Build Back Betterが先週下院で可決したことで、あとは上院議会での審議のみとなりました。しかし、現段階の上院審議スケジュールはあと2週間。
2021年1月の上院スケジュールを確認すると、民主党が多数党をとる1/4より前に投票したり、1/5にGA州選挙、1/6に 連邦議会による選挙人投票結果承認 があったり例年にない動きがあったが、基本的には1月の休会期間は長いのです。
シューマー上院院内総務をみていると、休会は予定通り進めている傾向がある気がしています。休会といっても、ワシントンを離れて地元での活動をしているわけです。シューマー上院院内総務は2022年に再選挙を抱えているので、選挙活動をやらなくてはいけないのですよね。
米議会で年内に進める法案
以下の法案は、民主党指導部、あるいは超党派で年内に進めなくてはならないと考えられている法案だ。特にNDAA法案は、各国からの信用がかかっているので最優先で進むだろう。
①NDAA(国防権限法)
先週、審議入りした米国防権限法。米国の国防予算であり、年度予算の大枠を占めるものだ。シューマー院内総務は、 中国に対抗するため米国の競争力強化を目指す法案を盛り込む考えを示していたが、共和党からの反対にあって考えを撤回した。やっと審議開始の動議は可決して、修正案も数多く提出された。月曜日夕方から修正案の投票に入るスケジュールになっている。
なお、NDAAはなんとしても年内に可決したいという超党派の議員の意向が強いのでこれが最優先となるだろう(引用元:Politico)
②2022年度予算(NDAA含み)
米国の年度予算は10/1からはじまる。先日、年度予算の可決が間に合わなかったため、 12/3までのつなぎ予算を可決させている。その期限を来週に迎える。
NDAAでさえ可決していないのに、年度予算を可決させるのは無理だ。問題は、いつまでのつなぎ予算にするかだ。12/15まで、あるいは、2-3月までのつなぎ予算にするといった二つの方向性がでている(引用元:Roll Call)。12/15につなぎ予算を可決したとしても、またさらにつなぎ予算を可決させるのではないでしょうか。
③債務上限引き上げ
当初は12/3に債務上限引き上げに達すると見込まれていたが、債務上限に達する最新予測が12/15だと公表された(引用元:The Hill)
ヤーマス下院予算委員長は、債務上限引き上げは財政調整プロセスも視野にいれるべきだと発言しているが、 シューマー院内総務が、かたくなに単独法案(60票必要で共和党から10票必要)を主張していて、財政調整プロセスを拒否しているようだ(引用元:ブルームバーグ)
単独法案となると、また共和党から10票必要になるが、マコネル上院少数党院内総務は10月の時に「共和党にそれは期待するな」と発言している。
④Build Back Better
民主党指導部としては、バイデン大統領の支持率下落、バージニア州の敗北、NJ州で敗北はしなかったがすれすれで知事当選したことなどがあり、極めて危機感を抱いている。中間選挙で巻き返しを図るために何がなんでも可決させたいと考えている。できるだけ年内にというのが彼らの意向だ。
民主党指導部およびバイデン大統領は「Build Back Better はインフレを緩和する」と主張している。しかし、説得力がないことは民主党寄りメディアからもかなり指摘されている。
バイデン政権って労働者(労働組合)のために関税を下げていないわけだし、港湾の自動化だって労働組合の反対にあって進んでいない。この記事の通り、民主党の利権団体とイデオロギーが相まって、コスト削減のための戦いを阻止しているというのはその通りですな。 National Review の編集者だから、共和党よりの記者だろうけど、民主党の利益団体がお互い衝突しているという点ではほんとその通りだと思いますよ。
Targeted deregulation and tariff reduction would ease some supply shortages, but the administration has shown no interest. More automation of ports would improve their efficiency over the long run, but unions have resisted it and the bipartisan infrastructure bill Biden signed on Monday blocks any funds from going toward it. The Democratic party’s interest groups and ideology combine to stop it from fighting to cut costs.
https://www.bloomberg.com/opinion/articles/2021-11-21/build-back-better-biden-inflation-pitch-can-t-pass-the-laugh-test?sref=cv51C53O
一般的に考えても、労働組合が幅をきかせるということはイノベーション促進の阻害になるわけだ。
何度も書くが、EIA予測では、来年中ごろには原油価格、天然ガス価格も落ち着くはずだ。問題は、ラニーニャの影響が1-2月にあるのは確実として、3-5月にどう影響するかにかかっているだろう。それでガスの在庫をじゅうぶんに蓄えられるか、暖房需要などが変わってくる。今、重要なのは気象予測だとおもわれる。
法案の内容がどこまで削除されるかについては、少なくともマンチン議員が以下について反対を示している。このあたりの整理は別途やる予定。
・ 米労働組合を持つ拠点で組み立てられたEV購入の$4500税額控除
・メタン排出規制
・メディケア拡充
・家族の有給休暇手当
・ SALT控除(これは別の上院議員)
次期FRB議長指名の上院承認ステップ
さて、みなさま興味がある次期FRB議長の指名についてです。FRB議長の任期は2022年2月4日までです。正直、上記のように議題が詰まっている状況で、年内は本議会での承認は極めて難しいのではないでしょうか。委員会承認は年内進むと思います。
大統領が指名しても、上院の長いプロセスが待っています。フローは以下の図の通り(無断借用)。FRB議長は、上院銀行委員会( U.S. Senate Committee on Banking, Housing, and Urban Affairs )が管轄になります。
銀行委員会共和党トップのトゥーミー議員は、ブレイナードFRB理事が議長に指名された時に懸念を示している(引用元:The Hill)
とはいえ、銀行委員会は議員数が半々のため、共和党全員が反対にまわったとしても委員会承認となるだろう。銀行委員会には共和党の中でも穏健派と呼ばれる議員は現在いないため、ブレイナードFRB理事を承認する議員は少ないのではないかと思われる。
問題は、本議会でブレイナード理事が承認されるかだが、なかなか厳しいが、「過半数の50票」で済むのでまあ反対票は多いだろうがなんとか可決するのではないでしょうか。
逆にいうと、パウエル議長も民主党で反対が何名でたとしても、共和党は50票近くになる見込みだから、たいしたことがないわけです。
どう考えても民主党は年内に可決すべき法案が山積みの状況で、超党派の賛成をとれないようなブレイナードFRB理事を指名するのか?という疑問がわきます。
一方で、バイデン政権というか民主党政権のバージニア州の戦い方をみていると未だに「反トランプ」で進めている。さすがにその進め方だと失敗すると学んでほしいが、トランプ政権が実施したことをひっくり返すという意味でブレイナード理事にする可能性も高いなあと思う。