いよいよジョージア州上院選決選投票/11月得票数を振り返りつつ予測

前回書いた「来週のジョージア州上院選と小切手2000$配布の行方」の続き。
ジョージア州の決戦投票は、 1月5日7時~19時(日本時間 1月5日21時~ 1月6日9時) となり、投票終了後に集計されて、順次カウンティごとに発表されるはずです。なので、どのカウンティが、どのくらいの有権者登録数がいるかの規模感覚はおさえておいた方がよいと思われるあと、11月の時の得票数も今一度振り返ってみました。

①GA州上院選、期日前投票の進捗(1月3日時点)

GA州上院選の期日前投票+郵便投票
Total Early Votes: 3,032,066 (有権者登録に対しての投票率39.2%)
【内訳】
・郵便投票
Total Accepted Ballots: 957,544
Return Rate (of Requested Ballots): 69.7%
・期日前投票
Total In-Person Early Votes: 2,074,522
Percent In-Person Early Votes (of Registered Voters): 26.8%

②GA州上院選、11月の得票数を振り返り

ジョージア州は、各候補者数の種類別投票数も詳しくまとめている。引用元はこちら

共和党パーデュ―議員と民主党オソフ候補者、その他のハゼル候補者の得票数は以下の通り。パーデュ―議員とオソフ議員の得票差は、8.8万票。そこに、Hazel候補者の11.5万票がどう流れるかだが、ヘーゼル候補者はどちらの候補者も支持しないと宣言した。どちらも支持しいないと宣言された以上、この11.5万票は考慮しないで考えることにする。ちなみに、トランプ大統領はジョージア州で 2,461,837票しか獲得できていない。パーデュ―議員の方がわずかだが約800票近く多く票を集めたのである。

候補者投票日投票郵便投票期日前投票暫定投票合計
パーデュ―
(共和)
579,005
(23.51%)
458,428
(18.62%)
1,421,609
(57.73%)
35752,462,617
オソフ (民主)360,747
(15.19%)
791,865
(33.35%)
1,215,282
(51.18%)
6625 2,374,519
Hazel (他)34,05328,97951,578429115,039

次は、ジョージアSpecial。
ジョージアSpecialの方は、11月に20名も立候補者がいたなんて知らなかった…
共和党候補者をまとめた総得票数 2,426,120票
民主党候補者をまとめた総得票数 2,378,312票  得票差は4.78万票!

GA Special投票日投票郵便投票期日前投票暫定投票合計
ローファー (共和) 298,209249,090724,57713381,273,214
ローファー以外の
共和党候補者全員
1,152,906
ワーノック (民主) 205,110601,522  807,005 33981,617,035
ワーノック以外の
民主党候補者全員
761,277
その他/無所属 109,929

他の候補者に投票した有権者が、必ずしも党が同じという理由で投票するとは限らない。候補者自身が支持表明しても、有権者が投票しないケースも往々にしてある。民主党候補者で、ワーノック候補の次に得票した元アトランタ郊外の前市長 Deborah Jackson(得票数 324,118 )はワーノックへの支持表明をしているので、この得票はワーノック候補が取れる可能性が高いだろう。その次に民主党候補者で10万票得票した Matt Lieberman については不明だ。

一方で、共和党候補者で最も多く98万票を獲得したDoug Collins は既にローファー議員に支持表明しているため225万票は入ると見込める。
あとは、ワーノック候補者以外の民主党候補者がどれだけ票をワーノック候補者に寄せるかにかかっているだろう。

③ カウンティ別の得票数

ジョージア州には159ものカウンティが存在し、テキサスに次いで二番目のカウンティの多さ。そして、そのカウンティ数別に、得票数結果がでてくることになる。GA州スペシャルのデータは候補者が20名もいて複雑なので、パーデュー候補vsオソフ候補の投票結果データを引用。
●の大きさは人口の大きさを示す、州都のアトランタでは民主党の票がとれるが、それ以外だと人口数上位5位くらいの都市部で票がとれている。

