今週は、上下院ともに本議会を開催する。一方で、4/11からの上下院ともに連休が待っているのだ。
米議会、今週の注目議案
11月の中間選挙が差し迫っている。しかしながら、政権をとった民主党はAmerican Rescue Plan以外に重要な法案を可決できていない。民主党議員はさして成果をだせていないことに非常に焦っていることは間違いない。なんとか選挙前に成果とよべる法案をだしたいわけだが、どこまで進められるのかは疑問だ
① America COMPETES Act
先日は、「 上下院でどう調整するか水面下で議論していたはずだが、下院版の法案を採用するに至ったということだろう 」と書いたが、上下院それぞれで可決している相違点を解消するために、上下両院の会議委員会の設立に向けた第一歩を踏み出した(引用元:nbcnews.com)
そもそも2021年6月に上院は半導体産業に$520億、技術革新への支援なども含む「The U.S. Innovation and Competition Act」に総額 $約2500億を可決していた。それをずーーーっと下院は動かさなかったわけだ。Build Back Better可決が絶望的になった状況で、下院民主党が、 「The U.S. Innovation and Competition Act に加えてリベラル派が好む気候変動や労働に関する条項を含んで「 America COMPETES Act 」という法案を作成したわけです。
法案採決スケジュールは、多数党の指導部に決定権があるのでペロシ下院議長、ホイヤー下院院内総務あたりが止めていたのだろう。どうも、シューマー上院院内総務とも見解が一致していないところがこういうところに見え隠れしているように思う。
そして現在の進捗だが、3/23に 「America COMPETES Act」 審議開始投票は可決している。改正案( Amendment )が10件くらい提出されているため、これらの修正案それぞれにクローシャー投票を実施していくことになる。 改正案( Amendment ) それぞれに対してクローシャー(動議終了)投票していく必要があるのでまだまだ気が遠い。
さらに、上下院の協議がすんなり済むかどうかにかかっているだろう。
The Senate is adjourned until 3:00 p.m. on Monday March 28th. There will be 2 votes that evening at 5:30 p.m.
— Senate Press Gallery (@SenatePress) March 24, 2022
1. Cloture on substitute amdt #5002 to H.R.4521,”America Competes Act”, with a 60-vote affirmative threshold
2. Passage of H.R.4521, with a 60-vote affirmative threshold
民主党は、この法案を7月の休会前に進めたい見込みだが、8月にずれ込む可能性があるだろう。8月になると中間選挙が11月に控えているので、共和党が非協力的になる可能性もでてくる。非常に重要な法案だが、まだ先が遠い。
② マリファナ合法化(刑事罰の廃止)法案
この法案の動きも選挙前の民主党の焦りがみえる。
民主党の公約の1つであった大麻の合法化(刑事罰の廃止)法案が、議場審議前の最終段階である法案に関する公聴会を3/28に開催することを発表した。また、民主党下院指導部は、この法案を来週、下院の議場で審議・投票される見込みの法案リストに加えたようだ(引用元:The Hill)
シューマー上院院内総務も、4月にも上院で審議にかける予定としている。
この法案では、大麻の刑事罰の廃止だけでなく、大麻販売に連邦税を課し、歳入は麻薬紛争で荒れた地域社会を支援するプログラムに充てるのがメインとして仕上がっているようだ。 また、大麻に関連した過去の有罪判決を抹消するプロセスも盛り込まれている。
ポイントは、可決しそうか?ということだ。 大麻の合法化(刑事罰の廃止) については共和党でも半数以上の賛成がえられるとみこまれている(実際、上院共和党議員選出州も合法化しているところもそれなりにある)。しかし、過去の有罪判決抹消や、地域社会支援プログラムに関しては反対がでるだろうと見込む。つまり、法案の内容をどこまで削ることで合意するかになるだろう(引用元:Yahoo)
ところで、この法案を推進したナドラー司法委員長の発言を引用すると、
「大麻取締法による人種間格差は、特に有色人種のコミュニティにとって深刻な結果をもたらし、事態を悪化させただけだ」というのが民主党の考えをよく表していると思う(引用元:The Hill)
このマリファナ合法化がなぜ民主党の公約になるのかというと、民主党の支持基盤であるマイノリティのためだ。大麻禁止は長年、黒人やヒスパニックなどを過剰に取り締まるための道具になってきたという主張からきている。また、大麻ビジネスを活性化させることで、彼らの経済的な支援にもなる。実は、 このマリファナ合法化と、クリーンエネルギー促進の根っこは同じだ。 民主党の支持基盤であるマイノリティが優位になるようなビジネスを新たに創出したいわけだ。 そして化石燃料企業に対して嫌悪しているのも、歴史的に白人が独占してきたビジネスだからだ。 実はとてもわかりやすい構造になっている。
ただし、大麻ビジネスを経済的支援にする取組は、すでに先行しているCA州、MI州などでは決して上手くいっているとはいえない状況だ。低所得者や白人以外のマイノリティに対して合法マリファナビジネスを立ち上げるのを支援する取り組みは失敗している(引用元:Pew Reserch)
③ ロシアとベラルーシに対する最恵国待遇を撤回する法案/ロシア産原油禁止法案
既に両方とも下院議会で可決しているが、上院議会では苦戦を強いられている。
最恵国待遇を取り消すと、米国はロシア、ベラルーシ両国に他のWTO加盟国よりも高い関税を課すことが可能となる。しかし、ここでランド・ポール共和党上院議員が、人権関連の制裁に関連する文言を法案に追加することを要求しているため全会一致での採決が阻まれている。ロシア産原油の輸入禁止についても同じタイミングで投票されるのでここで止まっている(引用元:The Hill)
全会一致にしないと、 「 America COMPETES Act 」で話したような数週間はかるくかかるフローになるので、シューマー上院院内総務は避けたいと考えている。
ポール議員以外は、全会一致で進める承認がとれているようなので、あとは彼一人だ。彼が賛同するのが一番早いが、彼の要求通りに修正案で可決することになると、また下院での採決が必要になる。
いずれにしろ、まだかかる見込みで、もしかしたら4月の休会明けになることになるのかもしれない。