9/20-25 米議会/債務上限適用一時停止の行方

さて、下院も上院もやっと両院ともに本議会が開始します。
さ~これから2週間の米議会は忙しい!

https://www.majorityleader.gov/calendar

毎回、再掲していますが、9月の課題は山積みです。
特に、「3.債務上限引き上げ法案 」は米国債デフォルト危機を招き、「4.2022年度年度予算」については政府閉鎖を招きます。

1. $3.5兆(10年間で)の財政調整法案
  ・下院は各委員会から提案済ですが、上院はまだみたい。
  ・マンチン上院議員は$1~1.5兆の経済対策を支持
2. インフラ法案(新規支出は上院では$5500億/下院では$7600億)
   ・9/27までに可決する予定(規則に明記してある)
3. 債務上限引き上げ法案/ 債務上限適用の一時停止
  ・10月までは大丈夫…?
  ・民主党指導部は単独法案で可決したい意向だが、共和党の協力はない
4. 2022年度年度予算(10/1から2022年度予算になる)
  9月末には、つなぎ予算を可決する必要がある。そうしないと政府閉鎖。


債務上限引き上げ/債務上限適用一時停止2022年度年度つなぎ予算

イエレン財務長官は、WSJに寄稿して米議会に呼びかけたが、民主党幹部はまったく動じていない。共和党議員はさらに気にしていない。
イエレン財務長官は、直接の交渉というのをしないらしい。ポールソン、ガイトナー、ムニューシン元財務長官とはスタンスが大きく違うなぁ…。
今までは、米議会との予算まわりの交渉は財務長官がやってきたが、バイデン大統領自らが対応しているものね。

ペロシ下院議長は、$3.5兆の財政調整法案と、未だに債務に関する法案を盛り込むつもりはないと発言している。
ホイヤー下院院内総務は、債務上限引き上げではなく、債務上限適用一時停止で採決かける予定だと発言している。9/20-25で実施する予定のようだ。

また、2022年度予算をつなぎ予算でさえ可決しないと政府閉鎖を招くことになる。債務の件と2022年度予算のつなぎ予算をセットで採決かけることには既に共和党が反対しているが、 2022年度予算のつなぎ予算が単独法案の場合は、共和党は反対はしない可能性が高まってきた。
というのも、共和党の牙城である南部エリアはハリケーンIDAの被害が未だに残っていて、このタイミングで政府閉鎖に陥るのは避けたいと考えているようだ。
(引用元:Politico)

なお、債務上限法案についての説明でとてもわかりやすいのがThe Hillになった。ここでは一部引用にとどめるが、URLから全文読むのを推奨。

What is the debt limit?
The debt limit — often called the debt ceiling — is the legal cap on how much money the federal government can owe to the many individuals, businesses, financial institutions and foreign nations holding the country’s debt via U.S. Treasury bonds. It also includes money the federal government has borrowed from other federal accounts.

https://thehill.com/policy/finance/572842-five-questions-and-answers-about-the-debt-ceiling-fight

・債権者(米債保有している個人、企業、金融機関、海外勢)に対して、支払いできる上限を示すのが債務上限法案
・債務上限に達すると、財務省は新規に債券を発行することができなくなる
・債務不履行に陥ると、世界の金融機関を揺るがすかもしれない
 とはいえ、米国は債務不履行を狙っているということではなく、政治のチキンレースなので金融システムをどこまで揺るがすかは微妙
・連邦政府のプログラムや、連邦政府から州や都市への援助資金などは途絶えるので米国内の影響はあることは確か

$3.5兆(10年間で)の財政調整法案

先週のブログで、下院各委員会の採決前の案を記載しました。
ただ、マンチン上院議員が$1~1.5兆を支持すると宣言している。
また、ヤーマス下院予算委員会委員長や、下院議員重鎮の一人であるクライバーン議員まで「$3.5兆の予算よりは小さくなるだろう」と発言(引用:The Hill)
となると、色々と変更が入ってくることは免れないので、先週以上の詳しい分析はやめておくことにした。

ひとつだけ言及しておくことがある。
薬価引き下げ法案は民主党員3名の反対にあい委員会採決で否決したことだ(引用:The Hill
薬価引き下げ条項が否決されたことで$5000億の歳入見込みが減少となる。
増税や薬価引き下げで$2.2兆の歳入(民主党は$2.2兆の歳入と見込んでいるが、資産だと$1.75兆という試算もある)が見込める法案に仕上げていたわけだが$5000億も歳入が減ることになり、$1.2~1.75兆に縮小するわけだ。
マンチン上院議員のレッドラインは「赤字を増やさない」ということだ。つまり、今回の財政調整法案で歳出=歳入になる必要がある。
$5000億の支出が減るのは、かなり痛手だろう。

さて、これは 製薬業界の莫大な資金をかけたロビー活動の結果だ(引用:The Hill
民主党議員の中にも、製薬業界からの支援がある議員、あるいは、製薬業界の代表として議員になった議員が一部いるわけです。忘れてはいけないですね。

医療問題は、まさに民主党の中でプログレッシブと穏健派の対立が起こるので、在宅介護の予算、メディケア拡充の予算など、もう少し党内の駆け引きが続きそうです(引用元:WP