参照元:https://www.politico.com/2020-election/results/georgia/senate/

カウンティ別の候補者投票数でみると、前回10万票を超えた上位9つのカウンティ合計で総得票数の半分くらいになるから、ここをおさえておくのがよさそう。
当然だが上位3つのカウンティはアトランタ周辺のカウンティである。
159のカウンティなんて覚えられないしね…

こうやってみると、都市部で民主党、田舎エリアで共和党とはいわれるものの、カウンティから更に中を細かくみないとわからないよね。そんな簡単ではない。

参照元:https://www.politico.com/2020-election/results/georgia/senate/

④ 新たな有権者登録者数

今回、新たに76,000名が有権者登録を行った。56%が、18歳になったばかりの人達を含めた35歳以下の有権者だ。新規に有権者登録を行た人達の人種比率は、46%が白人、28%が黒人、それ以外は人種を書かなかったりした人や、ヒスパニックやアジア系の有権者だ。
民主党としては、黒人有権者比率全体が30%なのにそれを下回ったことはネガティブに働くだろう。

Nearly 76,000 new voters registered in Georgia since before the presidential election, enough to make a difference in the U.S. Senate runoffs if they turn out.

引用元:https://www.ajc.com/politics/75k-new-georgia-voters-registered-before-us-senate-runoffs/H3CXAFIKFVCKHJNW5MBFZKQDZU/

今回新たに有権者登録した人達が加わったとしても、ジョージア州の人種比率が大きく動くことはなさそうな気がしている。

引用元:https://www.pewresearch.org/fact-tank/2020/12/21/black-latino-and-asian-americans-have-been-key-to-georgias-registered-voter-growth-since-2016/

⑤ Five Thiry Eightの最新選挙予測と私の予測

1/3時点のFive Thirty Eightでは、民主党候補者が2ポイントリード。
民主党オソフ議員   49.2% vs 共和党パーデュ―議員 47.4%
民主党ワーノック議員 49.5% vs 共和党パーデュ―議員 47.2%

世間では接戦といわれているが、私の最終予測としてはブルーウェーブはないとしておく。少なくとも民主党候補のワーノック候補者は負けると思っている。

理由【1】
新たに有権者登録を行った人達76,000名のうち28%しか黒人がいない。白人が46%もいる。若者の白人層に民主党候補者が多いのは事実だが、すべてそういうわけではない。想定より黒人の新規登録者数が少なかったのは民主党にとっては痛手になるだろう。

理由【2】
ワーノック候補者は黒人の牧師なので、黒人票がとれそうなのにもう一人の民主党候補者であるオソフ候補者より11月に票を獲得できなかったという調査結果がでている。オソフ候補者は黒人の9割の票を獲得したが、ワーノック候補者は73%しか獲得できていない。

An Associated Press VoteCast survey of Georgia voters in November found that 22% of white voters chose Warnock and 28% chose Ossoff, compared to the 90% of Black voters who chose Ossoff and 73% who chose Warnock.

引用元:https://www.myjournalcourier.com/news/article/Democrats-face-a-turnout-test-in-Georgia-s-Senate-15826131.php

その黒人層から何故票がとれないかの理由として、中絶容認姿勢を示していて保守的な黒人牧師から批判がきていることが一つあげられる。また、黒人層は、カトリックにしろプロテスタントにしろ中絶反対の立場をとる人が多い。
これに対して、ローファー議員は熱烈な中絶反対派で、中絶反対派団体から多額の献金も受けている。決選投票が決まったら、真っ先に献金していた団体の一つだ。中絶反対派のプロ・ライフ派はなんだかんだで強いのだ。

That has made abortion a top issue for many voters. Mr. Warnock’s pro-abortion-rights stance has caused problems within his own religious community, too, with conservative Black pastors criticizing him for his views.

