民主党マンチン上院議員とウエスト・バージニア州【その1】

今、一番注目されている米連邦議員は、なんといっても民主党ジョー・マンチン上院議員(ウエスト・バージニア選出)だろう。
過半数で承認される財政調整プロセスや、内閣閣僚承認については、マンチン上院議員次第で承認の可否が決まるようになってきてしまっている。
前回の1.9兆$経済対策法案も、失業保険給付でマンチン上院議員の主張で$400/週→$300/週で1週追加に変更になった。また、2024年まで州税の減税を禁止する条項まで土壇場で盛り込んでいる。

バイデン政権の内閣閣僚についても、ニーラ・タンデンOMB局長候補についてはマンチン上院議員からの承認が見込めないとなり、バイデン政権は使命を撤退させた。その後、候補者は未だ出されていない。

なんていうか、米議会117会期については、マンチン上院議員の意向さえ追っていれば米議会の動向がわかるんじゃないのか?と思わせるほどだ。
しかも彼の再選挙は2024年なのと、2022年中間選挙を終えて新しい上院議員が入ってくる2022年末まで続くと思われる。少なくとも来年末まではキーパーソンになる。

また、よくマンチン上院議員は中道派で共和党寄りと表現されるが、そう思える部分も確かにあるが、サンダース議員に近いのでは?と思う部分もある。
というわけで、マンチン上院議員について整理してみたいと思う。

ジョー・マンチン議員の概要

https://www.manchin.senate.gov/about

 Joe Manchin (D-W.Va.)  1947年生 (74歳)

【上院での所属委員会】
・エネルギー資源委員会 委員長
・上院歳出委員会 ←連邦予算の裁量的支出を決める重要委員会
・上院軍事委員会
・上院退役軍人委員会

【上院民主党指導部】
マンチン議員は、上院民主党指導部の中で2016年から役職がついている。
Policy & Communications Committeeの副議長として、シューマー院内総務が招きいれている。

https://www.senate.gov/senators/leadership.htm

【簡単な略歴】 王道ですな…
2010年~    ウエストバージニア州選出 上院連邦議員
2005年~2010年 ウエストバージニア州 知事
2000年~ 2004年 ウェストバージニア州 州務長官
1982年~1996年  ウェストバージニア州 州議会議員
1970年 ウェストバージニア大学卒業
1965年 フットボール奨学金で大学入学

・WV州ファーミントンの小さな炭鉱町で生まれ育つ
・叔父を炭鉱事故で亡くした経験をもつ
・イタリア人移民の祖父をもつ
・敬虔なカトリック信仰(離婚歴なし、同性愛者結婚に反対、中絶反対)
・猟銃ハンティング、フィッシング愛好家
・パイロット、 モーターサイクリスト
・ 全米ライフル協会(NRA)会員 
 ※銃の保有は支持するけど、購入時の身元強化支持でNRAから攻撃された
・超党派で法案を進めることを支持
 ※現在、共和党議員5名民主党5名の上院超党派グループのリーダーでもある
・フィリバスターの改革は賛同するが、フィリバスター廃止は賛同しない。フィリバスターのクローシャーでは今まで通り60票必要だという考え。

【ジョー・マンチン議員への  2015 – 2020年の献金団体】
少々意外だったのが、金融、生保、不動産業界からの献金がぶっちぎりで多く、エネルギー業界からの支持は決して多くない。企業別にみると、 資産運用のCapital Group、製薬会社のMylan Inc、投資銀行GSが上位にくる。
民主党議員といえば、労働組合や訴訟弁護士などからの献金が多いがそれもあまりない。

https://www.opensecrets.org/members-of-congress/joe-manchin/industries?cid=N00032838&cycle=2020&type=I

