし、選挙にも大きく関わる。

7月下旬には最高裁判事たちが休暇に入るとされているため7月下旬までには、 MS州の妊娠15週目以降の人工妊娠中絶禁止についての異議申し立て、NY州のハンドガン規制に対する異議申し立て、信仰上の権利に関する申し立てなどの判決がでるはずだと予測されている。特にMS州人工妊娠中絶禁止に対する判決がでると1970年代の判決「ロー対ウェイド」を覆すことになるため、非常に話題をよんでいる。
さらにはバイデン政権から公衆衛生上の理由で移民を送り返すことができる「タイトル42 」撤廃にむけたの控訴なども予定されている(引用元:Five biggest issues to watch at Supreme Court as high-profile term ends

6/6-11米議会再開/6月の予備選/PA州共和党候補者のメフメト・オズ候補

また、銃規制立法化を上院が超党派で進めている間に、厳格に銃規制してきたNY州法について、「国民の武器所有権を保証した連邦憲法違反」との裁定を下す見通し可能性がある。いや、可能性があるというよりも可能性が高い。ただ、どこまで踏み込んだ発言をするかがキーポイントになるようだ。
もしこのNY州法がNY州現行法は「国民が武器を所有する権利を侵してはならない」と明記した憲法修正第2条に違反するという判決をだしたら、他の州の銃規制についても同様の見解で違憲になる可能性が高い。そうなってくると、現在、米議会で進めている銃規制法案は無意味なものになる可能性が極めて高くなってくるだろう。

妊娠中絶の話にしろ、銃規制の話にしろ、最高裁が重要な判断を下すタイミングが近づいている。1ヵ月以内に発表されるだろう。おそらく、これらの判決がでたら、しばらくはメディアはこの話でもちきりになるだろう。

6/7に行われた予備選挙

6/7 CA州、IA州、MI州、MT州、NJ州、NM州、SD州で予備選挙が行われた。
前回から書いている通り、以下の2点を軸に注目していく。

①トランプ元大統領が支持した候補者がどれだけ勝利するか
トランプ元大統領が支持した新人候補者候補者46名は、今のところ16名が勝利しているが、6名敗退、2名は決選投票となっている。
トランプ時代の内務長官だった Ryan ZinkeはMT州下院選で勝利したが、 Al Olszewski候補とかなりの接戦となっていた。

https://www.washingtonpost.com/elections/interactive/2022/trump-endorsements-republican-primaries/

あれだけトランプ元大統領の影響力を懸念していた民主党メディアはこの状況をみて、だいぶ話題にしなくなった。

②民主党のプログレッシブコーカスから下院議員がどれだけ勝利するか

スタートダッシュは好調だったが、 TX州下院議員選でジェシカ・シスネロスは結局敗退し、LA市長選でカレン・バス下院議員は得票数で1位にはなれなかった。 少しプログレッシブコーカスの勢いがしぼんできているのが気になる。まだ6月毎週火曜日は予備選挙が続き、まだ折り返し地点にでさえ到達していないが、この動向はおさえておきたい(引用:The Hill