参照元:https://www.csmonitor.com/USA/Politics/2020/1222/Georgia-Senate-race-shows-deep-rift-on-Christian-faith

【理由3】
11月の総選挙で民主党は下院議席数を15議席も減らし、上院議席も想定したよりも議席を奪還することができなかった。ミシガン州上院選なんか僅差で民主党議員が再選したほどだ。しかも、上院議席がなぜ奪還できなかったのか、結局、敗因分析できたのかうやむやになっていると思われる。共和党の2~4倍の資金を接戦州で投下したのに負けたということはかなり重いと思いますよ。尚、今回も民主党候補は両者合算でいくと共和党候補者よりも多く資金調達していますが、結果はどうなるかね。

In addition, Ossoff is now the best-funded senate candidate in U.S. history, managing to raise $106.8 million over the past two months. Warnock separately raised $103.4 million during the same time period. Loeffler and Perdue raised a combined $171 million.

引用元:https://thehill.com/homenews/campaign/532003-23-million-people-have-voted-in-georgias-senate-runoffs-with-week-to-go

一方で、共和党はマッカーシー少数党院内総務が高らかに勝利宣言をしているし、2022年には多数党になると宣言しています。以前みたインタビューで、愚直に分析をやり、とりわけ有力な候補者探しに時間とお金をかけたことが勝因だったとしていた。キム・クラシック候補者のような人を見つけただけでもすごいと思うよ。また、地上戦と広告をうまく組み合わせたのも功を奏したようだ。

今回もジョージア選では共和党は1000名のドアノックスタッフを投下して地上戦に追い込みをかけているようだ。おそらく下院共和党で勝利したやり方を持ち込んでいるものと予測している。

The Republican campaigns and their outside allies have deployed about 1,000 staffers to knock on doors and turn out votes. Democrats declined to detail their field teams, but in one measure of just how large the effort is, Ossoff’s campaign employed a 30-person unit solely dedicated to registering new voters.

引用元:https://thehill.com/homenews/campaign/532129-georgia-voters-flood-polls-ahead-of-crucial-senate-contests

しかしながら、共和党が負ける懸念はまだ残っている。特に、パーデュ―議員もローファー議員もトランプ大統領人気でこのまま勝利しようとしているので、うっかりトランプ大統領が「投票は不正だ、投票には行くな!」などと言ってしまっては最悪なことになるだろう。1月4日にトランプ大統領はジョージア入りして応援演説行いますからね。最後の最後で何言うかね。

もう パーデュ―議員もローファー議員も共和党幹部とトランプ大統領の間で挟まれて揺れるのではなく、トランプ大統領人気についていくと決めたのは潔いのではないでしょうか。「勝つ」ということを選んだんでしょうね。

ブルーウェーブになったとしても、増税になるかは法案次第

やっと財政調整措置について理解できた。税制改革は歳入と歳出に関わるし義務的経費だから、単純過半数で可決できる。つまり、今回の上院選で民主党が勝利すれば、税制改正がいっきに進むことになる。
しかしながら、「バード・ルール」たるものが存在するのだ。このルール適応除外するために60票必要となってしまう。で、バード・ルールに適応するかどうかって法案次第なんですよ。なので、現段階でどうなるか予測するのは厳しいのではないかなあ。

あと、 裁量的経費に該当する単発の経済対策予算は、当然の事で財政調整措置が適応外になるので、クローチャー(討論終結)するのに60票が必要になる。

バイデンの目玉政策を考えると、増税で歳入を補い、以下で歳出をすることが考えられる。
オバマケア拡充 → 恒久法変更で義務的経費拡大
インフラ投資 → 裁量的経費拡大

とはいえ、 そもそも共和党がずっと訴訟を仕掛けていたオバマケアの最高裁審理が5~6月に判決がでる予定なので、そこで違憲と判断されたらオバマケア拡充は厳しいのではないだろうか。
まぁインフラ法案については、 上院にも下院にも運輸・インフラ委員会があるので、そこの委員長が誰になるかで変わってくるでしょうね。