トランプ大統領、米議会が可決したコロナ追加経済対策予算に対して修正を要求

そもそも急ぎ過ぎた法案可決だった

東部標準時間12月21日深夜(日本時間22日)に年度予算&コロナ追加経済対策予算が米議会で両院を可決した。米議員に最終的な法案が配布されたのは東部標準時間21日午後14時で、下院に至っては数時間で可決せざるおえなかった。AOC議員が真っ先に、5593ページの法案を数時間で読んで、投票しろって無茶でしょとツイートした。

その後、リック・スコット上院共和党議員が「普段は同意できないが、今回の問題定義はAOC議員と一致している」とツイートして、法案を読む時間があまりに限られていることから、投票には反対を表明した。その後、マイク・リー共和党議員など次々に、法案を読まずに採決に踏み切ることに対して反論が次々に出てきた。

最終的に、下院議会では民主党&共和党のどちらからも80名ほど反対に投じた。上院議会では、民主党&無所属は全員賛成、共和党は反対&無投票が8議員もでた。反対に投じた共和党議員は、小さな政府をのぞむティー・パーティー議員と、財政保守議員だね。ロン・ジョンソンは1200$の小切手配布の全会一致についても反対した一人。

●反対に投じた共和党議員
・Scott, Rick
・Paul, Rand
・Cruz, Ted
・Blackburn, Marsha
・Lee, Mike
・Johnson, Ron
●投票しなかった共和党議員
・Enzi, Michael
・Rounds, Mike


トランプ大統領は、米議会が可決した法案に新たな要求をだしてきた

トランプ大統領が、昨日の日本時間9:20頃にビデオメッセージを公開して「5000ページもある法案を米議員は読まないで可決したんだ!小切手給付を1人600$から2000$にしろ。他にも不要なの削除しろ」と強く要求してきた。

この1人2000$って、かなり唐突な金額です。そもそも、12月初旬にムニューシン財務長官がもってきた案では1人600$の小切手給付でしたよね。前回のThe CAREs ACTが1人1200$だったのに、なぜに2000$…。

その後、ジョン・スーン共和党上院院内幹事への批判ツイートも続いた。
“RINO”とは、Republicans in name onlyの略で、名ばかり共和党員という意味で、軽蔑の意味をこめて使われる。 “Mitch’s boy” のMitchは、もちろんマコネル上院院内総務のことねw 共和党上院院内幹事って、No.2の役職ですよ。党内をまとめる役割を担っています。
2022年に彼は再選挙予定だけど、お前はもう落選だなって宣言していますw
しかも、俺がいなければ、11月の上院選挙で8議席は落としていたはずだ!と…
まぁ8議席も落としたかはともかく、トランプ人気で上院共和党議員の数議席が確保できたことは間違いないでしょう。

1時間後、ペロシ下院議長は、トランプ大統領に賛同を示した。もちろん、シューマー少数党院内総務もね。さらには、AOC議員まで、私とタリブ議員は、その法案をすでに作ってるわ!これを下院議会で今週中にすればいいのよ!と押しかけてきたことにもビックリw

ペロシ下院議長は24日にAOC議員とタリブ議員が作成した2000$配布の法案を上程して採決取る予定だそうです。少数党下院院内総務であるマッカーシー議員は、共和党下院議員の多くが反対するだろうと予測しています。

一方で、共和党上院議員は3つに分かれています。
①トランプ大統領に賛同を示した議員
  グラム議員(共和党上院議員中、一番の親トランプ)
  ジョシュ・ホーリー議員(当初から1200$をサンダースと共に訴えていた)
  ローファー議員(GA州上院選挙中)
②法案内容に問題があるため、大統領は拒否権行使すべき!とする議員
  ランド・ポール議員ほか数名
③ 本件に関しては沈黙を貫くが大多数

上院における法案上程権限があるマコネル上院院内総務、党内をまとめるジョン・スーン院内幹事の見解はまだでていません。下院で可決したとしても、上院が採決するかはまだ未定です。 共和党上院内部でも10数名は小切手増額に賛成なはずです。民主党全員+共和党10数名で採決とれば可決するはず。
しかしながら、そもそも反対投票者&投票しなかった共和党議員が8名もいるなかで、すでに内部分裂おきているんですよ。GA州上院選前にこれ以上、党内部を分裂させるのか?って話です。

あとは、まあRINOとは揶揄されたとしても、小切手給付に反対している共和党議員は多いわけです。2000$を超える配布となると、予算も3倍くらいになるようだし、10数名の賛同が得るかも不明です。

