Easter(4/17)をはさんで、米議員は2週間ワシントンを離れることになった。
ペロシ下院議長のCOVID19陽性で少し話題になったが、民主党下院議員とバイデン政権閣僚を中心に COVID19陽性が多発している。特に民主党下院議員で133名になったようで、下院議員の約半数以上となる(注1)
すでにワシントンを離れていて地元に戻り選挙活動が中心のスケジュールだと予測されるが、少なくとも5日程度は隔離が必要となるのでスケジュール変更を余儀なくさせられただろう。
また、マッカーシー下院議員らの議員団は既にポーランド入り、ホイヤー下院院内総務は今週にもドイツ・ポーランド入りする予定だ(注2)
先週の法案採決については、「進まなそうな1週間」と書いた通り、主に注目する法案は以下だった。下院は、上院で可決しないような選挙アピール法案なので、省略する。
①ジャクソン・カタンジ氏の最高裁判事承認採決
可決した翌日にはDNC(民主党全国委員会)は、黒人が購読者層のメディアに対して “Promises Kept”という選挙キャンペーンを展開(注3)
②ロシアとベラルーシに対する最恵国待遇撤回法案/ロシア産原油禁止法案
既に実施しているが、少し厄介な点が存在していた。
両法案とも、制裁を解除するためには大統領(政府)が、議会にcertifications を提出する必要があることが盛り込まれている。ロシアが侵略中に制裁を覆すことができないようにするセーフガードとなっている。大統領令だけなら政権が変わればひっくり返すことが比較的簡単にできるわけだが、立法化してしまったので今後の大統領がやや親ロシアでも覆すのはかなり困難になるだろう。
なお、このタイミングで米国がウクライナに武器を貸与してあとからローンで支払っていくという法案も上院は可決していた。下院の採決はまだ未定 (注4)
休会明けについては、先週の「注目議案の進捗」で書いた通り。戻ってきてからの審議となるだろう。
2022年米中間選挙、上院選について
先週は、下院議員選に直結する選挙区割りについてブログを書きました。先週から大幅に動いた形跡はないので、今週は上院選について書きます。
まず、基礎知識。どんなに面積が小さかったり、経済的に小さい州でも2名の上院議員を連邦議会に送り込むことができる。逆に下院議員は、人口比例なので、ここが大きく違う。例えば、WY州、ND州、SD州なんて下院議員1名選出なのに、上院議員は2名も選出できる。ある意味、いびつな構成だが、これが現在のルールなのだ。
また、「上院議席は100議席で、2年ごとに3分の1」が入れ替わるというのはよく書かれているが、その3分の1の議席も、あくまで「だいたい」であって、民主党と共和党の議席数も偏っていることが多い。
2022年の上院選挙は以下だ。
・民主党14議席(引退1名)
・共和党21議席(引退5名)
再選挙になる州は、うすいグレーになっている州以外。濃いグレーカラーがToss upな州となっていて、AZ州、GA州、PA州、NC州、WI州、NV州、NH州だ。
上院選は、この7州に注目しておけばよい。その中でも、AZ州、GA州、PA州で議席数が決まるのではないかと私は予測している。
117会期は、共和党が50議席、民主党が50議席のため、ブルーウェーブとはいえ、非常にやりにくい構成だった。共和党も民主党もあともう1議席を多く確保するだけで、多くの法案がブロックできることになるので、是が非でもあともう一議席獲得したいところだ。
特に民主党上院議員の中でも、この4名が再選挙で当選が危ういとされているため、共和党は標的にしている。しかし、どうも上院選について民主党は楽観的なようだ(注5)
・Sens. Raphael Warnock (GA州) →共和党Herschel Walker がリード(注6)
・Mark Kelly (AZ州)→現職 Mark Kelly がリード
・Maggie Hassan (NH州) →直近の世論調査では勝利しそう。
・Catherine Cortez Masto (NV州) → 現職Mastoがややリード
この中でも、 バイデン政権の進捗に関わるという点では、Mark Kelly (AZ州) には特に注目しておいた方がよい。
AZ州というとメキシコと国境を隣接していることもあり、国境問題も抱える州だ。AZ州の州知事は共和党、州議会も共和党が多数党、下院議員約半数は共和党だったりするのだ。ケリー議員は、最近では大統領にメキシコ湾での新たな掘削を大統領に要請したり、タイトル42撤回にも反対表明した。自らが負けそうになればなるほど、AZ州の共和党議員が好む政策を支持することになり、そしてその選択は、バイデン政権や民主党指導部と足並みがそろわなくなることを意味するのだ。この構造は、WV州のマンチン議員、同じくAZ州のシネマ議員の支持者層が共和党員だというのと同じことだ。さらに、ケリー議員はシネマ議員よりも共和党議員から票がとれないようなので、より共和党よりの政策にシフトすることを選択していくかもしれない(注7)
一方で、民主党が標的にしている州は、共和党議員が引退する州を中心にしている。正直、NC州、PA州、WI州は各党の候補者が確立しないと現時点ではなんともいえない。
・NC州、両党とも予備選挙中
・PA州、両党とも予備選挙中
・WI州(現職共和党Ron Johnsonに対して民主党は予備選挙中)
・FL州(現職共和党Marco Rubio氏がリード、民主党デミングズ元下院議員が挑戦)
なお、トランプ元大統領当選の2016年より前までは、対抗馬の議員よりも多く資金調達した議員が勝つという方程式が成立していたが、2020年で完全に崩れた。
