2/21-26 米議会休会/米議会内のウクライナコーカス

Presidents Dayということで上下院ともに米議会は休会です。

米議会で注目されている議案の進捗

Build Back Better、中国への競争力法案( America COMPETES Act of 2022 ) については先週書いた時点から、なんら進捗がないので省略。

2022年度年次予算(3/11までつなぎ予算)

2月18日で期限切れを迎える2022年度予算は、無事に3月11日までのつなぎ予算ということで可決した。何度も書いているが、つなぎ予算に陥っていることで、色々と問題がでていることは先日書いた通り

つなぎ予算の修正案「連邦政府職員と軍人に対するワクチン接種の義務化を禁止する法案」は、投票の結果、賛成46名・反対47で可決しなかった(引用元:WSJ

上院議員銀行委員会でパウエル議長、FRB理事の承認投票

FRB銀行監督担当副議長候補ラスキン氏の承認阻止のためため上院委員会共和党員が全員投票ボイコットした。銀行委員会共和党トップは、他の4名は問題ないとしている。上院銀行委員会で共和党トップのトゥーミー議員は、ラスキン氏からの回答があれば投票を進めると宣言している。ラスキン氏待ちですね。
ラスキン氏以外をさっさと投票にかければよいのに、民主党のブラウン銀行上院委員長は、パウエル議長再任含む5名の承認投票を全員一緒に投票する方針を変えていない。来週の休会明けの3月第一週に委員会で再度承認投票をする予定だが、ラスキン氏の回答が納得いかないようなら再度ボイコットもありえる(引用元:Bloomberg
パウエル議長の再任、ブレイナード副議長、クック氏については共和党内部で反対意見もあるが50票は問題なさそう。 ラスキン氏の承認は、共和党の大半が懸念を示しているのに加えて、マンチン上院議員は「投票をどうするか決めていない 」と発言している。もしかしたら、ラスキン氏は厳しいかもしれない。

民主党は、「インフレに対処するために3名のFRB理事を追加する必要がある」というメッセージを発言しはじめたが、どうもおかしい。
ハト派3名加えたらインフレ対処弱まる、少なくとも強まることはないんだけどね…と思っていたら、同じ指摘をCNBCでもしていた(引用元:CNBC
今までもFRBを12名全席埋めなくても金融政策を決定してきたし、特に3名埋めなくても問題ないわけだ。

③ 米議会のウクライナコーカス

米議会には、UKRAINE CAUCUS(ウクライナ・コーカス。親ウクライナ派とよんでいいのかな)が存在している。

下院では、Marcy Kaptur (D-OH), Brian Fitzpatrick (R-PA), Mike Quigley (D-IL), and Andy Harris (R-MD)の4名が共同議長。上院では、 Jeanne Shaheen (D-NH)、 Rob Portman (R-OH) だ。 先日の上院でのウクライナの安全保障を守る決議は、上院ウクライナ・コーカス議長2名から提出されたものだ。 この決議には、何の拘束力もなく、単なる宣言というか意思表示だ。

上院のウクライナ・コーカスは議長を除くと17名で構成されている。そして、ここに現在、117会期上院議会の多数党上院院内総務であるシューマー議員は入っていないの。少数党上院院内総務の共和党マコネル議員、共和党院内幹事のスーン議員も入っていない。民主党に至っては、ダービン院内幹事は入っているものの、重要な委員会委員長に入る幹部クラスが1名しかいない。

◆共和党
Kevin Cramer (R-ND)
John Barrasso (R-WY)
Joni Ernst (R-IA)
Ron Johnson (R-WI)
Marco Rubio (R-FL)
James Inhofe (R-OK)  軍事委員会共和党のトップ
Pat Toomey (R-PA)  今年で引退予定
◆民主党
Richard Blumenthal (D-CT)
Sherrod Brown (D-OH) 上院銀行委員会委員長
Bob Casey (D-PA)
Ben Cardin (D-MD)
Dick Durbin (D-IL) 民主党院内幹事
Amy Klobuchar (D-MN) 民主党上院幹部/上院規則委員会委員長
Chris Murphy (D-CT)
Gary Peters (D-MI)上院国土安全保障政府問題委員会委員長

要は、現在の米議会のウクライナ・コーカスは、権限が強い議員を捕まえることができていない。これではうまく進むわけがないだろう。

一方で、2021年のウクライナは、米議会に対してサウジのロビー活動量の4倍に至ったようだ。しかも、 ウクライナ最大のエネルギー企業団体であるUFEOGIが特に活発 なロビー活動をしていたようでロビー会社9社を雇い、$100万費やしていたようだ(引用先記事
UFEOGIはロシアのガス通行料の利権がある企業団体で、Nord Stream2開通を反対している団体だ。1月にテッド・クルーズがロシア制裁法案の一貫として Nord Stream2 制裁法案を投票まで進めたのも このロビー活動のおかげのようだ。


ずっと超党派でロシア制裁法案作成を目指していたわけだが、危機が迫った現時点でさえ主にウクライナ・コーカスと、バイデン大統領に近い民主党員の意見が一致していない。民主党内部でNord Stream2に制裁したい議員は、主にウクライナ・コーカスだということを忘れてはいけない。バイデン大統領は「ロシアが侵攻したら制裁する」とは宣言しているが、ドイツと強い同盟関係を維持したいという意向があるので本当に実施するかはわからない。

さらに、共和党の動きもおさえておく必要がある。
マコネル少数党上院院内総務は、以前、超党派のロシア制裁法案については懐疑的な発言をしており「侵略されたら制裁ではなく、先制で制裁すべき」と発言している。(引用元:The Hill)
マコネル議員含むRINOは、比較的、ロシア制裁に積極的な姿勢を示している。また、ウクライナに地対空ミサイルと対戦車ミサイルを送り、ポーランド、ルーマニア(およびバルト海)に自国軍を含むNATO軍を直ちに追加配備するようにもWHに向けて発言している(引用元:The Hill
一方で、共和党には親トランプ派のAmerica Firstの議員も多くいる。全米共和党上院議員委員会委員長であるスコット議員は、「米軍を危険にさらすことは絶対にしたくないことだ」と発言している。ホーリー上院議員は、共和党の有権者は、米国が新たに海外で軍事的に関わることに疑問を持っていると発言し、欧州の米兵を削減すべきだとも発言している。

要は、民主党内も共和党内もウクライナ問題に対しては分裂している状況なのだ。さらには、バイデン大統領は米議会だけでなく、一番の支持層である労働組合、下院を中心としたプログレッシブコーカス、環境活動家などの団体も配慮しなくてはいけない。この3団体は、外交・海外での紛争についてまるで興味がないのだ。

バイデン大統領は、先日の演説でも以下のように発言している(引用元:WH

・ 米国と同盟国は、我々の集団安全保障に対するいかなる脅威からも、NATOの領土を隅々まで守る
・ウクライナで戦うために米軍を派遣することはない
・ウクライナの防衛力強化のために武器、人道支援、経済支援は引き続き行う

米議会のウクライナコーカス、共和党上院は、騒ぎ立てるだろうが、バイデン大統領の支持層を考えれば、宣言したように実施するだろうと思う。