11/8-13 インフラ法案は無事下院で可決。財政調整法案Build Back Betterの行方。

上院本議会は11/15まで休会。 Build Back Betterの審議は、上院議会では早くて11/15開始になる予定だ。 また、下院委員会も今週は委員会活動となる。
今週は11/11がVeterans Day (復員軍人の日)で祝日なので大きな動きはないだろう。また、11/25(木)もThanksgivind Dayなので11/22~の1週間は上下院ともにワシントンを離れることになる。

現在、つなぎ予算でしのいでいる状況であり、2022年度政府予算がまだ可決できていない。また、債務上限引き上げ問題も決着がついていない。

①2022年度予算
12/3までのつなぎ予算で政府閉鎖回避
②債務上限引き上げ( $4800億の増加)
12/3に、次の債務上限に達する見込み。
(12/4になれば自動的に債務上限に達するわけではない)

少なくとも、12/4の深夜0時に2022年度つなぎ予算が終了するので、また可決が必要になる。歳出委員会の共和党トップのシェルビー議員は「また、つなぎ予算可決が必要だ」と発言しているので進んでいなさそうだ(引用元:The Hill

また、債務上限引き上げについてはあまり長引く問題にはならないと予測している。もしかしたら、債務上限に達しても共和党が多少ごねて反対票を入れるかもしれない。しかし、メガドナーあたりが「これ以上長引かせると、献金しないぞ」と脅せば、しぶしぶ共和党指導部は妥協して可決に必要な60票(共和党から10票)に達するのではないかと思う。まあ、限界までは戦うでしょうね。


1. 財政調整法案の行方

まず、バイデン大統領の発表した$1.75兆のBuild Back Betterのフレームワークに対して、一番おさえておくべきことはマンチン上院議員が「このフレームワークに合意していない」と発言していることだ。
今週のVA州大敗について、バイデン大統領&民主党指導部は 「VA州選挙前にBuild Back Betterを可決させてれば大敗しなかった」 と発言しているが、マンチン議員 は「Build Back Betterを早期に可決しようとするから、VA州選挙で大敗した。今回のことを受けたからといって、Build Back Betterの内容を承諾しない」 とはっきり発言している(引用元:The Hill
マンチン上院議員は「 Build Back Better が消滅してもいい」とまで過去に発言しているので、彼はこれには基本的に興味がない。また、この法案に反対したい団体がマンチン上院議員にロビー活動をしているので、それもあって強く反対しているともいえる。

一方で、マンチン上院議員の意向を除いても民主党下院内、あるいは民主党下院と上院議員でまだ交渉が続いているものがある。

1. CBO(議会予算局)による試算待ち
11/15以降の週になるようで、歳出(新規投資)と歳入(財源)の金額が一致しているかが焦点。これはマンチン上院議員だけでなく、下院穏健派( moderate Blue Dog Democrats ) も気にしているポイントとなっている。
ペンシルバニア大学ウォートン校の予算モデルが先週発表した試算では$3000億の赤字になる試算のようです(引用元:Bloomberg

2. Immigration(移民への市民権付与)
これは上院ではバード・ルールで除外される可能性が高いが、バイデン政権および民主党指導部の重要政策の一つで市民権付与を与えるというもの。バード・ルールで除外されようがなんだろうが、そんなの無視して下院では盛り込むべきという流れのようですね。

3. SALT ( 州・地方税 )
これも下院民主党穏健派(主に裕福な州選出)は、 州・地方税 の控除枠を撤廃、あるいは拡大したいと以前から主張してきた。今回の下院案では現在の$1万→$8万に引き上げることが盛り込まれている。一方で、上院のサンダース議員やメネンデス議員(NJ州選出)は、控除上限引き上げを$40万以下の所得者に限定したいと発言している。たとえ下院で可決しても、上院で否決される可能性があるのでまだ決着がついていない。

4. 富裕税(含み益課税)
バイデン政権が発表したプランには富裕税は含まれていないんだが、11/5に上院歳入委員会トップのワイデン議員が 含み益課税をまた発表している。10年間で$5570億の歳入になる試算だから、そりゃあ盛り込みたいだろうねえ。
富裕税を実施せよと、かなり多くの団体から圧力かかっていることは確かなんだけど、単なるパフォーマンスのための提案なのか、本気で盛り込もうとしているのかいまいちわからない。たしか、マンチン上院議員は懸念を表明しているので可決は難しいとは思う。しかし、最終的な交渉でWV州に恩恵があるような条項が入れば取引はあるかもしれないので注意しておいたほうがいい。

2. インフラ法案可決の裏側

さて、米史上で過去最高のインフラ投資法案がやっと下院で可決した。
上院議会で可決したのは夏だったので随分待たされた…。 highway and transit construction programに加えて、$5790億の新規投資がある。
マンチン上院議員は「これで$38億のインフラ投資がもたらされる!」とよろこんでおりますな。WV州って山ばっかりだから橋が1545もあるんだね…
まぁこの交渉をまとめた上院議員の選出州をみると恩恵をうけるのは財源が少ないファーイースト、グレーターアパラチアのエリアです。
(引用元:マンチン上院議員HP

https://twitter.com/Sen_JoeManchin/status/1408141265976320002

下院院内総務や下院指導部がインフラ法案に反対票を入れるように促していたが、共和党から13名も造反して賛成が投じられたのは少し驚き。おそらく、今の指導部に反対的なメンバーを見かけるので、そういうことなんだろう。
Don Bacon (NE) Brian Fitzpatrick (PA) Andrew Garbarino (NY) Anthony Gonzalez (OH) John Katko (NY) Adam Kinzinger (IL) Nicole Malliotakis (NY) David McKinley (WV) Tom Reed (NY) Chris Smith (NJ) Fred Upton (MI) Jeff Van Drew (NJ) Don Young (AK)

一方で、6名も民主党が反対したのもビックリ。これ全員プログレッシブコーカスの中でも更に左派で “Squad”メンバー 。以前は4名でしたが、今は人数増えているんですよね。このメンバーは、民主党指導部の意向にも従わない傾向あるし、所属しているプログレッシブコーカスのリーダーにも従わないんだね。
Rep. Cori Bush
Rep. Jamaal Bowman
Rep. Ayanna Presley
Rep. Rashida Tlaib
Alexandria Ocasio-Cortez
Rep. Ilhan Omar

整理すると、下院民主党内の①と②のコーカス(日本では●●派とかいう感じかな)が譲らなくて1ヵ月も硬直していたので、下院黒人コーカスがプログレッシブコーカスを説得させたというところみたいですね。黒人コーカス議長のRep. Joyce Beatty (D-Ohio)が、プログレッシブコーカスの会合で説得したのでしょう。(引用元:The Hill
Congressional Progressive Caucusの主張
Build Back Better(財政調整法案)とインフラ法案は同時可決
②moderate Blue Dog Democrats の主張
インフラ法案を先に可決すべき
Build Back Better(財政調整法案)はCBOの試算を待ちたい
Congressional Black Caucus
(下院議員50名ほど所属していて、プログレッシブと重複してる議員もあり)

さらに、穏健派( moderate Blue Dog Democrats )は、CBOのスコアがホワイトハウスの試算通りに赤字にならないなら(歳入と歳出が一致)賛成すると約束している。一致していない場合は、不一致を解消するための活動を続けるとしている(引用元:Roll Call

ところで仮想通貨についての条項は、下院で修正しようとロビー活動されていたはずだが結局修正されないまま通過してしまった。このあたり、今後修正が入るかどうかについてはウォッチしておきたい。