特に上院選は、上院選でもっとも資金調達した上院議員候補がSC州で落選するなどが何人も見受けられたので、どこまで資金調達をトラッキングしていくかは状況みていきながら検討したい。
トランプ元大統領の影響力
2月のCPAC(Conservative Political Action Conference )ではトランプ元大統領の支持が、FL州ロン・デサンテス知事を圧倒的に上回っていた。
まだまだ影響力をもっていることは確かなので、彼が支持するかどうかで選挙には大きく関わることになる。トランプ元大統領が支持をした上院議員は以下の通りで、支持をされていないAK州のマカウスキ上院議員のような人物もいる。実際、マカウスキ上院議員への挑戦者であるTshibaka議員がリードしている予備調査もでてくる。このトランプ元大統領が支持した議員が当選するかどうかも、彼の影響力が強いかどうかも図れるだろう。
また、先ほど述べたCPACは、5月にハンガリーで開催することになっていて基調講演はオルバン首相が務める。ボルソナロ氏の息子など、いわゆる極右が中心になって登壇しそうだが米国からは誰が登壇するかまだ明らかになっていない(注8)。オルバン首相の考えは、キリスト教ベースのはずだし、ロシア正教にも税金投下して教会建設や修復を実施している。
一方で、共和党の大きな支持団体である福音派は、 FL州ロン・デサンテス知事とカップリングしているようだ。フランクリン・グラハムは米国の有名な福音派伝道してあるビリー・グラハムの子供で、同じく福音派伝道の活動をしている。フランクリン・グラハムは、最近、トランプ元大統領のことを書いたことがない。一方で、ペンス副大統領とはもともと夫婦ともに懇意な仲だ。
ウクライナの難民支援で、3月にはすぐにペンス副大統領とともにポーランド入りして慈善活動をしていた。まだ2024年大統領選を話すのは早いが、福音派支持は、ロン・デサンティスFL州知事かペンス副大統領になりそうだろう。
Thank you @GovRonDeSantis for protecting children & the rights of parents in Florida. He signed the “Parental Rights in Education Bill” to ban teachers from giving classroom instruction on sexual orientation or gender identity in Kindergarten-3rd grade. https://t.co/1aUkTwFvJF
— Franklin Graham (@Franklin_Graham) March 29, 2022
I want to thank former Vice President @Mike_Pence and his wife @KarenPence for coming to Ukraine to visit our @SamaritansPurse team there and meet many refugees crossing the border into Poland. pic.twitter.com/TO5skJU8yl
— Franklin Graham (@Franklin_Graham) March 10, 2022
こうしてみていくと民主党も分裂しているが、実は共和党の分裂の方が深刻だ。
民主党は分裂しているとはいえ、大半がプログレッシブコーカスを占めているので、正直、あとは中道派や共和党寄りの議員を落選させていけばプログレッシブコーカス≒民主党になる。
一方で、共和党については、福音派とトランプ元大統領支持(極右)が割れてしまっているように思える。福音派も極右も、根っこは同じキリスト教価値観がベースにあるのだが、極右が東方正教と結びついているようなのが気になる。先ほどの福音派フランクリン・グラハムは、キリル総主教ともプーチン大統領とも2015年にロシアで会談していた (注9) が、今回のウクライナの件で、完全デカップリングとなってしまったようだ。
この分裂は、団結できるかいささか疑問だ。さらに共和党内にRINOもいると思うと、極めて困難な道になるのかもしれない。共和党政権になれば進むかと思いきや、共和党内部も分裂しているので、民主党以上に難しくなる可能性もあるだろう。
引用元
注1:https://twitter.com/ChadPergram/status/1513245700804554764
注2:Bipartisan group of lawmakers arrives in Poland
注3:DNC Launches “Promises Kept” Black Media Ads Highlighting Judge Ketanji Brown Jackson’s Historic Confirmation
注4:What Congress’s sanctions on Russia would do
注5:Democrats face steep odds in bid to keep Senate
注6:Recent 2022 Senate Election Polls
注7:Mark Kelly’s breaks with Biden pile up
注8:U.S. conservative conference with Hungary’s hardline leader reflects Republican divide
注9:Franklin Graham Meets With the Patriarch Kiril