4/25-30の米議会/休会あけの再開、議案山積みだが進まなそう

2週間の本議会休会を終えて、やっと米議会は再開する。
上院は5/29~休会に入るまで続くが、下院は5月もところどころ休会になる。上院は東部標準時間15時からスタート、下院は月曜日は投票なし。来週はまた本議会は休会となり、地元に戻っての活動となる予定だ。

米議会、注目議案の進捗

さて、2週間も空いたので、今一度、注目の議案について整理しておく。
中間選挙が近づいているので、両党とも妥協できない状況になってきた。また、上院議会50票で可決できる財政調整法案をつかわない限り、上院議会では60票必要となる。60票必要となると、民主党+共和党RINOが賛同する法案以外は可決するのが難しいだろう。共和党RINOメンバーはマコネル少数党上院院内総務に従うのはずなので、マコネル議員の発言に注目するだけでよい。
当方は、このような状況をふまえると、ほとんどの議案は可決しないとみているが、その中でも注目しておきたいものをピックアップしておく。

①バイデン政権が求めている$100億のコロナ対策費

もともとは、$325億のコロナ対策費用を要求していたが、$100億まで減額することで合意できたとの観測だ。大幅な減額となっていて、世界各地へのワクチン配布や、保険未加入者へのCOVID-19への治療やワクチン接種などはカットされる見込みだ。
ただし、問題は 公衆衛生上の理由で不法移民を追放できる 「タイトル42」を維持するという修正案をつけられるかどうかだ。共和党からの要求で、大半の民主党は反対しているため、決着がついていない(引用元:Politico
バイデン政権は、移民擁護団体の意図をくんで5/23に撤廃すると宣言しているが、民主党内では「タイトル42」を維持すべきだという声があがってきている。バイデン政権が強硬して撤廃すれば、AZ州・GA州などのToss-upな上院選で負けるだけだ。一方で、上院議員選に重きをおいて、「タイトル42」を維持すれば、移民擁護団体が失望するだけで2024年の選挙戦に影響するだろう。どちらをとるか興味深い(引用元:Politico

②バイデン政権が求めているウクライナへの軍事費

バイデン政権は、先日、$8億のウクライナへの軍事支援を発表しているが、同時に、先日議会で可決した$136億のウクライナ&NATO予算は使い果たしたとも発言している。この予算、実はNATO予算と人道支援がほとんどを占めている。今回の$8億を追加して、ウクライナ侵攻以降、米国が約束した軍事支援は総額約$34億となった。

バイデン政権からの予算要求の金額は、数日以内に発表される予定ではある。しかし、そう簡単には可決しないだろう。というのも、国内対策で進めなくてはいけない法案が山積みだし、「タイトル42」問題を超党派で話し合わないとこの問題に進まないのではなかろうか。
ペロシ下院議長は「できるだけ早く」と発言しているものの、具体的なスケジュールがひかれているわけではないので、1ヵ月ほど時間がかかるのではないかと私はみている(引用元:Politico

③ America COMPETES Actと The U.S. Innovation and Competition Act の進捗

上下院それぞれで可決している相違点を解消するために、上下両院の会議委員会の設立に向けた第一歩を踏み出した(引用元:nbcnews.com)。
もともとは、 2021年6月に上院は半導体産業に$520億、技術革新への支援なども含む「The U.S. Innovation and Competition Act」に総額 $約2500億を可決していた法案に対して、2022年2月に「America COMPETES Act」として気候変動対策なども含めて可決してしまったので調整が必要になっている。

下院と上院で交渉が本格化するのは今週以降となる。共和党は、$520億の半導体産業への投資には賛成していて、ここはむしろ共和党議員が法案提出している。下院が、気候変動対策や労働問題などプログレッシブコーカスの政策を盛り込んでいるのを削除できるかどうかにかかっているだろう(引用元:washingtonexaminer)。シューマー上院院内総務は、7月までに可決させたい意向を示していたが、間に合うのだろうか…?

また、 「America COMPETES Act」 には外国企業説明責任法(HFCAA)に基づく措置 で上場廃止を3年から2年に短縮するかが盛り込まれている。これも最終的に盛り込まれることになるかどうかチェックしておいたほうがいいだろう(引用元:The Forbes

④マリファナ合法化(刑事罰の廃止)法案

さて、マリファナ合法化法案を最も推進している議員の一人が、NY州選出のシューマー院内総務だ。すでに下院では可決しているが、上院では4月末までに可決させたいと発言していたが、まだ採決スケジュールもでていない。

大麻産業が活性化するためには、連邦政府レベルでの刑事罰廃止とともに、カード決済を解放することが非常に重要だ。現在は、連邦レベルでは大麻は違法となっているため、クレジットカード・デビットカードのカード決済が基本的には利用できないのだ。なので、本格的に大麻産業を活性化させるには、決済手段の解放の方が重要だろう(引用元:  Cannabis Industry Journal

⑤  その他

約$500億規模でレストラン産業、ジムやライブハウス、マイナースポーツ支援などを支援する法案が民主党内で進んでいるが、可決はまず無理だろう(引用元:Roll Call


民主党の選挙にむけた動きアレコレ

NBCニュースの世論調査では、中間選挙への関心が共和党員67%、民主党員50%、ABC News-Ipsosの世論調査でも共和党員55%、民主党員と355と低い結果がでてしまった(引用元:The Hill)。そもそも中間選挙は関心が低いし、投票率も低いといわれているが、党員間に差がでているので民主党はかなり焦っているだろう。 民主党ウォーレン議員は「40年来の高インフレに対処しなければ、中間選挙で困難な結果に直面する(≒大敗する)」と発言しているが、その通りだ。(引用元:Bloomberg

$2兆のBuild Back Betterが実現できなかったことだけではない。投票権法改正、警察改革、フィリバスター廃止、マリファナ合法化、学生ローンキャンセル、気候変動対策の推進、タイトル42の撤廃などバイデン政権(民主党)が重要視していて公約に掲げていたものが何一つ達成できていないのだ。特に、気候変動対策があまりに進まない状況で、環境保護団体からは以前から失望の声があがっていた。
誰もマンチン・シネマ議員を説得できなくて、過去の実績を語るしかなくなっているのが現実だ。まずは2024年でこの両者を落選させないとはじまらないが、まだあと2年もあるのにどう進めるつもりだろうか。の子冴えた希望は、選挙区割りのゲリマンダ訴訟でどこまで有利な区割りを実現できるかだ。民主党弁護士のマーク・エリアスにかかっているというなんともアレな状況になっている。

たまにバイデン大統領が無能だからという意見をみかけるが、それは違う。そもそも、民主党が、労働組合、環境保護団体、移民擁護団体など多種多様な集まりのため、お互いの利益になることはテンポよく進むが、どこか一つの団体だけ強い主張していることだったりすると、進みにくいというのが実態だろう。

また、これは共和党にも当てはまるのだが、特に上院議員は州の代表なので、州の利益にかなうことを推進する。例えば、CA州、WV州、AZ州などで民主党の上院議員がそれぞれいるが、州の産業や、州が抱えている課題もまるっきり違うのだ。これは致し方なくて、WV州など全米でもワースト3に入るような貧困州などと、裕福なCA州の政策を一緒にする方が難しい。そうなってくると、そもそも上院議員を各州2名ずつ構成するのがおかしいのではないかという話になるが、United of Statesなので50州平等に扱うとう点から出発していることを見直す必要がでてきてしまう。