今後の米議会スケジュール

24日に2000$採決は、下院だけ可決しても意味がないので省略。

第一に、重要なのは21日に通過させた1週間のつなぎ予算期限切れが28日にきます。ここで何もしないと、政府閉鎖に陥ります。
下院議会は、大統領が予告していた国防権限法の拒否権を覆す採決を予定しているため召集がかかっています。上院は翌日召集予定ですが、早めるかもしれないですね。

これらの法案は、116会期(1月3日11:59)までに大統領署名、あるいは拒否権発動されたらそれを覆す両院で投票しなければ、自動的に葬られます。同じ法案文面を利用するにしても、上下院の採決を最初からやる必要があります。
なので、次に重要な日程は1月3日の会期の切り替わりですね。

最後に重要なスケジュールはいつコロナ追加経済対策予算が大統領に送付されるかです。The Hillによると東部標準時間12月23日17時の時点で、コロナ追加経済対策予算と年度予算が正式に大統領には送付されていません
この、「正式に送付されていない」というのはポイントになります。
米議会の法案成立のフローをふまえると、法案を正式に送付された受理日から日曜を除く10日間が大統領が拒否権発動できる期間になります。正式受理日から10日間を過ぎても署名が終わらない法案は、会期内なら自動的に成立します。
しかし、今回の116会期は1月3日11:59で終わります。
仮に、法案が明日24日に送付されたとしますよね。25日から日曜日を除く10日間をカウントすると 1月3日11:59を超えてしまうんですよね。これを”pocket veto”というようです。署名しなくても、会期が切り替わったから法案が無効になるので、間接的な拒否権発動という意味ではないでしょうか。

では、新会期になってから、もう一度可決すればいいじゃないかという話もありますよね。でも、そもそも共和党上院議員が9000億ドルの予算に賛同を示したのは、ジョージア州上院選で議席を獲得したいからですよ。こんな差し迫った状況、かつ、トランプ大統領からも賛同を得ず、小さな政府を目指す共和党員から賛同を得られていない法案を通過させますかね?とても疑問に思います。


トランプ大統領の目的は何か

トランプ大統領お得意の人気獲得のための思い付きもあるでしょう。年度予算内にパキスタンのジェンダープログラムへの支援とかまぁ気にくわないものが含まれているというのもあるでしょう。トランプ親衛隊は、「そんな海外に予算使うなら、米国人に小切手配れ!」という主張が散見されました。まぁAmerica Firstということでしょう。それはわかる。

ただ、本当に2000$の現金給付を要求するなら、もっと以前からできたはずですよね?私は、このタイミングで要求したということは、トランプ大統領は、共和党上院議員に宣戦布告したんだと思いますよ。あくまで私の推測ですが、1月6日の異議申し立て賛同を目的とした、取引ではないでしょうか。

先日、親トランプ大統領の共和党下院議員、少なくとも12名がトランプ大統領と会合をもって、1月6日の連邦議会での選挙人投票結果に対して異議申し立てを実施することを話し合っている。少なくとも下院共和党議員の20名が賛同を示したので、異議申し立てを実施するはずだ。着々と増えているという噂もある。

これに対して、共和党上院議員で異議申し立てを表明した人はまだ誰もいない。ランド・ポール議員や、トム・スコット議員が候補にあがってそうだが、まだ表明はしていない。そもそも、マコネル上院院内総務は12月14日の選挙人投票結果をふまえて、バイデンが勝利したと認めた。ジョン・スーン院内幹事もそう認めている。また、マコネル上院院内総務は、異議申し立てをしないように党内に呼びかけている状況だ。
トランプ大統領は、総選挙後から不正選挙への訴訟などに対して上院議会に呼びかけていたが、公聴会実施など含めて協力した議員は、数名だ。それに対して、かねてから不満があったことは確かで、トランプ大統領としては、もっと働きかけてほしかったのだろう。まあどっちもどっちだけどさw

しかしながら、117会期は、少なくとも下院議会の多数党は民主党である。議席差が少ないが、多数党は多数党だ。 異議申し立てが受理されたとしても、最終的に米連邦議会が大統領候補者の投票をした時にトランプ大統領は負けるだろう。まあ、2024年を狙っての人気獲得かもしれないが、共和党議会に対して最後までケンカ腰のトランプ大統領というのはらしい。

というわけで、年末はゆっくりできるかと思っていたら、ギリギリまで騒がしいのでブログ更新が続きそうですね。