1. 9/27午後（日本時間では9/28朝）の投票予定
①下院議会日本時間明け方3時～7：30までの間に、既に上院で可決したインフラ法案
→9/30（東部標準時間未定）に変更。
プログレッシブコーカスと協議する時間をつくったのでしょう。
②上院議会
日本時間7：30頃に、債務上限一時停止と、2022年度つなぎ予算（政府閉鎖回避のため）とハリケーンIDAの復興費用をセットにした法案
どちらも否決する可能性が極めて高い。
①についての理由は、下院民主党内で最大規模のプログレッシブコーカスが＄3.5兆経済対策＆増税法案の可決を先に進ませたいがためにNayに投票いれるということだ。この法案じたいに反対しているわけではないのだが、プログレッシブコーカスの政策がことごとく実現できていないため、さすがに2022年中間選挙1年前になってきて譲れなくなってきているのだろう。
②についての理由は、上院共和党は ＄3.5兆経済対策＆増税法案に反対しているため、是が非でも 債務上限一時停止を可決したくないわけだ。46名の上院共和党議員が「たとえ、政府閉鎖になろうとも 債務上限一時停止には反対する」と書簡送りつけているくらいなので、可決することはないだろう。
民主党としては、南部州で打撃を受けたハリケーンIDAの復興費用をセットにして賛成を狙ったが、そもそも ハリケーンIDAの被害なんて2～3州だからね…
戦術としては弱いですよね。
2. 否決した時のシナリオ
否決した時に何が起こるか整理をしておこう。
まず、前提として米国の連邦政府予算は10/1～翌年9/30までという区切りのため、次年度予算を9月までに法律として制定しなければならない。米国では連邦政府の支出は全て法律として制定しなければならない。
しかし、つなぎ予算法案（来年度の予算確定していないから、とりあえず前年と同じ予算で支出しましょうねという法案）を可決できれば、一時しのぎできる。
① 2022年度つなぎ予算 と 債務上限一時停止
先に書いた通り、既に下院では可決しているが、共和党上院議員はNayに投票するだろう。 2022年度つなぎ予算 と 債務上限一時停止は否決する可能性が極めて高い。
しかしながら、共和党のマコネル上院院内総務とシェルビー議員は、 2022年度つなぎ予算の単独法案を提出している。 2022年度つなぎ予算なら共和党は応じるという姿勢なので、あとはシューマー院内総務が決断するかだ。政府閉鎖の長期化は、民主党の大きな支持基盤の一つである連邦政府職員の労働組合から圧力がかかるので一時的に閉鎖したとしても長引かないと当方は考えている。
さて、9/30までに可決しないと10/1から政府閉鎖に陥るわけだが、一応どんなことが起こるか書いておく。
・米議会は一部機関の予算さえ可決していないため完全閉鎖になってしまう
・連邦政府職員は一時帰宅となる 予算可決しない限り無給になるが、後から政府閉鎖中の給与支払いを予算化すれば支払える
具体的には以下などが一時停止に追い込まれることになる。
まぁ連邦政府職員の給与が支払えないからね。閉鎖になったら一時解雇でまた失業者数が一時的に増えるかもしれないね。
・連邦政府の住宅ローン、中小企業ローン手続き
・移民裁判の手続き
（毎月約20万人メキシコ国境に難民が押し寄せているので致命的かもしれない）
・連邦政府が支援するフードバンクなどのセーフティネットの提供
・連邦政府管轄の国立公園閉鎖 などなど
トランプ政権時代の米史上最長35日間の政府閉鎖では
・＄30億の経済活動損失
・共和党支持者層にアピールできるような機関は予算通過していたので閉鎖しなかった。例えば、国立公園（ハンティング好きだからね）などね。
・最終的には航空管制官のストライキでフライトが欠航続出してトランプ大統領がおれた
（参照元：ワシントンポスト）
次に、債務上限一時停止法案も10/15～11/4まで可決できないままでいるとデフォルトに陥る可能性がある（ソースはBipartisan Policy Center projects） 。行政（財務省）による回避方法があるのか、政権は模索していると思うが、難しいのではないだろうか。債務上限に達すると以下のようなことが起こる。
・債権者（米債保有している個人、企業、金融機関、海外勢）に対して、支払いできる上限を示すのが債務上限法案
・債務上限に達すると、財務省は新規に債券を発行することができなくなる
（参照元はThe Hill）
何度か指摘しているが、民主党が債務と支出に全面的な責任をもって財政調整法案に含めれば解決する話だ。ただし、そうだったとしても、債務上限に達しそうな10/15までに財政調整法案の交渉が間に合うかになりそうだ。今度は民主党内のマンチン上院議員、シネマ議員の壁があるのだ。とはいえ、この２名は交渉上手なので、自分たちの意向を汲んでくれればすんなり上院では可決しそうだ。その時、下院プログレッシブコーカスがどう判断するかはまた別の問題として浮上してくるが。
② インフラ法案
インフラ法案は、大きく2つの部門に分かれている。1つ目は、新規支出部分の＄5000億であるが、2つ目は約＄7000億「surface transportation law」の更新なのだ。 これは何かというと、高速道路をはじめとした交通機に関するの連邦政府の歳出の法案だ。この 「surface transportation law」 は、2021年9月30日で期限切れを迎えるため今年春頃から共和党議員も民主党議員も動いていたわけだが、上院両党のすりあわせに非常に時間がかかったというわけだ。
で、これが期限切れを迎えると何が起こるかというと、以下のようなことだ。
・ 連邦高速道路局、連邦自動車運輸安全局などの運輸省管轄の職員の給与予算がとれなくなるので一時帰宅
・州の高速道路プロジェクト（これに付随する契約ビジネス等も含む）も一時的に停止
（参照元：Roll Call）
要は、予算が確定しないので、連邦政府職員の給与を確保できない事態になるわけだ。後から政府閉鎖中の給与支払いを予算化すれば支払えることになるはずだが、どこまで職員が一時帰宅及び解雇になるのかわからないよね。
ただし、下院民主党プログレッシブコーカスはインフラ法案じたいに反対しているわけではない。あくまで＄3.5兆経済対策＆増税法案を先に進ませてからということだ。では、 ＄3.5兆経済対策＆増税法案がいつ可決するかというと、どんなに早くても投票は水曜日になるのではないかと思われる。
というのも、本会議にいくまえに下院規則委員会を可決しなくてはいけないのだが、まだ下院規則委員会のスケジュールに入っていない…
まあなので、ギリギリ間に合うかもしれないし、遅くとも来週には何とかなるのではないかという気もする。あとは、 下院民主党プログレッシブコーカスが妥協するのではないでしょうかね。