マンチン議員を選出したウエストバージニア州について

ウエストバージニア州は、貧しい州の1つだ。世帯収入の中央値が全米で2番目に低く、人口は減少の一途を辿っている。

◆2019年 世帯収入中央値  $48,850(全米で2番目に低い) 
 ※ 2019年の全米世帯収入の中央値は$65,712なのでかなり低い。
◆貧困率16% (子どもの貧困率は約20%)
◆ 州の総生産(gross state product )は722億ドル
―2014-19 の5年間の成長率は△0.6%
―上位産業は、ヘルスケア、製造業、炭鉱従事者含めたエネルギー関連の従事者
◆人口は約180万人
2014-19 の5年間の成長率は ▼0.6%で50州中最下位。
◆発電は、石炭火力発電が9割を占める。
― 工業電力料金は全米で最も安い州に属し、全米平均より12%ていど低い
―発電した電力の3分の2を他州に輸出している。

マンチン上院議員の政策課題

マンチン議員の公式HPで政策や投票記録をみると、貧しいウエストバージニア州の雇用を守り、貧困層にも社会保障を提供しようとしているのがよくわかる。
また、彼はエネルギー天然資源委員会の委員長なので、この分野に関しては大きな権限をもっていることも留意する必要がある。

①エネルギーと天然資源
・クリーンエネルギーに反対しているわけではなく、化石燃料を含めたエネルギーミックスを推進したいと考えている。
・石炭業界および天然ガス業界の雇用は守りたい。
・ Appalachian Storage Hub をウエストバージニア州に誘致して10万人の雇用創出するために尽力している。
・土地及び水源保全基金(Land and Water Conservation Fund)の支持者。
狩猟、釣り、その他の娯楽目的で森林や水資源の環境を保護する助成金。
州と連邦の土地で500を超えるプロジェクトに2.4億ドル以上のLWCF資金をもちこんだ。

②INFRASTRUCTURE & JOBS(インフラ&雇用)
・ 道路、橋、空港、パイプラインの修繕や建設
・ブロードバンド拡大でデジタルデバイドをなくす

③HEALTHCARE / SENIORS(ヘルスケア/高齢者)
・薬価引き下げ
・すべてのアメリカ人に手ごろな医療保険を提供したい
・オピオイド過剰摂取による死亡率1位、処方数1位への 物質乱用防止および治療対策およびメンタルヘルス対策
・ メディケアと社会保障を保護

④EDUCATION(教育)
・ 学生ローン返済の簡素化
・ ウェストバージニア州にいる10,500人以上のホームレス学生への住宅提供
・知事時代に、州立大学のウエストバージニア大学とマーシャル大学の授業料を1年間フリーにしたことがある。

④ VETERAN(退役軍人)
退役軍人の雇用機会と医療アクセスの改善

マンチン議員の税制や財政のスタンス

まず、マンチン上院議員は財政規律派で政府債務が膨らむことは避けたいと考えている。収支均衡にしたい考えだ。
また、彼の過去の投票行動からすると、少なくとも減税には強く反対し、増税を避けることにも反対している立場のように思える。
すでに法人税については21→25%を支持しているし、非常に明確に表明している。それ以外で気になるキャピタルゲイン税、富裕税についてのスタンスについてはまた違うタイミングで調べたい。【その2】はまたそのうち書きます。

2024年まで州税の減税を禁止する条項
◆2017年トランプ減税にはNAYで反対
◆2014年Tax Increase Prevention Act of 2014(増税防止法) にはNAYで反対
◆2013年イエレンFRB議長の指名で、上院銀行委員会で反対票を投じる
どうやらマンチン議員はQE継続に懐疑的で、 イエレン氏が債券買い入れの縮小開始決定を支持したことで承認に変更した(参照元:WSJ


参照元
https://www.manchin.senate.gov/
https://ballotpedia.org/Joe_Manchin_III
https://www.ibisworld.com/united-states/economic-profiles/west-virginia/
https://wvpolicy.org/data-released-today-shows-west-virginia-had-6th-highest-poverty-rate-in-the-country-even-before-covid-hardship-more-relief-needed/
https://www.drugabuse.gov/drug-topics/opioids/opioid-summaries-by-state
https://www.govtrack.us/congress/members/joe_manchin/412391
https://www.opensecrets.org/members-of-congress/joe-manchin/industries?cid=N00032838&cycle=2020&type=I