下院が休会から戻ってくるので上下院両方で本会議が開催される週となります。
米議会、注目議案の進捗
先週月曜日、Bennet(民主党/CO州)上院議員がCOVID19陽性反応を示したため、上院本会議は欠席となり自宅療養となった。下院はリモート投票を認めていますが、上院は認めていないので対面で投票しないと欠席扱いになります。
先週から、Roe vs wadeの件で話が持ち切りになり、もうその話ばっかりになってしまっている。
また、大々的には報道されていないが、ホワイトハウス内&民主党内ではCOVID19陽性になる人がだらだら続いていて、先日はブリンケン国務長官、さきほどはNY州知事も陽性になったと報道された。みなさん症状は軽いようだけど、CDCのガイドラインに従って5日間ていどの自宅隔離を続けているようなので、公務に支障がでている状況なことは確か。
① Bipartisan Innovation Act
先週は、予想外に下院で既に制定しているAmerica COMPETES Actを一歩進んだ。といっても、America COMPETES Actと上院が可決したUnited States Innovation and Competition Act(USICA)を統合したBipartisan Innovation Act (BIA)の正式協議に向け、下院と協調して手続きをしただけだ(引用元: National law review )
上下院、約100名で構成されている超党派の交渉メンバーが行き詰まりをみせているということだ。7月末までに可決できないとしたら、もう年内の望みはないだろう。バイデン大統領は、Bipartisan Innovation Actを呼び掛けてはいるもののなかなか難しい状況だ。
また、この話は認識していなかったので、最終バージョンで盛り込まれるか注意しておきたい。
下院の競争法案の中に盛り込まれた競争条件平準化法(Leveling the Playing Field Act[2.0])は、これまでのアンチダンピング・相殺関税の調査では対象に含まれなかった工場の海外移転や中国以外の生産における補助金支出をも考慮することを可能にしている
https://iti.or.jp/column/94
あと、 Bipartisan Innovation Act (BIA) に現段階では含まれているthe Secure and Fair Enforcement (SAFE) Banking Actはマリファナ産業にとって重要な法案となる。大麻産業は、いまだに連邦法では合法ではないので、現金商売を余儀なくされている。そのため、強盗などが増加しているのが現状だ(引用元:NPR)。この法案は、クレジットカード、銀行をふくめた金融サービスを大麻産業に提供しても、罰則が科されないようにするものだ。米銀行協会も、民主党・共和党両方にこれを可決するよう要請しているようだ(引用元:marijuanamoment.net)
②ウクライナへの$330億支援/オルガリヒ資産の売却
ペロシ下院議長は、バイデン大統領が要求した$330億のウクライナ追加支援法案をすぐに進めたいと発言しているが、立法化するには時間がかかるとしている(引用元:The Hill)
先週、 さらに、シューマー院内総務は、すでに下院で超党派で支持をえて可決した「米国が制裁対象に指定したロシアのオルガリヒたたいの資産を押収して売却する法案」をウクライナ支援法案に含めるとしていたが結局動きはなかった。(引用:The Hill)
マリファナ合法化(刑事罰の廃止)法案、マンチン議員が進めるエネルギー法案については特に動きがないので先週のを参照ください。
ゲリマンダの進捗とオハイオ州の上院選に注目
なかなか中間選挙について書く気になれないのは、未だに選挙区割りが確定していない状況だからだ。
15州くらいの選挙区割りについて、民主党訴訟弁護士マーク・エリアス氏が主導しており、未だに続いている。
現時点でいくと、以前の選挙区割りよりも、7議席が民主党に有利な州が追加され、1議席が共和党に有利な州が追加された。激戦になりそうな議席は7議席も減っている。
ゲリマンダーというと、共和党がやらかしているイメージが強いが、民主党もやっている。なので、両党やっていると考えて間違いない。特に、今年は、民主党のイリノイ州のゲリマンダがかなり極端な状況になっているようだ。下院17議席のうち、14議席が民主党になるかもしれないとのことだ!(引用元:fivethirtyeight.com)
大統領の支持率が低いから民主党が大敗するという話が主流をしめているが、一番みなくてはいけないのはゲリマンダだと思う。下院選なんか、基本的にゲリマンダでほぼ決まるからだ。共和党は上下院両方で多数派に返り咲こうとするだろうが、バイデンアジェンダをつぶしたければ、どちらかを奪還すれば、ほぼほぼ実現するだろう。
共和党も決して安泰ではなくて、トランプ元大統領反対派と、トランプ元大統領支持派が分裂している。次に書くオハイオ州J.D.ヴァンス候補が勝利したことで、トランプ元大統領支持派が勢いにのりそうだ。これは、反対派にとっては困る結果になるだろう。予備選挙でトランプ元大統領支持派がどれくらい増えていくかは注視していく必要がある。まだ、中間選挙でどちらが勝利するかはみえないと私は考えている。
さて、そんな中、先日のオハイオ州予備選で共和党・民主党の候補者が確定した。
オハイオ州といえば、ラストベルトの一つの州であり、スゥイング州とはいえないが、やや共和党が強い州である。
民主党はティム・ライアン下院議員で確定し、OH州のAFL-CIO(アメリカ労働総同盟・産業別組合会議)議長から強く支持されている。要は、労働組合の代表者であるような人だ。
一方で、共和党の対抗馬はJ.D.ヴァンス。そう、ベストセラー「Hillbilly Elegy」の著者であり、ベンチャーキャピタリストであり、ピーター・ティールから多額の献金をうけている人物だ。トランプ元大統領支持派ということでも話題にのぼっている。最近では、隣の州のペンシルベニア州上院選の応援にもかけつけた。人気急上昇中だ。トランプ元大統領も、J.D.ヴァンス氏の成功を機に、また這い上がろうとしているところもあるようだ(引用元:Politico)
J.D.ヴァンスは、イェール大学ロースクール卒業という輝かしい経歴をもつが、高校卒業後、海兵隊に入り、オハイオ州大学に進み、そのあとにイェール大学に行っている。彼はまさにオハイオ州・ケンタッキー州などをよく知るグレーターアパラチア出身であり、労働階級からのはいあがりなのだ。ある意味、労働組合の実態もよくわかっている。そんな2人が激突するなんて、非常に興味深い。