11/29-12/4 米議会再開/2022年度のつなぎ予算は12/3で期限切れ/ゲリマンダリングの進捗

1週間の感謝祭を挟んで米議員はワシントンを離れた。地元の支援者団体への会合、感謝祭前にターキーを配るためフードスタンプのボランティア、州兵との会合(感謝祭料理をふるまうなど)といった様々な活動をみかけたが、「年内に進めるべき議案」についての議論はなかった。

さて、上下院共に例年通りの動きなら12/13~本議会は休会に入る。1月も例年通りであるならば(昨年が例外中の例外)、1/20頃に米議会が再開する。
先週も書いた通り、2022年は中間選挙の年であり、シューマー上院院内総務・ペロシ下院議長も再選挙となるので、地元に戻って選挙活動も必要であろう。
おそらくではあるが、シューマー上院院内総務にとって、はじめてウォール街を味方につけないで戦うことになる選挙ではなるはずだ。

また、気になるCoVID19変異株であるオミクロン株への対応策だが、米議員の中では議論が出てきていない。緊急性・必要性があればTweet、HPなどをつかって発信するのを日常的にやっている米議員だが、全く出てこない。むしろ、ハヌーカお祝いしているくらいなので、オミクロン株への懸念がでていない気が。

米議会で年内に進める法案

先週のをほぼコピペ。
以下の法案は、民主党指導部、あるいは超党派で年内に進めなくてはならないと考えられている法案だ。特にNDAA法案は、各国からの信用がかかっているので最優先で進むだろう。

①NDAA(国防権限法)
先々週、審議入りした米国防権限法。米国の国防予算であり、年度予算の大枠を占めるものだ。シューマー院内総務は、 中国に対抗するため米国の競争力強化を目指す法案を盛り込む考えを示していたが、共和党からの反対にあって考えを撤回した。やっと審議開始の動議は可決して、修正案も数多く提出された。12/29夕方から修正案の投票に入るスケジュールになっている。
なお、NDAAはなんとしても年内に可決したいという超党派の議員の意向が強いのでこれが最優先となるだろう(引用元:Politico

②2022年度予算(NDAA含み)
米国の年度予算は10/1からはじまる。先日、年度予算の可決が間に合わなかったため、 12/3までのつなぎ予算を可決させている。その期限は今週末だ。米議会が何も行動しないと政府閉鎖になる。
NDAAでさえ可決していないのに、年度予算を可決させるのは無理だ。問題は、いつまでのつなぎ予算にするかだ。12/15まで、あるいは、2-3月までのつなぎ予算にするといった二つの方向性がでている(引用元:Roll Call)。12/15につなぎ予算を可決したとしても、またさらにつなぎ予算を可決させるのではないでしょうか。

③債務上限引き上げ
当初は12/3に債務上限引き上げに達すると見込まれていたが、債務上限に達する最新予測が12/15だと公表された(引用元:The Hill
ヤーマス下院予算委員長は、債務上限引き上げは財政調整プロセスも視野にいれるべきだと発言しているが、 シューマー院内総務が、かたくなに単独法案(60票必要で共和党から10票必要)を主張していて、財政調整プロセスを拒否しているようだ(引用元:ブルームバーグ
単独法案となると、また共和党から10票必要になるが、マコネル上院少数党院内総務は10月の時に「共和党にそれは期待するな」と発言している。

④Build Back Better

民主党指導部としては、バイデン大統領の支持率下落、バージニア州の敗北、NJ州で敗北はしなかったがすれすれで知事当選したことなどがあり、極めて危機感を抱いている。中間選挙で巻き返しを図るために何がなんでも可決させたいと考えている。できるだけ年内にというのが彼らの意向だ。

民主党指導部およびバイデン大統領は「Build Back Better はインフレを緩和する」と主張している。しかし、説得力がないことは民主党寄りメディアからもかなり指摘されている。
バイデン政権って労働者(労働組合)のために関税を下げていないわけだし、港湾の自動化だって労働組合の反対にあって進んでいない。この記事の通り、民主党の利権団体とイデオロギーが相まって、コスト削減のための戦いを阻止しているというのはその通りですな。 National Review の編集者だから、共和党よりの記者だろうけど、民主党の利益団体がお互い衝突しているという点ではほんとその通りだと思いますよ。

2022年11月の中間選挙

大統領選がある総選挙と比較して投票率も低いし目立たないですが、米議会にとっては中間選挙も総選挙も同じくらい重要です。2022年11月には以下4つがあります。

・連邦下院議員全員
・連邦上院議員30名(共和党 20名/民主党 10名)
・36州の州知事選挙 
・44州の州議会選挙

まず、上院議員については、5名の共和党議員と1名の民主党議員再選をしないと宣言しています。共和党が20名も再選挙になるので、やや不利という状況です。
一方で、下院議員。下院議員は、15名の民主党下院議員、10名の共和党下院議員が再選を目指さないと宣言しています。民主党はやや不利な状況に追い込まれています。

2022年 中間選挙の重要ポイントは、なんといっても2020年国勢調査結果の議席再配分によるゲリマンダリングの再区割り。ゲリマンダリングとは、簡単にとっていうと、自党にとって、都合よい選挙区割りをすることです。
州議会が区割りを立案して、知事が署名して法律となる州が多くを占めます。一方で、党派に関係なしにするよう独立委員会によって区割りを決める州はごく一部です。つまり、再区割りの時に州議会、州知事を制覇することがこの選挙というゲームを制覇するためにおさえるべきことですが、州議会+州知事をおさえているのは共和党の方が多いのが現実です。ただ、黄色(ねじれ議会あるいは知事)が多いことも確か。

とはいえ、立法をおさえたら好き勝手できるかというと、そうでもない。
立法で勝てないなら訴訟するわけですよ。民主党弁護士のマーク・エリアス氏は訴訟しまくってますね。なので、立法側で可決までいったとしても、知事がブロックする場合もあるし、訴訟中な場合もあるのでまだ確定していない状況ですね。(引用元:Politico

州議会が区割りを設定すると10%以上の大差で勝利というデータも出ているし、政党間の議席の変動のほとんどは、委員会や裁判所が作成した選挙区によるものという調査結果まで出ています(Politico調査
選挙はゲリマンダリングで決まるといっても過言ではないので、この進捗はおっていきたいとおもいます。