米上院議員選挙②アイオワ州、メイン州

上院議員選挙①ノースカロライナ州とアリゾナ州の続きです。

今週はノースカロライナ州は1ポイント差の調査結果がでてくるなど、接戦が続いています。 ノースカロライナ州のトム・ティリスとノースカロライナ州共和党チームは、あのケンブリッジ・アナリティカを利用した経験もあるのでただでは転ばないかと。調査では大きくリードされていて負けていたのに、結果では勝利したのが2014年。今回も巻き返して、勝利すると私は予測しています。

一方、アリゾナ州。
調査結果は明らかに 民主党立候補者のMark Kelly(元宇宙飛行士) がリードしています。アリゾナ州での共和党現職マクサリー上院議員の再選は、なかなか厳しいかとみています。

注目すべきは、アイオワ州上院議員選挙

私は、ノースカロライナ州とアイオワ州こそ上院議員選で最も注目すべきだと考えている。民主党候補者のグリーンフィールドが調査はリードしているが、ジョニ・エルンスト共和党現職上院議員候補が追い上げてきている。しかも、彼女は、司法委員会メンバーで最高裁判事承認をめぐって注目が集まる中で、テレビ中継される機会も多かったことが功を奏しただろう。
ジョニ・エルンスト共和党現職上院議員はイラク戦争での従軍経験があり、アイオワ州議会の上院議員でもあった。
一方で、グリーンフィールド氏は、アイオワ州選出下院議員に立候補経験があるが、撤退したので州政にも国政も経験がない。

opensecrets.orgによると、ジョニ・エルンスト議員の資金調達は、 2020年の第3四半期に720万ドルしか調達できず、手元資金は430万ドルしかない。
一方で、対抗馬の民主党候補者グリーンフィールドは、同時期に2,870万ドル調達して900万ドルの手元資金がある。第三四半期の調達額は、現職の4倍、手元資金は2倍。なんと、アイオワ州上院選で最高額の資金調達を実施したようです。

2020年の献金企業(ほぼ個人)をみると、笑っちゃうんですが、アルファベットがトップにランクインw  Emily’s Listは、民主党女性候補を支援する献金団体みたいですね。
GoogleとFacebookでオンライン広告支出が300万ドル(2000年)も既にあるらしいから、多額の献金がオンライン広告に流れているんですよねえ。

引用元

また、アイオワ州で最も興味深い点は、ジョニ・エルンスト共和党上院議員が「中絶反対」を強く訴えている点です。もちろん中絶反対派のプロ・ライフ派はエルンスト共和党上院議員候補を熱心に献金しています。
逆に、プロ・チョイス派は負けじとグリーンフィールド候補に献金しています。そういった意味で、アイオワ州の上院議員選は、プロ・ライフ派vsプロ・チョイス派の戦いにもなっているのです。司法委員会による最高裁判事承認採決、本会議採決でバレット最高裁判事を送りこめればエルンスト共和党上院議員のポイントになるでしょう。

尚、アイオワ州のもう一人の上院議員ではチャック・グラスリー上院仮議長だ。 グラスリー上院議員は1981年に初当選して以来、2016年、2010年の再選挙では圧勝してきた。当然だが、 グラスリー上院仮議長も応援演説を共にしているのでグラスリー仮議長への支持票も見込めるだろう。
一方で、1985年に初当選して以来、民主党のTom Harkinは2014年まで数十年上院議員として勤めて引退した。その空席をエルンスト議員がおさえたわけだ。1900年初頭は共和党が2議席おさえていたが、大恐慌以降は、民主党が1議席あるいは2議席おさえることもあり、共和党と民主党が1議席ずつ確保するのが長く続いてきた印象だ。大統領選では赤い州ではあるが、上院議員をみると共和党にも民主党にも転びやすい州といえるだろう。


