米議会10/11-16 米議会は休会/つなぎ予算可決しただけで未解決

下院議会の本議会は休会中ですが、12日(火)に一時的な債務上限の引き上げのための投票でワシントンに戻ってくる予定。
上院議会は、予定通り今週1週間は休会のため18日夕方から再開だ。

https://www.majorityleader.gov/calendar

先々週から先週にかけて、つなぎ予算を可決しただけで、時間稼ぎしているだけだ。問題はまったく解決していない。

①2022年度予算
12/3までのつなぎ予算で政府閉鎖回避
②surface transportation programs
10月末までのつなぎ予算で運輸省関連の閉鎖回避
③債務上限引き上げ
$4800億の増加。12/3が次の債務上限に達する見込みとなる。
(12/4になれば債務上限に達するわけではない)

債務上限短期引き上げの内部事情

債務上限に達してデフォルトが目の前に迫ったら、フィリバスター廃止を拒否してきたマンチン上院議員とシネマ上院議員がデフォルト回避のためにフィリバスターを一時的に停止する可能性があったようだ。それは、共和党上院指導部が一番回避したかったことだ。なので、共和党が交渉を持ち掛けたという流れだったようだ(引用元:WP

マコネル上院院内総務が短期的な引き上げについて譲歩を出したのには、他にも企業の経営陣(要は共和党の支持団体)などからも圧力がかかっていたことが観測される。ただし、それがどこから、どのくらいかはわからない(引用元:PBS

それにしても、どの政治メディアや政治記者も「民主党は、財政調整法案で債務上限を実施せざるおえないだろう」と予測していたのに、まさか短期引き上げがくるとは…という感じでした。5つのシナリオの中にも、入ってないしさー。

民主党指導部がかたくなに財政調整法案による引き上げを拒否していることがよくわかった。財政調整法案は、その年度に1度だけ修正が可能。債務上限引き上げで1回使っててしまうと、その年度の財政出動のチャンスがあと1回に限定されてしまうことを懸念したのかもしれないですね。
となると、時間が経過すれば経過するほど、財政調整法案でもう1回修正というチャンスが減っていくことを意味する。もし、また短期債務引き上げを実施して来年に突入したら、今度こそは財政調整法案をつかって可決させるかもしれないですね。

さらに、シューマー院内総務の上院議会での発言で、共和党は怒り心頭。マコネル上院院内総務は、バイデン大統領に書簡を送っているのが興味深い。というか、今までだいたいバイデン大統領に書簡を送っていて、シューマー院内総務を交渉相手とみていない。「次の譲歩はないぞ」という脅しですね。

インフラ法案、財政調整法案の進捗

どちらも交渉は進んでいるが進捗がない。
民主党指導部はどちらも10月末に可決させると宣言しているが、すでに民主党上院議員の中でも無理だろうという声がでている(引用:Roll Call

1. $3.5兆(10年間で)の財政調整法案
・10/7にマンチン上院議員とバイデン大統領は再度交渉。進捗・結果は非公開
・マンチン上院議員は$1.5兆までしか支持しない
・シネマ上院議員は、上限提示していない。
2. インフラ法案(新規支出は上院では$5500億)
・下院でいつ採決するか未定
・プログレッシブコーカスは、「$3.5兆財政調整法案を先に可決しない限り、インフラ法案に賛成票をいれないと強硬姿勢を未だに崩していない

正直、財政調整法案の上限金額ってあんまり意味がないとみています。
マンチン上院議員が支持しない予算、民主党内部で支持しない予算(薬価引き下げ、SALT控除撤廃)などが多分にあるため、そもそも$1.5兆までいくのか疑問に思っている。一方で、税率については調整がひつようだけど、増税だけは民主党内部で一致している。
もはや$3.5兆規模の経済対策・社会保障・医療拡充ではなくて、結果的に単なる「増税」になるという懸念さえある。

<マンチン上院議員の今まで発言した中での内容は以下の通り>
・キャピタルゲイン税は21%→28%が妥当
・法人税は21%→25%が公正
・エネルギー規制はマンチン上院議員がしきりたい(WV州の石炭産業を保護)
→カーボン・クレジットの話は難しいと思われる
・低所得者層のみのchild tax creditは支持(上限を設けるので予算削減)
・最高税率39.6%に引き上げ支持
・無料のプリスクール、コミュニティカレッジ無償化には懸念を示す

ストライキが増加傾向

米国労働組合の動向が気になっている。労働組合は「StrikeOctober」としてキャンペーンを打っている。
AFL-CIOおよびAFT教員連盟は、「先にインフラ法案を可決して、財政調整法案を可決すればいい」という声明を発表しているが、プログレッシブコーカスの大きな支持団体であるSEIU(サービス国際労働者連盟)についてはそういった発言をしていない。労働組合内でも見解が分かれているような気がしてならない。民主党にとって大きな支持団体である労働組合が一致団結して民主党議員に圧力かければ動くんだろうけどそうはなっていないのではないだろうか。

近年で一番大きかったストライキが2019年の教員ストライキ(約3万人)なのだが、あと少し増えるとそれを上回りそうな勢いだ。10月にどこまで増えるか、長引くかであろう。

The Bureau of Labor Statistics tracks “large strikes,” meaning strikes of over 1,000 workers. In 2020, there were a total of nine such strikes, involving 28,800 workers. In 2021 so far, the total number is already at 12 strikes, involving 22,300 workers. And they’re not done yet. There are three large pending strike authorizations that could add to that tally: IATSE-affiliated Hollywood production workers (60–65,000 workers), Kaiser Permanente workers (37,000), and UAW-affiliated John Deere workers (roughly 10,000).

https://newrepublic.com/article/163936/america-midst-dramatic-labor-resurgence?utm_medium=Social

シュラー新議長になって方針が変わってきた感じがする。シュラー新議長は子供のころからオーガナイジングしていて、叩き上げの人物だったようだ…。彼女のリーダーシップのもとだとストライキ増えそうだよな…。

ストライキが増えるということは以下の二点を引き起こす可能性があり、経済回復が思ったよりは順調にはいかない可能性もありますね。
・米国内サプライチェーンの混乱(ストにより稼働が一時停止)
・賃金上昇