メイン州上院議員選挙

メイン州の現職スーザン・コリンズ共和党上院議員は、上院選がはじまる前から「Toss-up」と言われていて一番負ける候補といわれていた。1997年から上院議員となり2008年、2014年の再選では圧勝してきたのにねえ。
コリンズ共和党上院議員は共和党の中でも、かなり民主党寄りの議員で、バレット最高裁判事承認も「大統領選直前なので承認手続きを進めるべきではない」と主張した議員。共和党内部でも、 コリンズとマーカウスキー上院議員(R-AK)、ミット・ロムニー(R-UT)の3人がだいたい共和党案に反対することが多いよね。

ちなみに、スーザン・コリンズ上院議員は有権者5000名のアンケートで最も人気のない議員にランクインした議員。毎年、不人気ナンバー1であったマコネル上院院内総務を抜いたとして一時話題になりました。
また、最近ではバレット最高裁判事の採決で否認に投票すると宣言したことでトランプ大統領から猛烈に批判されています。

さて、メイン州上院議員の選挙調査では、対抗馬のサラ・ギデオン民主党候補が圧勝しています。サラ・ギデオン民主党候補は、州議会の下院議長を務めていて支持基盤がそれなりにある候補者であり、調査結果をみてもかなりリードされているのでスーザン・コリンズ議員に勝ち目はなさそうです。
さらに追い打ちをかけるように、コリンズ議員は、給与保護プログラムを自分の再選アピールポイントにしていたら、コリンズ議員のメガ・ドナーであるMartin Kaoが給与保護プログラム不正申請で起訴されるという事態が起きた。トランプ大統領からのネガティブ・キャンペーンにメガ・ドナーの不正申請での起訴が続き、そうとう苦しい状態にあると思われる。

また、資金調達でも民主党候補者が圧倒的にリードしています。今年の上院議員選挙でトスアップとされている州は、過去最高の資金調達額を更新していますが、メイン州もそうです。
サラ・ギデオン民主党候補者は2020年第三四半期には3940万ドルの資金調達を獲得して、2019年にキャンペーンを立ち上げてから累計6360万ドルも調達しています。一方で、スーザン・コリンズ現職上院議員は、第三四半期に830万ドルの資金調達で、再選キャンペーンでは2520万ドルしか調達できていません。手元資金は、10月時点でサラ・ギデオン民主党候補者は2200万ドルあるのに対して、スーザン・コリンズ議員は650万ドルほどしかなくて非常に厳しい選挙戦を強いられています。

尚、サラ・ギデオン民主党候補者はPACで資金調達をしないと宣言しているので、個人の少額献金が4割、個人の大型献金が6割という資金調達構成。
興味深いことに、アイオワ州のグリーンフィールド候補者の献金元が並んでいるんですよね。すべて個人で企業献金ではないですが、上位3位にアルファベット、カリフォルニア大学、女性民主党議員を支援するEMIL’s Listが並んでいるあたり民主党員(民主党支持者というべきか)は戦略的に、アイオワ州とメイン州の議席を狙ってきたのだと考えてよさそうです。

尚、メイン州上院議員の議席は南北戦争以来、共和党でした。民主党が議席を確保したのは公民権運動直後からですが、10年前後しか続かなかったようです。
1995年以降は共和党が2議席占めてきたのですが、 2013年から無所属のAngus King 上院議員が1議席確保していますが民主党寄りです。ここで民主党が2議席確保するようになったら、メイン州にとっては公民権運動以来の大きな転換期になるでしょう。

2020年上院選予測

さて、各州の上院議員選出歴や2014年、2016年、2018年の上院議員選予測と結果を追ってみてきた経緯をふまえて、私は以下のような結果になると予測しておきます。共和党51議席 民主党49議席

RCPでトス・アップとされている8議席とされているうち、5議席が共和党、民主党3議席だと考えます。サウスカロライナ州とノースカロライナ州、アイオワ州はなんだかんだで民主党が議席確保できないと思いますよ。
うっかりどれかを落としたとしても、共和党が50議席確保はかたいのではないかなと思っています。

・North Carolina /共和党
・Iowa     / 共和党
・Maine    /民主党
・Georgia     /共和党
・Michigan     / 民主党
・Montana     / 共和党
・South Carolina   / 共和党
・Minnesota  /民主党